世紀末な異世界で餌付けした少年は番犬へと成長した

メカラウロ子

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白の番犬/幼少期

プロローグ5

滞在から4日目。未だに砂嵐は止まず、外は轟々と唸るような音を立てる。

食事の心配をしたが、魔法で配送できるシステムがあるらしく安心して引きこもり生活ができるのだそうだ。

初日のよそよそしさは抜け、今ではレインとすっかり仲良くなった…と思いたい。

料理を手伝って慣れない形の包丁にうっかり指を切ってしまった時、レインにペロリと指を舐められたのだが…これは仲良くなったといえるのだろうか。

レインは魔力が多いのか、あっという間に傷を治してくれた。ジフに聞いたら舐める必要は無かったそうだ。


今日も今日とてジフが何かの機械を修理するのを眺めている。

この世界にある機械はどれも実用的で、元の世界のゲームや音楽みたいな娯楽は無しに等しい。

生活する事にいっぱいいっぱいで、娯楽に回るまでの余裕がないのだろう。


「レインもジフさんの仕事のお手伝いしてるんですか?」

悠斗はある目的を遂行する為、ジフに協力を仰ぐつもりだった。少しでも信頼できる人手が欲しい。

「アイツはなぁ、ちょっと訳あって数年前に知り合いの子を預かったんだ。多少の買い出しは頼む事はあるが、それまで機械に触れる生活をしていなかったし、全く分からない訳じゃないが、人よりちょっと詳しいくらいだろうな」

髪の色も目の色も違うから何となくそうだとは思っていた。ジフは小麦色の肌にブラウンの瞳と髪。ガッチリとした体に無精髭を生やしている。

ちょっと訳アリな空気を感じたけど、深く突っ込まない事にした。

「実は…商売を考えてるんです。僕の世界の商品を元に開発したら売れるんじゃないかなって思っていて、それには現地の人の協力が必要だから、ジフさんとレインに手伝ってもらえないかなって…」

「…というとスマホやパソコンって事か?これを再現するのは相当なコストがかかるぜ。そっちの世界でも結構な値段なんだろ?」

「はい。スマホやパソコンが現実的ではないのは仰る通りなので、もっと違うものにしようと思っています」

殆どの人が砂嵐のように自然災害中は家にカンヅメのはずだ。その時間は持て余しているに違いないと思っていた。

ジフのように家で仕事ができるならまだしも、接客業の人達はどうだろうか。

「お前は魔法をつかえないだろ。開発には魔法が必須だぞ?」

「魔力が強いレインに助けてもらえないかと考えています。もちろん、三人で均等に取り分は分けます」

そして、それがこの交渉の肝になる。
悠斗はゴトリとノートPCを置いた。

「これをジフさんに差しあげます。僕の商売道具です。バラバラに分解しても鉄屑として売ってもいい。だから僕にジフさんの技を教えてくれませんか?」

ジフは複雑な表情をこちらに向けながらまだ決めかねているようだった。

だけど僕は知っている。

子供の頃、目覚まし時計をプラスドライバーで分解して元に戻せなくなった時。

親には怒られたけど、あのワクワク感は何物にも変え難い。

「今すぐにとはいいません。僕が登録をして帰ってくるまでに回答をもらえたら嬉しいです。それまでこれは預けますから」


***


部屋の扉からコンコンと音が鳴る。

「どうしたの?」

「ジフが様子を見に行ってやれって」

明日は街に行って異邦者登録をする日だ。
登録をしたら最後、自分はいよいよこの国の人間となる。

何だか自分が住んでいた世界からその瞬間に切り離される気がして…本当は嫌で仕方なかった。

「ジフから聞いた。お前がやりたい事があるって話。俺は悠斗の仕事の手伝いをしたいって言っておいた」

「ありがとう、本当にやるならレインの魔法は必須だから助かるよ」

「ジフが…お前は聞き分けが良すぎるって心配してたぞ。泣き言一つ言わないし、あの年齢なら遊びたいとか、女を抱きたいとかあるだろってな。決まった事や確実な事しか口にしないお前だから勝算はあるんだろ?だから希望は叶えてやりたいけどいい暮らしが保証できないからって」

もう完全に家族の目線じゃないか。ほんの数日の間柄なのに、よく理解して、すごく心配してくれている。

すごく嬉しい。嬉しいけど…。

「僕これでももう22歳なんだ。僕のいた世界だと成人して働いて、子供も居る人だっている」

一応これでも成人しているのだからもう少し頼り甲斐のある人間になりたい。

とは言え、大学生で社会に出ていない子供扱いだった事は間違いない。

「22か…ジフよりは、俺の方が近いな」

「うん?そうだね」

「ジフは呆れる程お節介で人が良いからよく他人を見てる。お前が達観しすぎじゃないかと心配しているがそれは俺も同意だ」

「確かにそうかも。世代というか、生まれつきって言うのかな、受け入れた方が楽なんだ。泣いて喚いても仕方ないじゃん。結果は変えられないんだから」

「けど、アンタが…毎晩こっそり泣いてたのは知ってる」

夜寝る前、一人になって冷静に考える時間が取れるようになると、ついつい泣いてしまっていたのだ。

自分の泣き声を聞かれていたのかと思うと恥ずかしくなった。

「悠斗、俺は保護者は二人も要らない。知らない土地に引っ張ってこらて不安なのは当たり前なんだからもっと人を頼れ。そして頼るのはあいつじゃなくて俺にしろ」

頬を膨らませてプリプリ拗ねるレインをみて思わず切ない気持ちになった。レインはまだ13歳なのにしっかりしている。

自分が13歳の時って何をしていたっけ?

本当ならもっと好きに遊んで食べて、親に勉強しなさいなんて怒られる、そんな生活をしているはずだ。

命の危険なんて大人たちが考える事。

それなのにこの少年は一回りくらい違う異世界から来た男に気を遣っている。

「ありがとう、レインはしっかり者だな」

頭をわしわし撫でると、膨らんだ頬が更に膨れ上がる。

「違う!俺を子供扱いするなって言ってるんだ。くそッ!今に分からせてやるからな」

そう言って部屋を出て行ってしまった。
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