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試練の準備
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ナエルの部屋。
厚いカーテンが閉められた静かな空間に、私たちは集まっていた。
作戦会議のためだ。
集まったのは、私とエマ、セバスチャン、ナエル、カグラ、そしてドノバン。
「聖女ソフィアから警告があって……」
私は調べたこと、聞いたことを一つ残らず全員に伝えた。
部屋の空気が、少しだけ重く沈む。
「ナエル王子ぃ、試練は辞めましょうよぉ……!」
エマが涙声で訴えたが、ナエルは静かに首を振った。
「それが出来ないのです。ナーシルから、『探索に参加する者を送った』と手紙が届きました。私たちは援軍を要請していないのですが……」
カグラが答える。
「ナエルのおじいさまですか?」
彼女の祖父なら、野望よりもナエルの命を案じる人だ。警備のつもりかと思ったが――。
「いいえ、他の貴族たちです」
ナエルの言葉に、私は微かな違和感を覚えた。
「それは普段付き合いのある方達ですか?」
「いえ、ナエル様も、おじいさまも付き合いが無いのです」
「注意しないといけないですね」
ナエルたちも、同じものを感じているようだった。
「こちらが届きました」
試練の会場となる森とダンジョンの詳細な地図。そこには、出発の場所と開始時刻が記された。それと、正式な国王からの討伐依頼の書状。
王家の紋章を刻んだ封蝋の封筒には、一度開封された痕がある。
「先ほど、開けて確認しました」
ナエルはそれを大切そうに机の上へ置き、中身を私たちに見せた。
机の上に広げられた地図には、赤い丸で出発地点が記されている。
「俺のと、出発地点が違うな?」
ドノバンがポケットから自分の封筒を取り出し、地図を並べた。
ナエルとドノバンの出発地点は、森を挟んで正反対。
しかも、ダンジョンまでの距離はナエル側のほうが圧倒的に短い。
「魔物はすべて倒して進め、だよな?」
「はい。そう書かれていました。目的は魔物の討伐で、速さを競う競技ではないと」
ドノバンの問いに、ナエルが丁寧に答える。
「レクサルの出発地点は、どこかしら?」
私の問いに、ドノバンが肩をすくめた。
「出発地点になりそうな場所は残り二つ。ナエルに近い方か、俺の側か……まあ、他人がどうだろうと関係ないさ」
不思議なことに、彼は不利な配置にも眉ひとつ動かさない。
「ドノ、不利なのに怒らないんだね?」
「ああ。聖女様が決めたんなら理由がある。なにより、全員で魔物を討たなきゃ人々に危害が及ぶってことだろ」
その言葉に、私はうなずいた。
彼の言う通りだ。それと、勝負よりも生きて戻ることが大事。
「じゃあ、私とセバスが同行します。エマは連絡係として残って!」
「でも……」
「ダメよ! それも大切な仕事なの」
エマは不満そうに唇を尖らせたが、私は譲らなかった。
今回は危険すぎる。予測がつかない敵なのだ。
「ナエル、ダンジョンにはドノバンと一緒に入りましょう!」
「そんなことが……許されるんですか?」
カグラが驚いたように尋ねる。
「ははは、確かにルール違反じゃないな。先行できる機会を逃してしまうが」
ドノバンが笑った。
「いえ、安全に戻ってくることが優先です。聖女様の警告……そして“勇者が討伐した名のある魔物”。私たちだけでは無理です。ナエル王子も、それでよろしいですね?」
カグラが尋ねた。
「うん。ありがたいご提案です。ドノバン様とリリカ様、それにセバスチャン様と同行できるなんて……心強い限りです」
ナエルは微笑んだ。
けれど、その瞳の奥には、カグラを守るそんな意思が見え隠れしていた。
二人がお互いに想いあってる。無事に終わらせてあげたい。
「あ、ティア様から、ナーシルの話を聞き忘れていた」
私は大切なことを思い出した。
※
それから、数日、私は忙しい日々を送っていた。
私の持っている知識で、未だ作っていない薬を準備するのと付与魔術の練習だ。
付与魔術の第一人者と言えば、聖女ソフィアだが、流石に教えを乞うことはできない。
「だが……ふふふ。彼女にわざわざ聞かなくても……」
そう。ゲーム世界で使った付与魔術の回数は、世界で一番だ。
「ドノバンと練習しないと」
私は、彼を誘って、魔術の熟練度とコンビネーションをあげることにした。
「これはまずい」
練習の結果、一つの大きな問題に、直面した。
魔術を付与できる剣は、魔剣と言われる魔術を帯びることの出来る剣だ。
もちろん、ドノバンも持っているが、それなりの剣だ。
ぽきり、ぽきり。
私の高出力の魔術を受け止められず、数少ない彼の魔剣が折れてしまう。
「リリカ様、もう少し出力を落とせないか?」
「出来るけど。ラスボスに勝てないと思うの……」
真剣に悩んでいる私の顔を見て、ドノバンも考えを変えたらしい。
「わかった。買ってくるよ!」
「ううん。ドノバン。そこらへんの武器商会で手に入るかどうか……そうだ。こういう時こそ、奴らに聞いてみましょう」
私は、紀伊国屋のブンザエモンに、セバスチャンを派遣して連絡を取った。
厚いカーテンが閉められた静かな空間に、私たちは集まっていた。
作戦会議のためだ。
集まったのは、私とエマ、セバスチャン、ナエル、カグラ、そしてドノバン。
「聖女ソフィアから警告があって……」
私は調べたこと、聞いたことを一つ残らず全員に伝えた。
部屋の空気が、少しだけ重く沈む。
「ナエル王子ぃ、試練は辞めましょうよぉ……!」
エマが涙声で訴えたが、ナエルは静かに首を振った。
「それが出来ないのです。ナーシルから、『探索に参加する者を送った』と手紙が届きました。私たちは援軍を要請していないのですが……」
カグラが答える。
「ナエルのおじいさまですか?」
彼女の祖父なら、野望よりもナエルの命を案じる人だ。警備のつもりかと思ったが――。
「いいえ、他の貴族たちです」
ナエルの言葉に、私は微かな違和感を覚えた。
「それは普段付き合いのある方達ですか?」
「いえ、ナエル様も、おじいさまも付き合いが無いのです」
「注意しないといけないですね」
ナエルたちも、同じものを感じているようだった。
「こちらが届きました」
試練の会場となる森とダンジョンの詳細な地図。そこには、出発の場所と開始時刻が記された。それと、正式な国王からの討伐依頼の書状。
王家の紋章を刻んだ封蝋の封筒には、一度開封された痕がある。
「先ほど、開けて確認しました」
ナエルはそれを大切そうに机の上へ置き、中身を私たちに見せた。
机の上に広げられた地図には、赤い丸で出発地点が記されている。
「俺のと、出発地点が違うな?」
ドノバンがポケットから自分の封筒を取り出し、地図を並べた。
ナエルとドノバンの出発地点は、森を挟んで正反対。
しかも、ダンジョンまでの距離はナエル側のほうが圧倒的に短い。
「魔物はすべて倒して進め、だよな?」
「はい。そう書かれていました。目的は魔物の討伐で、速さを競う競技ではないと」
ドノバンの問いに、ナエルが丁寧に答える。
「レクサルの出発地点は、どこかしら?」
私の問いに、ドノバンが肩をすくめた。
「出発地点になりそうな場所は残り二つ。ナエルに近い方か、俺の側か……まあ、他人がどうだろうと関係ないさ」
不思議なことに、彼は不利な配置にも眉ひとつ動かさない。
「ドノ、不利なのに怒らないんだね?」
「ああ。聖女様が決めたんなら理由がある。なにより、全員で魔物を討たなきゃ人々に危害が及ぶってことだろ」
その言葉に、私はうなずいた。
彼の言う通りだ。それと、勝負よりも生きて戻ることが大事。
「じゃあ、私とセバスが同行します。エマは連絡係として残って!」
「でも……」
「ダメよ! それも大切な仕事なの」
エマは不満そうに唇を尖らせたが、私は譲らなかった。
今回は危険すぎる。予測がつかない敵なのだ。
「ナエル、ダンジョンにはドノバンと一緒に入りましょう!」
「そんなことが……許されるんですか?」
カグラが驚いたように尋ねる。
「ははは、確かにルール違反じゃないな。先行できる機会を逃してしまうが」
ドノバンが笑った。
「いえ、安全に戻ってくることが優先です。聖女様の警告……そして“勇者が討伐した名のある魔物”。私たちだけでは無理です。ナエル王子も、それでよろしいですね?」
カグラが尋ねた。
「うん。ありがたいご提案です。ドノバン様とリリカ様、それにセバスチャン様と同行できるなんて……心強い限りです」
ナエルは微笑んだ。
けれど、その瞳の奥には、カグラを守るそんな意思が見え隠れしていた。
二人がお互いに想いあってる。無事に終わらせてあげたい。
「あ、ティア様から、ナーシルの話を聞き忘れていた」
私は大切なことを思い出した。
※
それから、数日、私は忙しい日々を送っていた。
私の持っている知識で、未だ作っていない薬を準備するのと付与魔術の練習だ。
付与魔術の第一人者と言えば、聖女ソフィアだが、流石に教えを乞うことはできない。
「だが……ふふふ。彼女にわざわざ聞かなくても……」
そう。ゲーム世界で使った付与魔術の回数は、世界で一番だ。
「ドノバンと練習しないと」
私は、彼を誘って、魔術の熟練度とコンビネーションをあげることにした。
「これはまずい」
練習の結果、一つの大きな問題に、直面した。
魔術を付与できる剣は、魔剣と言われる魔術を帯びることの出来る剣だ。
もちろん、ドノバンも持っているが、それなりの剣だ。
ぽきり、ぽきり。
私の高出力の魔術を受け止められず、数少ない彼の魔剣が折れてしまう。
「リリカ様、もう少し出力を落とせないか?」
「出来るけど。ラスボスに勝てないと思うの……」
真剣に悩んでいる私の顔を見て、ドノバンも考えを変えたらしい。
「わかった。買ってくるよ!」
「ううん。ドノバン。そこらへんの武器商会で手に入るかどうか……そうだ。こういう時こそ、奴らに聞いてみましょう」
私は、紀伊国屋のブンザエモンに、セバスチャンを派遣して連絡を取った。
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