完結 断罪された悪役令嬢に、引きこもり廃ゲーマーが転生。ゲーム終了後の貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン

織部

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野生児リラの帰還

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従魔ということは、魔物使いなのだろう。レアなジョブ持ちだ。
檻に入れられているわけでもないのに、魔物たちは大人しく、争う様子もない。

角の折れた魔兎、翼を痛めた魔鳥、全身に切り傷を負った魔犬。いずれも治療を受けた痕が見て取れた。

「嘘でしょ?」
魔物たちから感じ取れるのは警戒心だけで、敵意はない。
「リラ様が、助けては連れ帰ってしまうのです」
「はぁ……」


「帰ったよぉ!」
玄関から元気で大きな女の子の声がする。
「お帰りなさいませ! リラ様」
コヨリが駆けていき、姿を見て一言。

「こら。裏手の井戸で体を洗って下さい!」
「わかった!」
リラは弓と袋を背負う猟師姿だが、泥だらけだった。

その場で服を脱ぐと、外に飛び出して行く。
「えー……」
子供ではない。妙齢の女性が、素っ裸なのだ。
「もう、リラ様ったら……」

井戸で頭から水をかぶる野生児に、タオルと服を持って駆け寄るコヨリ。
私たちは、その様子に笑い転げた。
着替えを済ませたリラは、私たちと話をすることになった。

「食べるの忘れてて。それで私に何の用かしら? 私やることがあるの!」
彼女は食卓でプラムのタルトを頬張りながら、美味しそうに笑っている。髪をコヨリに拭かれながら。

「どこに行ってたの?」
「そんなことに興味があるの? 教えてあげるわ。ちょっと、こっちに来て!」
タルトをお茶で流し込み、作業部屋へと私たちを招き入れた。

「これを探していたの!」
袋から取り出されたのは、蛇の死骸。
「黒牙蛇かな?」
「そう、よく知ってるね。さすが冒険者! 近頃、こいつの毒がばら撒かれてるの。だから、毒消しを作ろうと思ったんだけど、難しいのよ。薬作りと実験もしようと思って」

「黒蝕毒は体内から出さないと駄目なの。体の中にできる結晶を溶かさないと。その素材が、ここには揃ってないわ!」

私は思わず口を出した。別に隠すほどのことでもないし。
「私、製薬の本は、数多く読んでるけど、そんなことどこにも書いて無かった。それ、本当?」

リラは、私の両手を掴んだ。力が強く、離せない。
「リリカは、天才薬師だ。教えを乞うといい!」

あっ、クルミの野郎、バラしやがった……という目をすると、クルミは話を続けた。
「だってこの子面白いもん。リリカもそう思うでしょ? それに、きっとコヨリはお見通しよ」

「はい。クルミ・マリスフィア侯爵、それとリリカ・ノクスフォード侯爵」
彼女は美しいカーティシーをすると、慌ててリラも続いた。

「ヴォーデン侯爵の娘、リラ・ヴァーデンです」
私たちはカーティシーで応えた。
「製薬方法を教える前に、情報交換をしましょう」

私は、難民キャンプや教会での患者の話をした。
「そうですか! 公都リヨンで、黒蝕毒がばら撒かれてるからです! あいつら……」
リヨンを取り合っている二つの勢力。そのうち、シャルルの勢力の一部が使っているらしい。

「今、材料を取り出すわ。それと……」
広間に干してある草を指差した。それらは今回必要な薬草だ。
屋敷を見学している時に、きちんと処理してあることに感心していた。

製剤室に移動し、リラに教わりながら実践する。
「なるほど。それで、このやり方はどういう意味があるのですか?」
私はタジタジだ。だって、それが一番効果があるだけで、理由までは知らないのだ。
それでも、私の神技に心を奪われ、夢中で筆を取っていた。

「最終工程よ、やってみる?」
「私がやろう」
クルミが手を出すので、叩いた。
「製薬スキルの無いものは、黙って見てなさい!」

悲しそうな顔をしているが、ここは譲れない。
リラは、手慣れた手つきで私の右腕に手を置く。
夜遅く、材料を使い果たした。

「これで終了だね。これだけあれば足りないと思うけど」
「ありがとうございます。でも代金のお支払いですが……これでどうでしょうか?」

コヨリに合図すると、彼女は貴重鉱物の入った宝箱を持って来た。
「わー。これは凄い」
私は、貴金属に興味は無いけれど、特別な武器類を作るのに欲しいものがある。

これが、リラたちの大事な収入源の一つらしい。
「いらないわよ。お隣さんだもん。それより解毒薬を配りに行きましょう!」
クルミは宝箱を閉じた。私は少し残念だ。

「そうですね。ですが、今日はもう遅いですし、明日にしましょう。食事もできております」
優秀メイドのコヨリが、美味しい匂いをキッチンから運んでくる。

「まだ、習うことが多いです。リリカ師匠、しばらくここを宿にして下さい!」
リラは、私の腕を掴んで離さない。

「そうね。今後のことも話し合いたいからお邪魔するわ」
夕食は、牛肉の赤ワイン煮込みとエスカルゴのバター焼き。

焼きたてのパンと年代物の赤ワイン。
食事をしながら、コヨリに尋ねると、やはり最初から私たちのことを知っていたらしい。

「お二人は有名ですから。リラ様のことを知って欲しくて」
食事を済ませると、リラは眠くなったらしい。

私は彼女に引っ張られて、寝室へ連れて行かれた。
「リリカを取られちゃったな」
「でも、こんなに懐くことなんて無いんですよ。お許し下さい」

私は、リラのベッドで一緒に寝ることになった。
「政治的な打ち合わせは、やっておくよ!」
クルミとコヨリは、食卓でワインの飲み比べをしている。

「わかった。すぐに戻る」
元気な少女の寝息を聞きながら横になると、私はいつの間にか眠ってしまった。

魔鳥の朝の囀りまで、目を覚ますことはなかった。
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