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ハイエルフの里
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ノクスは、ハイエルフの村に急いでいた。アキラは最初、一緒に来る予定だったのだが、別の大事な用事ができてしまった。
「ごめんね、また今度行くよ。お兄さん、心配だと思うから行っておいで!」
アキラからは謝られた。セレナたちもまだ帰ってきていないのに、アキラと行動を別にするのは――
「早く行って、帰ってきますね」
煩わしい魔物の森は避け、川沿いの対岸を上がっていく。北部に近づき、川を渡る。ここら辺の川の流れは穏やかだ。いくつかのエルフの村々を抜け、いよいよ『ハイエルフ』の村が見えてきた。
途中で遭遇した魔物を、難なく倒す。熟練度が上がった魔法で一撃だ。
レベルが9に上がった。これが見せかけの数字だということは、もう分かっている。
アキラの持つ超成長能力。それに加えて、数倍のレベルが実際にはあるだろう。冒険者レベルで言えば、Sランクだ。すでに「火、風、土」の三属性の魔矢を使いこなす魔法射手でもある。
「そろそろ、セレナのような必殺技の魔法が欲しいけど……アキラに相談して決めよう」
暴走する狼のセレナとは違う。かつてのような劣等感はもう無い。ただし、奢ることもない。
「だって、これはアキラのおかげだもん」
村に近づくにつれて、物々しい雰囲気が漂っていた。
「おお、ノクスか? 見違えたな」
「本当だ、立派な弓だね。どうしたんだ?」
村人たちが、ぞろぞろと集まってきた。あっという間に、彼女は囲まれてしまった。同級生たちの驚いた顔が見える。こんなに注目を集めるのは、今まで無かった。
「あの、兄は……エリオンは?」ノクスが尋ねると、みんな突然顔を背けた。
ノクスは急いで家に向かって走った。
「出て行け! ハイエルフの面汚しが!」大声が響く。ノーザンの声だ。
「だから、平和が大切だと……」エリオンの声も聞こえる。
「どの口が言う、情弱ものが!」父の吐き捨てるような声だ。
兄の声も聞こえる。――良かった。生きていた。ノクスは安堵しつつも、不穏な空気が漂う家の扉に手をかける。
「ただいま」
彼女の出現で、家の空気が一変した。
「ノ、ノクス……」
部屋の真ん中で腕を組み、仁王立ちで兄を睨みつけていた父、ノーザンは、彼女の姿を見るや、表情を崩した。
ノクスの母が走り寄り、ノクスを抱きしめた。
「無事で良かった……さっき、エリオンから聞いたけど、本当だったのね」
大粒の涙が頬を伝う。
「この弓は?」ノーザンは、変わったノクスの姿を見て呟いた。
「エリス神から贈られました」
「何だって……! やはり、神託は本物だったのか……」
しばし沈黙が流れる。ノーザンの目が細められる。
「……だが、神託は“アイリス神”だったはずだ」
先程までの父と兄の激しい言い争いは、後回しになったようだ。ノーザンの興味は完全にノクスに向かっていた。
その時、家の外から気配が走った。預言者の祖父が到着した。
※
「そうか、おめでとう。アキラ様にも拝謁せねばならないな」
ノーザンと祖父は、ノクスの話を聞いて、安堵と喜びを爆発させた。
「そうだ、アキラは良い奴でなぁ、ノクスの……いや、妻になるんだろう?」エリオンが口を挟む。
ノクスは、真っ赤な顔をして、兄を睨みつけた。
「何を馬鹿なことを。それが失礼だと思わないのですか?」
その場にいた他の者も、同じ反応をした。
「ところで、兄様は何をしたのですか?」
ノクスは、恥ずかしくもあり、話題を変えた。しかし、エリオンの話を聞いているうちに、彼女も大声で罵倒していた。
「はぁ、こともあろうに、何もしないでオーガに捕まり、人質交換でおめおめと帰ってきた上に、和平しろだと! へ? 勝手に調印しただと。兄様にそんな資格は無い!」
妹にまで非難されたことで、ようやくエリオンは自分のしたことの間違いに気づいたようだ。
「そうか、間違いでした」
「ハイエルフとしては、調印はなかったことにする。エリオン、お前は追放だ。それでも、オーガに戦争を仕掛けることはできん」
ノーザンは苦渋の判断を下した。
「アキラ様の国には、オーガに追われたドワーフやコボルトたちが避難してきている。私も襲われて命を救われた。少なくとも、本意では無かったと釈明してもらいたい」
ノクスは、アキラの国の代表として発言する。
「ああ、もちろんだ。エリオンを追放ではなく、奴隷に落とす」
ノーザンが答える。
だが、怒りが収まると、優しい兄を思い、ノクスは思案にふけった。
「それでは、アキラ様にお話しします。エリオンを奴隷として差し出すという形で、どうでしょうか?」
アキラは、いらないとそう言うだろうけれど……まあ、ここにいれば、兄はハイエルフの誇りを捨てた男として、一生軽蔑されて生きていくしかないだろう。名誉を回復する活躍が必要だ。
「それは……そうだな」ノーザンも同じ考えだったらしい。父親として悩んでいたのだ。
ノクスは、エリオンと共に、牢獄にいた妻たちを連れて、アキラの元に戻ることになった。
ノーザンは準備をして後からアキラに挨拶に来ることに決まった。
「ごめんね、また今度行くよ。お兄さん、心配だと思うから行っておいで!」
アキラからは謝られた。セレナたちもまだ帰ってきていないのに、アキラと行動を別にするのは――
「早く行って、帰ってきますね」
煩わしい魔物の森は避け、川沿いの対岸を上がっていく。北部に近づき、川を渡る。ここら辺の川の流れは穏やかだ。いくつかのエルフの村々を抜け、いよいよ『ハイエルフ』の村が見えてきた。
途中で遭遇した魔物を、難なく倒す。熟練度が上がった魔法で一撃だ。
レベルが9に上がった。これが見せかけの数字だということは、もう分かっている。
アキラの持つ超成長能力。それに加えて、数倍のレベルが実際にはあるだろう。冒険者レベルで言えば、Sランクだ。すでに「火、風、土」の三属性の魔矢を使いこなす魔法射手でもある。
「そろそろ、セレナのような必殺技の魔法が欲しいけど……アキラに相談して決めよう」
暴走する狼のセレナとは違う。かつてのような劣等感はもう無い。ただし、奢ることもない。
「だって、これはアキラのおかげだもん」
村に近づくにつれて、物々しい雰囲気が漂っていた。
「おお、ノクスか? 見違えたな」
「本当だ、立派な弓だね。どうしたんだ?」
村人たちが、ぞろぞろと集まってきた。あっという間に、彼女は囲まれてしまった。同級生たちの驚いた顔が見える。こんなに注目を集めるのは、今まで無かった。
「あの、兄は……エリオンは?」ノクスが尋ねると、みんな突然顔を背けた。
ノクスは急いで家に向かって走った。
「出て行け! ハイエルフの面汚しが!」大声が響く。ノーザンの声だ。
「だから、平和が大切だと……」エリオンの声も聞こえる。
「どの口が言う、情弱ものが!」父の吐き捨てるような声だ。
兄の声も聞こえる。――良かった。生きていた。ノクスは安堵しつつも、不穏な空気が漂う家の扉に手をかける。
「ただいま」
彼女の出現で、家の空気が一変した。
「ノ、ノクス……」
部屋の真ん中で腕を組み、仁王立ちで兄を睨みつけていた父、ノーザンは、彼女の姿を見るや、表情を崩した。
ノクスの母が走り寄り、ノクスを抱きしめた。
「無事で良かった……さっき、エリオンから聞いたけど、本当だったのね」
大粒の涙が頬を伝う。
「この弓は?」ノーザンは、変わったノクスの姿を見て呟いた。
「エリス神から贈られました」
「何だって……! やはり、神託は本物だったのか……」
しばし沈黙が流れる。ノーザンの目が細められる。
「……だが、神託は“アイリス神”だったはずだ」
先程までの父と兄の激しい言い争いは、後回しになったようだ。ノーザンの興味は完全にノクスに向かっていた。
その時、家の外から気配が走った。預言者の祖父が到着した。
※
「そうか、おめでとう。アキラ様にも拝謁せねばならないな」
ノーザンと祖父は、ノクスの話を聞いて、安堵と喜びを爆発させた。
「そうだ、アキラは良い奴でなぁ、ノクスの……いや、妻になるんだろう?」エリオンが口を挟む。
ノクスは、真っ赤な顔をして、兄を睨みつけた。
「何を馬鹿なことを。それが失礼だと思わないのですか?」
その場にいた他の者も、同じ反応をした。
「ところで、兄様は何をしたのですか?」
ノクスは、恥ずかしくもあり、話題を変えた。しかし、エリオンの話を聞いているうちに、彼女も大声で罵倒していた。
「はぁ、こともあろうに、何もしないでオーガに捕まり、人質交換でおめおめと帰ってきた上に、和平しろだと! へ? 勝手に調印しただと。兄様にそんな資格は無い!」
妹にまで非難されたことで、ようやくエリオンは自分のしたことの間違いに気づいたようだ。
「そうか、間違いでした」
「ハイエルフとしては、調印はなかったことにする。エリオン、お前は追放だ。それでも、オーガに戦争を仕掛けることはできん」
ノーザンは苦渋の判断を下した。
「アキラ様の国には、オーガに追われたドワーフやコボルトたちが避難してきている。私も襲われて命を救われた。少なくとも、本意では無かったと釈明してもらいたい」
ノクスは、アキラの国の代表として発言する。
「ああ、もちろんだ。エリオンを追放ではなく、奴隷に落とす」
ノーザンが答える。
だが、怒りが収まると、優しい兄を思い、ノクスは思案にふけった。
「それでは、アキラ様にお話しします。エリオンを奴隷として差し出すという形で、どうでしょうか?」
アキラは、いらないとそう言うだろうけれど……まあ、ここにいれば、兄はハイエルフの誇りを捨てた男として、一生軽蔑されて生きていくしかないだろう。名誉を回復する活躍が必要だ。
「それは……そうだな」ノーザンも同じ考えだったらしい。父親として悩んでいたのだ。
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