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お願い!①
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「取材、動画や写真、全てお断りで!あくまでもお茶を点てるだけだから!お願い…!」
と、最終的に泣き落としで樹にイベント出演を頼み込んだ。
介護用ロボットには人間の手の動きのように繊細なものから食事に関するものもあり、全く無関係ではない。
AI対人間の将棋対決だってあるのだから、AIがお抹茶を点てられる未来は来るのか?という筋書きでも良いのでは?
最初は渋っていた樹も、玲の顔を見て断るに断れなかったらしい。
写真や動画無しで本当にただお茶を点てるだけなら…と了承してくれた。
「当然、なつくんにも手伝ってもらうからね。言い出しっぺなんだから。」
「えぇ!就活する時の履歴書に書いていいならいいよ。」
就活するんだ…。
この子はちゃっかりというか、しっかりというか…どこでもやってけるんじゃないだろうか。
「いつもなら樹兄さんこういうイベント嫌がるんだけど、元々頼まれたら断れないタイプにしても玲さんだけには激甘だよな。」
「状況を回避できたかもしれないのに何も言えなかった訳だし、それに、玲さんってなんだか放っておけないというか…」
「そんな!こんなの不可抗力なんだから樹さんのせいじゃないですよ!!すみません、僕が頼りないばかりにご心配をおかけして…とりあえず、上司に電話してきます!詳しくはその後でお話ししましょう!」
再度部屋の隅で電話を始める玲を尻目に、夏樹は樹に耳打ちした。
「だめだよ樹兄さん、あんなんじゃ気づかないって。」
「だから、そんなんじゃないって言ってるだろ。大事な…お客様なんだから。」
「どうせ38歳ってまだまだ若いって思ってるでしょ?オジサン!!それに8歳差だよ?小学一年生と中学三年生!」
「うるさいな」
戻って来た玲に気づくと、はいはいと言った様子で夏樹は離れて行った。
ーーーー
「いやー…まじでどうなる事かと思ったけど、何とかなりそうで良かったな!本当、あんなエッチなお兄さんどこで見つけてきたの。」
今日はイベントのリハーサルの日だ。西谷が肩にドスっと重心をかけながら話しかけてきた。
「だから、僕のお茶の先生だって何度も言ってるだろ…」
「川瀬がお茶ってのも意外だけどさぁ、あれは只者じゃないね。男だけど未亡人の香りがするもん。あの夏樹くんってのも大学院生だっけ?とんでもなく曲者なんじゃないか?」
あの後、西谷含むチームメンバーにイベント内容の提案をした。
皆、藁にもすがる思いだったし、上長もきちんと資格がある方なら問題ないと即許可を得た。
メインで動いていた西谷とはオンラインでは顔合わせをしていたものの、今日で対面は初となる。
「玲さん、西谷さん、こんにちは。」
会場の入り口から樹と夏樹が手を振りながら向かってくる。
施工業者に紛れ、遠くからでも二人は圧倒的な存在感を放っていた。
「お越しいただきありがとうございます。道分かりました?」
「はい、流れに沿って」
「桐生さん、夏樹くんも。今日はリハよろしくお願いします。けど本当に着物はご自身のでいいんですか?購入は無理でもレンタルなら経費で落ちますから言ってくださいね。」
衣装をどうするかという話になった時、樹達は自分で用意しますと返答していたのだ。
「いえ、問題ありませんよ。催事の際は紋付き袴を着ますからいくつか用意はあるんです。」
「へぇ、特注かぁ!じゃあ逆にレンタルなんかはプロからしたら恥ずかしいですよね。無知ですいません、勉強不足でした。やっぱり皆さんの家の家紋が入っているんですか?」
「そりゃそうでしょ。初釜とかは大体それだよ。生地が硬そうでしっかりしてるやつ。あとは既婚者と未婚者で違うけど、女性の場合は格式高い着物は下の方に柄があるのがよりフォーマルなんだよ。」
流石夏樹、場数を踏んでいる。上手く家の話題から逸らしている。
西谷は感心しながら川瀬知ってた?と玲に話しかけてきた。
「袴が正装なのは何となく…成人式のイメージかな。あ、初釜って言うのは一年の最初にやる茶会なんだよ。」
「ふーん、川瀬ちゃんと習ってんだなぁ。」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でてくる。
「お二人は…仲が良さそうですね。知り合って長いんですか。」
「はい、俺達同期なんですけど俺最初は営業で。向いてないなって悩んでて、転職も考えてるって川瀬に相談してたんですよ。」
コミュ力と営業で売り込むためのセールストークはまた別物だ。
あの時は売り上げを伸ばせず落ち込む西谷の愚痴をよく聞いていた。
「そしたら、西谷のトーク力ならうちのチームにライツ担当メインで欲しいけどなって言われて衝撃でしたね。その時思いつめてたから異動なんて考えもしなかったんです。だからコイツには感謝してるんですよ。」
その時、西谷の無線機が鳴った。
「あ、桐生さん。舞台準備できたみたいだから行きましょうか。夏樹くんはもうちょい後で来てね。川瀬よろしく。」
「うん、また声かけて。樹さん、頑張ってください!」
「はい。なつくん大人しくしててね。」
「樹兄さん、俺を何だと思ってるわけ?」
「じゃあ夏樹くん、待ってる間に写真でも撮る?履歴書に書いていいって主催者から許可が出たし、企業ブースと人にモザイクかけるならレポートにも使っていいって言われたんだけど…」
「えっ!いいの?撮る撮る!」
夏樹は興味津々といった様子で写真を撮る。
学生である夏樹はこういった仕事の現場というものを初めて見るのだという。もちろん、バイト経験もない。
「これもう職場体験だよね。課題これにしようかな…あ、そうだ事務所の話どうなったの?まさかあのまま泣き寝入りなんて事ないよね?」
「一応は謝罪を受けて代理の方をって言われたんだけど急場凌ぎの内容は結構ですって断ったんだ。今回の事はやっぱり事務所は薄々気づいていたみたいで、上司が信頼できないってきっぱり言ってたよ。」
夏樹は当然です!という顔をした。
「気づいてなきゃおかしいよね。違約金たんまり貰いなよ?うちの家は財閥だけど、父親がそういうのはしっかり貰わないとっていつも言ってるもん。我々は財布の紐が硬いんだよ。」
「それは…上司の仕事だからな。けど、樹さんも夏樹くんもいつも何かくれるから財布の紐が硬いとかそんな風には思えないけど。」
「いやいや、実際出してるのは樹兄さんだし。アレは好きな人に対してだけだから玲さん気をつけなよー。そのうち山とかプレゼントされるかもよ。」
山…?強ち冗談ではなく山くらい何個か持ってそうだから反応に困る。
「ねぇ玲さん、こんな所でする話じゃないかもしれないけど、俺前に玲さんをセフレと勘違いした事ずっと後悔してるんだ。だって凄くちゃんとした大人で仕事もしてて。今まで見た事あった樹兄さんの相手って…」
それ以上夏樹は言わなかった。
「樹兄さんってあんな見た目だけどまともに恋人とか見た事ないからそういうの下手なんだと思う。だからさ…」
「何で…」
何で僕にそんな事を言うの?
その時、腰に繋がれた無線機から夏樹を呼ぶ声が流れ、玲はその言葉を飲み込んだ。
と、最終的に泣き落としで樹にイベント出演を頼み込んだ。
介護用ロボットには人間の手の動きのように繊細なものから食事に関するものもあり、全く無関係ではない。
AI対人間の将棋対決だってあるのだから、AIがお抹茶を点てられる未来は来るのか?という筋書きでも良いのでは?
最初は渋っていた樹も、玲の顔を見て断るに断れなかったらしい。
写真や動画無しで本当にただお茶を点てるだけなら…と了承してくれた。
「当然、なつくんにも手伝ってもらうからね。言い出しっぺなんだから。」
「えぇ!就活する時の履歴書に書いていいならいいよ。」
就活するんだ…。
この子はちゃっかりというか、しっかりというか…どこでもやってけるんじゃないだろうか。
「いつもなら樹兄さんこういうイベント嫌がるんだけど、元々頼まれたら断れないタイプにしても玲さんだけには激甘だよな。」
「状況を回避できたかもしれないのに何も言えなかった訳だし、それに、玲さんってなんだか放っておけないというか…」
「そんな!こんなの不可抗力なんだから樹さんのせいじゃないですよ!!すみません、僕が頼りないばかりにご心配をおかけして…とりあえず、上司に電話してきます!詳しくはその後でお話ししましょう!」
再度部屋の隅で電話を始める玲を尻目に、夏樹は樹に耳打ちした。
「だめだよ樹兄さん、あんなんじゃ気づかないって。」
「だから、そんなんじゃないって言ってるだろ。大事な…お客様なんだから。」
「どうせ38歳ってまだまだ若いって思ってるでしょ?オジサン!!それに8歳差だよ?小学一年生と中学三年生!」
「うるさいな」
戻って来た玲に気づくと、はいはいと言った様子で夏樹は離れて行った。
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「いやー…まじでどうなる事かと思ったけど、何とかなりそうで良かったな!本当、あんなエッチなお兄さんどこで見つけてきたの。」
今日はイベントのリハーサルの日だ。西谷が肩にドスっと重心をかけながら話しかけてきた。
「だから、僕のお茶の先生だって何度も言ってるだろ…」
「川瀬がお茶ってのも意外だけどさぁ、あれは只者じゃないね。男だけど未亡人の香りがするもん。あの夏樹くんってのも大学院生だっけ?とんでもなく曲者なんじゃないか?」
あの後、西谷含むチームメンバーにイベント内容の提案をした。
皆、藁にもすがる思いだったし、上長もきちんと資格がある方なら問題ないと即許可を得た。
メインで動いていた西谷とはオンラインでは顔合わせをしていたものの、今日で対面は初となる。
「玲さん、西谷さん、こんにちは。」
会場の入り口から樹と夏樹が手を振りながら向かってくる。
施工業者に紛れ、遠くからでも二人は圧倒的な存在感を放っていた。
「お越しいただきありがとうございます。道分かりました?」
「はい、流れに沿って」
「桐生さん、夏樹くんも。今日はリハよろしくお願いします。けど本当に着物はご自身のでいいんですか?購入は無理でもレンタルなら経費で落ちますから言ってくださいね。」
衣装をどうするかという話になった時、樹達は自分で用意しますと返答していたのだ。
「いえ、問題ありませんよ。催事の際は紋付き袴を着ますからいくつか用意はあるんです。」
「へぇ、特注かぁ!じゃあ逆にレンタルなんかはプロからしたら恥ずかしいですよね。無知ですいません、勉強不足でした。やっぱり皆さんの家の家紋が入っているんですか?」
「そりゃそうでしょ。初釜とかは大体それだよ。生地が硬そうでしっかりしてるやつ。あとは既婚者と未婚者で違うけど、女性の場合は格式高い着物は下の方に柄があるのがよりフォーマルなんだよ。」
流石夏樹、場数を踏んでいる。上手く家の話題から逸らしている。
西谷は感心しながら川瀬知ってた?と玲に話しかけてきた。
「袴が正装なのは何となく…成人式のイメージかな。あ、初釜って言うのは一年の最初にやる茶会なんだよ。」
「ふーん、川瀬ちゃんと習ってんだなぁ。」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でてくる。
「お二人は…仲が良さそうですね。知り合って長いんですか。」
「はい、俺達同期なんですけど俺最初は営業で。向いてないなって悩んでて、転職も考えてるって川瀬に相談してたんですよ。」
コミュ力と営業で売り込むためのセールストークはまた別物だ。
あの時は売り上げを伸ばせず落ち込む西谷の愚痴をよく聞いていた。
「そしたら、西谷のトーク力ならうちのチームにライツ担当メインで欲しいけどなって言われて衝撃でしたね。その時思いつめてたから異動なんて考えもしなかったんです。だからコイツには感謝してるんですよ。」
その時、西谷の無線機が鳴った。
「あ、桐生さん。舞台準備できたみたいだから行きましょうか。夏樹くんはもうちょい後で来てね。川瀬よろしく。」
「うん、また声かけて。樹さん、頑張ってください!」
「はい。なつくん大人しくしててね。」
「樹兄さん、俺を何だと思ってるわけ?」
「じゃあ夏樹くん、待ってる間に写真でも撮る?履歴書に書いていいって主催者から許可が出たし、企業ブースと人にモザイクかけるならレポートにも使っていいって言われたんだけど…」
「えっ!いいの?撮る撮る!」
夏樹は興味津々といった様子で写真を撮る。
学生である夏樹はこういった仕事の現場というものを初めて見るのだという。もちろん、バイト経験もない。
「これもう職場体験だよね。課題これにしようかな…あ、そうだ事務所の話どうなったの?まさかあのまま泣き寝入りなんて事ないよね?」
「一応は謝罪を受けて代理の方をって言われたんだけど急場凌ぎの内容は結構ですって断ったんだ。今回の事はやっぱり事務所は薄々気づいていたみたいで、上司が信頼できないってきっぱり言ってたよ。」
夏樹は当然です!という顔をした。
「気づいてなきゃおかしいよね。違約金たんまり貰いなよ?うちの家は財閥だけど、父親がそういうのはしっかり貰わないとっていつも言ってるもん。我々は財布の紐が硬いんだよ。」
「それは…上司の仕事だからな。けど、樹さんも夏樹くんもいつも何かくれるから財布の紐が硬いとかそんな風には思えないけど。」
「いやいや、実際出してるのは樹兄さんだし。アレは好きな人に対してだけだから玲さん気をつけなよー。そのうち山とかプレゼントされるかもよ。」
山…?強ち冗談ではなく山くらい何個か持ってそうだから反応に困る。
「ねぇ玲さん、こんな所でする話じゃないかもしれないけど、俺前に玲さんをセフレと勘違いした事ずっと後悔してるんだ。だって凄くちゃんとした大人で仕事もしてて。今まで見た事あった樹兄さんの相手って…」
それ以上夏樹は言わなかった。
「樹兄さんってあんな見た目だけどまともに恋人とか見た事ないからそういうの下手なんだと思う。だからさ…」
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