世紀末な異世界で餌付けした少年は番犬へと成長した

メカラウロ子

文字の大きさ
7 / 20
白の番犬/幼少期

プロローグ7

この土地に来て、初めての一人行動だ。

レインは入り口の受付へ何か話すと、用事があると言ってどこかへ行ってしまった。

悠斗はそのまま会場の中へ進むと、まずは撮影と測定器で髪や唾液などを採取された。

そして別の部屋へ通され、車の免許会場のような解説動画を見ている。


『ご安心ください。言語は自動で翻訳されています』

そう言われてみれば今の今まで気にも留めなかったけど、普通に会話できてるな。

後は概ねジフやレインから聞いていた内容ではあった。

新たな情報といえば、体調が悪くなれば無料で検査を受けられる事、転移時の持ち物は国が預かる事、国が管理する場所で衣食住無料で保証されるが研究や情報提供に協力する事などだ。

異邦者のコミュニティも入れるそうだが、すぐには行けないかもしれないと断ると、ちょっと残念そうな顔をされたがいつでもお気軽にお越しくださいとだけ言われた。

相談窓口の連絡先と端末を手渡され、担当事務員に丁寧に説明を受ける。


「お疲れ様でしたー!転移時のお荷物はこちらで回収させていただきまーす!」

やたらと明るくて、眼鏡をかけピッタリと髪を撫で付けた受付が両手を出している。

「す、すみません…実はここに来る前に売り払ってしまいまして…」

一瞬キョトンとした顔をしたものの、資料をめくり納得した様子で頷いた。

「あー。ジフさんトコの人でしたか!いやはや、さすが!ジフさんってちゃっかりしてるなぁー!!持ち物0、売却済みって書いときますね!」

「ジフさんのお知り合いですか?機械関係の方?」

「やだなぁ!僕がそんな細かい仕事できるように見えます?あ、レインくん来ましたよ。外で待ってるみたいですね。また何かあればいつでもお気軽にお越しください。では良い一日を」

そう言われると気付けば外に出ていた。
あまりの暴風のような挙動にポカンと開いた口が塞がらない。

「どうしたんだ?呆けた顔して」

レインが固まったままだった悠斗に声をかけてきた。

「ジフさんの知り合いって人に声をかけられたけど嵐のような人だった」

「ジフにも交友関係の一つや二つあるだろうが、特別親しい人間を見た事がない」

レインもだけど、ジフも大概謎だよな。

「そっか、じゃあ聞かなかった事にして」

「分かった。まだ時間があるから先に昼飯取ったら街を周るか」

「うん!街周るの楽しみ!!」

この街は煉瓦造りの高さの低い建物が多く活気にあふれている。

「じゃあ俺のおすすめの…」

食事に向かおうとした時、後方から叫び声が聞こえた。

「ひぃッ!ごめんなさい、ごめんなさい…助けてください…」

みると男性が複数の男達に囲まれてボコボコに殴られている。

そしてそれを周りはいつも通りの景色と言わんばかりに見て見ぬふりをしている。

殴られた男性はだんだんと声もあげることが出来なくなりぐったりしている。

「あれ…あの人死んじゃうんじゃ…」

同じく知らんぷりを決め込んでいたレインがため息をついた。

「可哀想だとか助けたいなんて思うなよ?お前の世界がどうだったかは知らないけど、あの男が盗みや殺人を犯したかもしれないだろ。複数人で報復は情けないとは思うけどな」

納得していなさそうな悠斗にレインは更に言葉を付け加えた。

「この国ではあらゆる場所で録画されてるから、行動の記録が確認できる。素人が手を出すと余計にややこしくなるから法に任せればいいんだよ。悠斗、この世界で生き残りたいなら自分ができる以上の事はしない方がいい」

「そっか…。そうだね」

レインの言う通り、警察官のような人物がすぐさま現れた。

「けどまあ、見ていて気分がいいものではないのは確かだ。メシ、持ち帰りでいいか?」

「うん…ありがとう」


***


帰りの車の中でさっき起きた出来事を思い返していた。レインも空気を読んで話しかけては来なかった。

もしジフに協力をしてもらえなくても国に頼らず生活しようと思っている。

そうする以上、さっきみたいな危険はついて回るだろう。

それが嫌なら国に守ってもらって、知らない異世界人と一緒に死ぬまで安全圏でシェルターの中で暮らせばいい。

だけどそうなると、異世界へ通じるゲートの研究はできなくなる。

さっきの動画でも危険だという理由でゲートに関わる事は禁忌と言っていたから国の管理下で、ましてや魔力がなく誰かに頼らなくてはならない状況でできる訳がない。

悠斗には確信があった。
一方通行なんてあり得ない。体を丸々元の世界に戻す事が出来なくても、向こうへ何らかのアプローチができれば帰る方法が見つかるはずだと。

気丈に振る舞ってはいても、帰りたいに決まっている。

その為には腹を括る必要がある。

「ねえ、レイン」

「何だ」

「ジフは協力してくるかな?」

「するだろ。間違いなく。お前は出会って日が浅いから知らないだろうがな、口を開けば俺ならもっとこうするだの、新しくアイディア思いついただのうるさいんだ。せっかくのチャンスを不意にするわけない。あいつは根っからの機械バカなんだ」

「機械バカ…」

「賭けてもいい。多分もう既に何か作っててお前に見せたくてうずうずしてるぞ」

「…そうなの?」

「これ、ボールペンやシャープペンが思ったより高く売れた事だし、ジフに言われていた金額よりかなり多めに資金ができたんだ。だからといって無駄遣いするなよ?」

ずいっと金が入った袋を渡された。

「この金を使ってどうしたいかはお前の自由だ。何をして、どう生きたいのかもな。好きに生きればいい」

「レイン…」

張り詰めていた緊張の糸が切れてしまったらしい。涙でぐしゃぐしゃの顔を見られたくなくて、レインの肩に顔を埋めた。

レインは最初はビクッと固まったものの、ぎこちなく背中を撫でてくれる。

やっぱりその手は温かくて、優しくて、なんだかホッとした。


***


「あー…。どうだった。いや、その何だ」

ジフが腰に手を当てウロウロしている。

「無事に登録して、身分証明書のようなものを発行してもらいました」

そうか…と言いながらまたジフはウロウロし始める。

「いいか、悠斗。預かるだけだ。いつかはお前に返すからな?」

手元には綺麗に包まれたPCとスマホがある。

「ジフのくせに気持ち悪いな。はっきり一緒に仕事しようって言ったらどうだ」

「ぐっ…このマセガキめ…」

レインの言う通り、ジフは新しく考えた設計図を見せてきた。

さて、これから忙しくなるぞ。



ーーーーーー

幼少期完。次回から大人編です。
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。