ステータス表記を変えて貰ったら初期設定に戻ってたー女神公認のハーレム漫遊記ー

ささやん

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4章 求められる英雄、欲しない英雄

36話 王国の騎士……いるよね? 男は今更、気付く

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 ドンドンドン

 朝早い時間のダイニング、早朝訓練を終えた俺は女性陣が井戸の水を使い終わるのを待っている俺は汗を拭っていた。
 さっさと水浴びをしたいのだが、汗の匂いが気になるという主にスイとキャウの強い要望で先に譲っている。

 俺ってカラスの行水だから、すぐに終わるから、先にいい? って言ってるんだけどな。

 パメラと2人でやってる時は、一緒に体を洗っていたが、さすがにあの3人娘と一緒には無理がある。

 ドンドンドン

 ふむ、こんな朝早くに誰だろう?

「シーナ、朝食の準備してるから出て」
「あいよ」

 割と最近にこのやり取りをしたな、と思う。

 その時の来客は今、裏庭の井戸で体を洗ってる最中なので今回はないはず……となると誰か来たかまったく心当たりがない。

 ドンドンドン

 はいはい、出ますよ~

 小走りで玄関に向かい、ドアを開ける。

「お待たせしました、どなたですか?」
「早朝から失礼します。私はリモメ王国所属騎士、トリルヴィと言います。本日は国から調査を命じられ、情報を集めております。少しお話する時間を頂けませんでしょうか?」

 ドアを開けた先には、青い髪を短く纏め、眼鏡をかけた可愛らしい小柄な少女がいた。可愛いが眉尻を上げて眉間に薄らと皺を寄せる様子と、ピッチリとしたスカートタイプのスーツを着こなす姿から堅物なのが見て取れた。

 リモメ王国? ああ、そういや、プリットがある国の名前だったか……正直、気にしてなかったなぁ。

 青い髪の少女、トリルヴィを頭からつま先まで見る。

 やっぱり小さいな……マロン達と同じぐらいの年で騎士になれるんだ?

「あの? お話を聞いてくださってますか? 少々、お時間よろしいでしょうか?」
「ああ、済みません。構わないですが、先程まで早朝訓練してて汗を流せてないので中で少し待って頂いてもよろしいですか?」

 俺がそう言うとトリルヴィが頷くのを確認すると中に招き入れる。ダイニングの椅子を勧めて、俺は台所に向かった。

 台所に入ってきた俺に気付いたターニャが話しかけてくる。

「お客さん? 見た事がない顔だけど?」

 台所からチラッとトリルヴィを見て、俺に確認を取ってくる。

「俺も初顔合わせだよ。あの子はトリルヴィ。王国の騎士で調査の為、色々聞きたい事があるんだって」
「騎士様なの? お待たせしちゃ駄目じゃない。お茶、良いのあったかな?」
「待たせたくないけど……」

 俺はシャツを引っ張って見せて、汗塗れである事を示す。そして、本来ならまだ水浴びに時間を費やすと思われるマロン達を急かして来て欲しいとお願いする。

 なるほど、と納得してくれたターニャは、俺にお湯を沸かしておいて、と告げると裏庭に向かってくれる。

 火の付いた竈に水の入ったヤカンを載せて振り返り、トリルヴィを見て考える。

 何か大きな事件が起こったのだろうか?

 面倒事なら巻き込まれたくないな、と俺は思うが叶わぬ願いである事を10分後に知る事になった。


 水浴びを終えた俺がタオルで髪を拭きながら、ダイニングに戻ってくる。

 すると、ターニャとパメラは分かるがマロン達も同じようにその場にいた。

 好奇心からいるのだろうが、こういう騎士が調査に来た場合、面倒事しかないと思うぞ? 元の世界でも約束もなく公務員が家にやってきたら99%、面倒事だと言ってもいい。

 なので、本音を言うならこのまま帰ってくれたらいいな~と思っている。

「お待たせしました。身嗜みが整えるどころか、まだ髪が濡れたままだが、不作法をお許しください」
「気にしないでほしい。招かざる客だというのは私自身が重々承知している。追い返そうとしないだけでも助かっている」

 テーブルで肘を立てようとしたが高さが足りてなくて失敗する。そして、何事もなかったかのように小さな手でテーブルの淵を掴んで、手の甲の上に顎を載せてキリリと表情を引き締めるトリルヴィ。

 うん、可愛い!

 小さな子がご飯を要求しているようにしか見えない。

 それはともかく、トリルヴィも帰って欲しいと思われてる事は気付いていたか。

 まあ、落ち着いて考えて、国の権力を行使出来る相手とは出来るだけ関わりたくないというのが本音だから、ここじゃないどこかで色々とあったんだろうな、とは思う。

 俺は、トリルヴィと対面になる位置の椅子に座る。

「必要がなかったかもしれませんが、自己紹介を、私はシーナと申します」
「有難う。知っていても確認が取れるの取れないとでは大きな違いがあるからな」

 俺がした自己紹介の流れでターニャ達もしていく。

 それに頷いて「よろしく」と告げるトリルヴィ。

 その反応と俺に返した言葉から、おそらく目的は俺にあるようだ。

 しかも、家に来る前から面が割れているようで嫌な予感しかしない。

「それで、王国の騎士様であるトリルヴィさんは何かを調査されているとのことでしたが? それで、何をお聞きになりたいのでしょうか?」
「私が国から調査を命じられたのは、英雄捜し……ゴブリン神を屠った人を捜しております」

 ぶはっ!

 思わず、噴き出しそうになったが、ギリギリ耐えたはずだ。ちょっと本気で俺自身が気にしなくなり始めた事を国が騎士を使って捜索を始めたか。

 俺以外で、この事実を知っているのは、ターニャ、パメラ、スイの3人だけだ。

 まず、隣にいるターニャを見ると澄ました顔をしている。

 さすが、客商売で鍛えてるだけあって、カマかけに引っかからない。

 その隣のスイは、マロンが「単独撃破って噂が噂じゃなくて本当なのか?」と瞳をキラキラさせてるに同調するようにニコニコ笑っている。

 スイ、肝が据わってるな……

 最後のパメラは背後にいて確認が取れない。

 ジッと俺を見てたトリルヴィが俺の背後に目を向けるとパメラに声をかける。

「あら、パメラさんでしたわね? 凄い汗ですけど……もしかして何かお知りなんですか?」

 この流れなら振り返っても変じゃないはす!

 後ろを向くと汗を流して、目を彷徨わせているパメラが慌てたように胸の辺りで両手を振っていた。

 パメラ……腹芸は出来ないか……

「い、いや、あの時、ゴブリン神に勝てないと判断して、要救助者を助けるという理由を言い訳にして逃げた同然だった。そ、それが恥ずかしくてな……」
「そうらしいですね、ティテールさんでしたか? その方を助けてたとご本人がギルドにそう報告されてましたね。一応、ご本人に確認が取りたいですが、所在不明で叶わぬ願いですが……まあ、それはいいでしょう」

 そう、俺もスピアさんから紹介された情報屋に頼んでいるが、あの一件の少し後ぐらいから足取りが追えないそうだ。

 どうして、こんなにティテールの事が気になるのかと、当初は思っていたが、本職の情報屋が見失うレベルで、あのゴブリン神に勝てないと分かっていたはずなのに見せた執着。

 そして、黒い噂が絶えない貴族との繋がり。

 これは放置しておかない方がいいと今では思う。

 ティテールだけの問題で収まらない。根拠は俺のカンでしかないが……

 それはともかく、今、どこにいるか分からないティテールの話より、かろうじて、ボロが出た部分の修繕をしたパメラだ。

 その苦し紛れに気付いているはずのトリルヴィが追及せずに自分から話を終えさせた。

 何を知ってるんだ? この子……

 追及を放棄したトリルヴィが少し瞳を閉じて、ゆっくりと瞳を開くと再び、俺に視線をロックオンさせてくるのに溜息を零して俺から話しかける。

「英雄を捜しにですか。トリルヴィさんの話を聞いてる限り、単独で倒したように聞こえますが、そんな事が可能なんですか?」
「普通なら無理ですわね。何せ、ゴブリン神は集団で一軍の強さを発揮しますが、単独でも一騎当千の強さを誇ります。しかし、そのゴブリン神を単独撃破成した人がいるから、その人、英雄を捜してます」

 ジッと見つめていたトリルヴィが溜息を零す。

「私も色々と調査をすすめました。ですが、その英雄を見た者の話が出てきません。しかし、3つだけ、単独撃破が成されたかもしれないという情報を掴みました」

 俺の変化を見逃さないとばかりに、ジッと観察するように見てくるトリルヴィ。

 カマかけしてくるって分かってるのに顔に出すかよ、と思っていたら隣にいたターニャがトリルヴィの死角から太股を抓って来て、驚いて声を上げそうになるのを耐える。

「へぇ~、そうなんですか? どんなのかお聞きしてもいいでしょうか?」

 ターニャは興味深そうにトリルヴィに聞き出そうとする。

 一瞬、何が何だかと思ったが、ターニャのファインプレーに気付く。

 一軍の強さを誇るゴブリン神の集団を切りぬけて、大将であるゴブリン神を単独撃破した証拠があるとなれば、普通に驚くし、戦いを生業にする冒険者であれば、本当かどうか聞き出したいと思うのが普通だ。

 あそこでポーカーフェイスをしていたら、私は隠し事があります、と公言してるのと違いがない。

 何やら不満そうにするトリルヴィであったが、気を取り直して話を続ける。

「それは冒険者サイドではなく、警備隊サイドから出てきました。まず、ザンギエフ隊長の調書で、『火による火傷多数』と書かれてますが、検死をした警備隊は、まるで落雷でも直撃したのかと思える火傷と報告したそうですが……」
「ザン……ギエフ隊長でも間違いがある。雷と書いたつもりが火だっただけじゃないのか?」
「ええ、ザンギエフ隊長も同じように言われてました」

 まったくその理由を信じてなさそうなトリルヴィが肩を竦める。

「そして、2つ目は、パメラさんが書かれた調書です」
「わ、私のか!?」

 どんな事を書いたんだ、パメラ?

 嫌な予感しかしなくて、この場から辞したい。

「ええ、それでお聞きしたのですが、倒した者、挑んだ者などと書かれてますが、どうして、倒した者達ではなかったのですか? もしかして、誰かだと心当たりがある? それとも伏せたのですか?」
「あ、あぅ……」

 あたふたするパメラを見て、ギャップがあって可愛いが黙るな、肯定してるのと同じだぞ。

 仕方がない。

「また、書き間違いか何かでしょう。それで、3つ目の根拠は?」
「そうですね」

 今回もパメラが何らかの情報を持っている事は馬鹿でもない限り、伝わっただろう。

 それなのに俺が介入したからといえ、強引にパメラから話を聞き出す術はあったはずなのに……余程、3つ目に自信があるのか?

「3つ目ですが、検死結果が物語っているのですが、同一の武器に寄るダメージと雷魔法によるダメージ。まさか、同じ武器を使い回して、おまけに滅多にいない雷魔法のみだけを行使するメンバーがいるならおかしいの一言です」
「それが本当なら変な集団ですね」

 俺がそう言うと「そうね」と見つめて、俺の変化を見逃さないように見つめてくる。

 これでほぼ間違いなく、疑われてるのは俺のようだ。

 トリルヴィが椅子から飛び降りると玄関の方に歩いて行く。

「では、今日はこれぐらいで、色々と聞かせてくれて有難う。何か思いだしたらいつでも情報を待っている」
「分かりました」

 一応は返事をしたが厄介だな……この歩けばテクテクと音がしそうな歩き方してるのにやり辛い。

 玄関まで見送ろうと付いて行くと、ドアを開いたトリルヴィが突然、振り返る。

「そうそう、あの時、長い時間、所在が分からない人が2人いた。1人はパメラさん。彼女のは遅れてだが、ティテールの証言があった……ところで貴方はあの時、どうしてましたか?」
「……森の中で迷ってましたよ」
「なるほど、そうですか」

 そう言うとトリルヴィは出口に体を向ける。

 黙って見送る俺に「また後で冒険者ギルドで会いましょう」と去っていく。

 その後ろ姿を見ながら溜息を零す。

「何が3つだ、4つ目があるとはね……完全にロックオンされているな」

 朝から深い溜息を連発させた。
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