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二部
ダンジョン森の最深部
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「何が起こっているんだろう?」
「うーん、わからないけど、森の奥の方ね」
「今日は、二本目のエルフツリーのアルテアを目指そう」
昨日、冒険者達が歩いていた道を、歩いて行く。まだまだ、小さい魔物か弱い魔物しかいない。
冒険者が切り開いた道は、昨日の平原、練習場から、さらに奥に続いていた。
「これは楽だな。どこまで続いてるんだろうか?」
森を進むと、又、軽い地震で地面が揺れた。少しずつ、地震が激しく間隔が狭くなっている。
ノルドが、物心ついてから初めての経験と言っても良い。リコやヴァルは、恐怖で顔を引き攣らせている。ビュアンは、我関せずの知らないふりをしている。
今朝、ノゾミたちとお茶をしていた時にも、地震が起きていた。
「シチリア島の伝記を聞いたことがあるわ。『それは、精霊王の怒りだ』って」ノゾミは、子供の頃にニコラから読み聞かせてもらったと言う。
「今回の理由は何でしょうか?」ノルドは尋ねた。
「それはわからないわ。でも本当に怖いのは、シシルナ岳が火を吹くことよ!」
シシルナ島は、火山でできた島。そしてその火山こそシシルナ岳だ。
※
「大丈夫かな? ビュアンは精霊の子だよね。何か事情を知らない?」
「さあ、ただの癇癪よ。ほっとけばそのうち収まるわ」
ビュアンは、この話題に触れたくないのか、素っ気なく言った。
精霊の世界のことは、人が安易に口を挟むべきではないのかもしれない——ノルドはそう感じた。
その日は、アルテアで夕寝をすることにした。ここまで来るのに少し距離はあったが、冒険者たちが作った道が一直線に伸びており、この森の中央にそびえるエルフツリーまで迷うことなくたどり着けた。
エルフツリーの周囲の芝生には、二つの立て看板が立っていた。
〈冒険者ギルドより通達〉
◆ エルフツリーの樹液の採取について
ギルドからの正式な依頼以外での採取は禁止する。ただし、緊急事態の場合は例外とする。
◆ ダンジョンの森最深部の探索について
行方不明となる冒険者が後を絶たない。
探索は各人の能力をよく見極め、自己責任で行うこと。
※バインドカズラの発生事例あり。発見者は報告のみでも報酬あり。
通告の看板には、冒険者ギルドの印が入った紙が貼られており、随時更新されているようだった。
※
目を覚ますと、微かだがモリユ茸の匂いが風に乗って運ばれてきた。
「どうしようか?」
「せっかくだもん、探しましょう!」
ここから先は森の最深部だ。だが、これまで遭遇した魔物はどれも弱く、強い魔物の気配すら感じなかった。それでも、油断はできない。
「だけど、この先は山岳地帯だ。僕には登れない段差がある」
「ヴァルがもう少し大きくなれば……」
「クウーン」リコに指摘され、ヴァルは情けない声をあげた。
「リコ、それは言い過ぎだよ。ヴァルはいつも頑張って、ものすごく食べてる。早く、大きくなろうとしてるんだ!」
「へっ?」リコの顔には疑惑の表情が浮かんでいた。
「ワオーン」ヴァルは嘘をついた。
リコは納得していない様子でヴァルをじっと見つめたが、「まあ、ヴァルが頑張ってるならいいけど。私も美味しいもの食べるのは大好きよ!」と肩をすくめた。
進むことに決めたノルド達だったが、ノルドが登れない場所はリコが背負って登ることになった。
「へへん、お姉さんに任せなさい」そのたびに、ノルドを背負い跳躍して登る。恥ずかしかったが仕方がない。
「何なの? ノルド、リコにべったりして、もう知らない!」ビュアンは機嫌を悪くして消えてしまった。
匂いはどんどん強くなり、ノルド達はただひたすら進んだ。ただ、ダンジョン森の深奥部には、ここにしか生えない珍しい薬草もあり、そのたびにノルドが植物図鑑や薬物図鑑で確認していたため、時間がかかってしまった。
モリユ茸を発見したのは、早朝になってからだった。
「あった! ここら辺の樹の根元にあるよ!」
「地図に書くよ! 取りすぎちゃダメだからね!」
「でもいい匂いね!」
次々にリュックに放り込んでいく。茸採取に夢中になり、匂いの強さに気を取られて、ノルド達の感覚が鈍り始めた。静かに動く魔物に囲まれているのに気づくのが遅れてしまう。
「ワオーン」ヴァルが警告の遠吠えをあげた。ノルドのところに、リコとヴァルが駆け寄る。
「囲まれた。まずい、かなりの数だ。逃げよう!」
十匹、数十匹、いや、もっといるかも。どんどんと数が増えていく。
木の上から、石が飛んでくる。ノルドが足を踏み外す。違う、罠だ。
危うく落ちそうになるところを、「風」が起きて、飛び越えてその先の地面に転がった。
「ありがとう、ビュアン」落とし穴の罠の底には、鋭い杭が並んでいた。落ちたら無事では済まない。
「何者だ?」木の上に、隠れながら手の長い人の姿。いや、猿の魔物だ。
「グリムエイプ」集団で狩りをする知力の高い魔物だ。知らない間に、彼らの縄張りに入っていたのだろう。
「ヴァル、リコ、罠に気をつけろ!」
木の上から、猿のボスの指示で、一斉に石が投げられる。きっと罠に誘導しているのだろう。
「一直線に逃げるな!」
逃げるばかりではまずい。ノルドはリュックから催涙弾を取り出した。
「ビュアン、風を頼む!」
ノルドが袋を投げ、ダーツで穴を開ける。そこにビュアンが風を送り、粉を霧状に広げた。
追撃が止んだ。いや、一瞬だ。被害を受けていない魔物が入れ替わり、次の群れが迫ってくる。
ノルド達は、誘導された方向とは逆の、禿げた岩山へと走った。
ノルドの足は遅い。ようやく森の間を抜け、空の見える岩場にたどり着く。そこからは、大森林が見渡せた。
「ふぅ……」息を整えようとした瞬間、
ゴゴゴゴ……!
何本もの大木が転がってきた。集団で木を蹴り落としているのだ。
「ああ、しまった!」
山を降りれば、攻撃されやすくなる。しかし、もう避ける余裕はない。
轟音とともに、大木が襲いかかる。
ノルド達は、岩山の崖から転落した。
「うーん、わからないけど、森の奥の方ね」
「今日は、二本目のエルフツリーのアルテアを目指そう」
昨日、冒険者達が歩いていた道を、歩いて行く。まだまだ、小さい魔物か弱い魔物しかいない。
冒険者が切り開いた道は、昨日の平原、練習場から、さらに奥に続いていた。
「これは楽だな。どこまで続いてるんだろうか?」
森を進むと、又、軽い地震で地面が揺れた。少しずつ、地震が激しく間隔が狭くなっている。
ノルドが、物心ついてから初めての経験と言っても良い。リコやヴァルは、恐怖で顔を引き攣らせている。ビュアンは、我関せずの知らないふりをしている。
今朝、ノゾミたちとお茶をしていた時にも、地震が起きていた。
「シチリア島の伝記を聞いたことがあるわ。『それは、精霊王の怒りだ』って」ノゾミは、子供の頃にニコラから読み聞かせてもらったと言う。
「今回の理由は何でしょうか?」ノルドは尋ねた。
「それはわからないわ。でも本当に怖いのは、シシルナ岳が火を吹くことよ!」
シシルナ島は、火山でできた島。そしてその火山こそシシルナ岳だ。
※
「大丈夫かな? ビュアンは精霊の子だよね。何か事情を知らない?」
「さあ、ただの癇癪よ。ほっとけばそのうち収まるわ」
ビュアンは、この話題に触れたくないのか、素っ気なく言った。
精霊の世界のことは、人が安易に口を挟むべきではないのかもしれない——ノルドはそう感じた。
その日は、アルテアで夕寝をすることにした。ここまで来るのに少し距離はあったが、冒険者たちが作った道が一直線に伸びており、この森の中央にそびえるエルフツリーまで迷うことなくたどり着けた。
エルフツリーの周囲の芝生には、二つの立て看板が立っていた。
〈冒険者ギルドより通達〉
◆ エルフツリーの樹液の採取について
ギルドからの正式な依頼以外での採取は禁止する。ただし、緊急事態の場合は例外とする。
◆ ダンジョンの森最深部の探索について
行方不明となる冒険者が後を絶たない。
探索は各人の能力をよく見極め、自己責任で行うこと。
※バインドカズラの発生事例あり。発見者は報告のみでも報酬あり。
通告の看板には、冒険者ギルドの印が入った紙が貼られており、随時更新されているようだった。
※
目を覚ますと、微かだがモリユ茸の匂いが風に乗って運ばれてきた。
「どうしようか?」
「せっかくだもん、探しましょう!」
ここから先は森の最深部だ。だが、これまで遭遇した魔物はどれも弱く、強い魔物の気配すら感じなかった。それでも、油断はできない。
「だけど、この先は山岳地帯だ。僕には登れない段差がある」
「ヴァルがもう少し大きくなれば……」
「クウーン」リコに指摘され、ヴァルは情けない声をあげた。
「リコ、それは言い過ぎだよ。ヴァルはいつも頑張って、ものすごく食べてる。早く、大きくなろうとしてるんだ!」
「へっ?」リコの顔には疑惑の表情が浮かんでいた。
「ワオーン」ヴァルは嘘をついた。
リコは納得していない様子でヴァルをじっと見つめたが、「まあ、ヴァルが頑張ってるならいいけど。私も美味しいもの食べるのは大好きよ!」と肩をすくめた。
進むことに決めたノルド達だったが、ノルドが登れない場所はリコが背負って登ることになった。
「へへん、お姉さんに任せなさい」そのたびに、ノルドを背負い跳躍して登る。恥ずかしかったが仕方がない。
「何なの? ノルド、リコにべったりして、もう知らない!」ビュアンは機嫌を悪くして消えてしまった。
匂いはどんどん強くなり、ノルド達はただひたすら進んだ。ただ、ダンジョン森の深奥部には、ここにしか生えない珍しい薬草もあり、そのたびにノルドが植物図鑑や薬物図鑑で確認していたため、時間がかかってしまった。
モリユ茸を発見したのは、早朝になってからだった。
「あった! ここら辺の樹の根元にあるよ!」
「地図に書くよ! 取りすぎちゃダメだからね!」
「でもいい匂いね!」
次々にリュックに放り込んでいく。茸採取に夢中になり、匂いの強さに気を取られて、ノルド達の感覚が鈍り始めた。静かに動く魔物に囲まれているのに気づくのが遅れてしまう。
「ワオーン」ヴァルが警告の遠吠えをあげた。ノルドのところに、リコとヴァルが駆け寄る。
「囲まれた。まずい、かなりの数だ。逃げよう!」
十匹、数十匹、いや、もっといるかも。どんどんと数が増えていく。
木の上から、石が飛んでくる。ノルドが足を踏み外す。違う、罠だ。
危うく落ちそうになるところを、「風」が起きて、飛び越えてその先の地面に転がった。
「ありがとう、ビュアン」落とし穴の罠の底には、鋭い杭が並んでいた。落ちたら無事では済まない。
「何者だ?」木の上に、隠れながら手の長い人の姿。いや、猿の魔物だ。
「グリムエイプ」集団で狩りをする知力の高い魔物だ。知らない間に、彼らの縄張りに入っていたのだろう。
「ヴァル、リコ、罠に気をつけろ!」
木の上から、猿のボスの指示で、一斉に石が投げられる。きっと罠に誘導しているのだろう。
「一直線に逃げるな!」
逃げるばかりではまずい。ノルドはリュックから催涙弾を取り出した。
「ビュアン、風を頼む!」
ノルドが袋を投げ、ダーツで穴を開ける。そこにビュアンが風を送り、粉を霧状に広げた。
追撃が止んだ。いや、一瞬だ。被害を受けていない魔物が入れ替わり、次の群れが迫ってくる。
ノルド達は、誘導された方向とは逆の、禿げた岩山へと走った。
ノルドの足は遅い。ようやく森の間を抜け、空の見える岩場にたどり着く。そこからは、大森林が見渡せた。
「ふぅ……」息を整えようとした瞬間、
ゴゴゴゴ……!
何本もの大木が転がってきた。集団で木を蹴り落としているのだ。
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