執着の茶室〜無垢なスーツは和装男子に暴かれる〜

メカラウロ子

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着物を着てみましょう③

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「はい、着きましたよ。」

「運転ありがとうございます、お疲れ様でした。」

樹の家は古民家を改装した広い屋敷で、車庫も余裕で3台くらい車は停められそうだ。

庭も綺麗に手入れされており、このツツジの木は庭師が切ったんだろうな。というのがよく分かる。

離れだけでも玲が住んでいる今の賃貸より圧倒的にデカい。

もしかして…いや、もしかしなくても樹さんは実家が太いタイプの人なんじゃ…。

何となくは感じていた。日頃の品のある所作といい、この年でお茶をやっている男性なんてどこかの資産家の息子なのではないかと。

株で儲けているとはいえ、関東近郊でこの規模の家なんて個人ではとてもじゃないけど買えないだろう。

お店だって引き継いだにしたって税金や管理費だって高いはずだ。

要するに、店も家もリフォームできるようなお金をポンと出せるお金持ちだという事だ。


「凄い…立派なお家ですね…手入れも行き届いていて…。」

「ここも祖母から引き継いだ家です。入退院を繰り返していたので元の家をバリアフリーに改築したのですが、結局半年くらいで亡くなってしまってそこまで活用されていないんです。茶器やなんかも全て祖母が持っていたものを譲り受けているんですよ。」

そう言えば、店にも値を張りそうな器があったな…店にはそんな高価な物は置いていないと言っていたけれど、多分高価の基準が自分と違う気がする。

こういうのは消耗品ですからね。とにこやかに言っていた樹を思い出し怖くなってきた。

玲は今更になって、店で使っていたレンタル用の茶器の値段を想像して身震いした。


玄関からじゃなくてすみません、こちらからどうぞ。と裏の勝手口から中へ案内される。

「良かった…中は普通なんですね。」

中はフローリングにソファに絨毯という一般的なものだ。もちろん、十分広いし家具一つ一つがオーダーメイドな空気がひしひしと伝わってくるのだが。

意外にも和物で揃っているわけではなく、生活感の感じる日用品が綺麗にまとまって整理されていた。

「全室畳だと思ってました?僕はズボラだし、とても一人で管理するのは無理ですよ。」

またまたご謙遜を…と言いかけたがさっき戸を足であけていたのを目撃したので強ち間違いではないのかもしれない。

今日は樹の色んな素顔が見れて新鮮だった。

「少し休憩したら着物を着てみましょうか。」

テキパキと荷物を片付けたり、ご飯の準備をしている樹を眺めてから座敷に案内された。


ーーーー


「うわ…凄い。これ全部着物に使うんですか?」

着物の他に見慣れないものが並ぶ。

「そうですね、まず下着…これはTシャツのままでもいいですがデニムは履き替えましょうか。その上にこの長襦袢ながじゅばん、これが伊達締めと言ってお腹周りに結びます。その上に着物、帯を締めたらお好みで羽織りの順番です。」

あの有名な時代劇の肩を出し桜吹雪を見せるシーンは実際には将軍様が下着なしなわけないんだしフィクションなんじゃないだろうか。

「僕のお爺さんが昔着ていたものをお貸ししますね。丈が短いってのもあるんですが、どうにも僕はカーキやエンジが似合わないんですよ。パーソナルカラーってやつでしょうか。玲さんなら上手く着こなしてくれそうだなと思って。」

「えぇ!こんな高そうなの着れないですよ!!もっと普段着みたいなやつでも…」

「いえ、着物もたまに袖を通さないと悪くなってしまうので。むしろ着ていただいて助かります。」

そういう事でしたら…とヒヤヒヤしながら着替えることにした。





▼▼▼▼▼▼

下着:長襦袢の下に着るものでTシャツや短パン等に代用される。爺さんの股引きみたいなイメージ

腰紐:着物の脇の下に通す隙間があり女性の場合、お端折(山折にして二重に重ねて長さを調整する)があるのでここでしっかり固定

伊達締め:帯と似ている見た目だが、長襦袢と着物を固定するために使用する。

衿芯を入れるの忘れたんですが、元々入れてたということで…
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