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樹と玲③
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目を覚ますと背後から樹に抱きしめられたまま眠っていた。
暖かな体温とさらりとした皮膚の感触に心臓が跳ねる。
「樹さん!離してください!」
「んー?」
「トイレに行かせて!」
「逃げない?」
さらに抱きつく手に力を込められる。
この人は!少しは自分の顔の良さを自覚した方がいい。
「……もう逃げませんよ、まだちゃんとお礼出来ていないんですから…」
自分は昨日、この人に花散らされたのだ。
この中に…。
「…っ。」
昨夜の情事を鮮明に思い出し赤面する。
「目、覚めちゃった。コーヒー飲む?」
のそのそとベッドから樹が降りてきた。
「あ…はい、欲しいです。」
ん。と言って一瞬後ろから抱きしめて肩にキスをされるとそのまま去って行った。
なっ!なんだ今の通り魔みたいなキスは…!
樹に用意された服に着替え少しの間トイレに篭った。
昨日は、勢いでセックスしてしまった。
後ろは初めてなのにあられも無く喘ぎ善がりまくって後半は意識飛ばして…。
「はぁ…樹さん、やっぱり手練れって感じだったな。」
樹は自分に尽くしていたからかオーガズムを得ているようには見えなかった。
「身体の相性最悪って思われてたらへこむなぁ…」
玲は洗面台から離れ、樹の元へ向かった。
「正直賭けだった。君の気持ちが見えなくて。」
「すみません。」
二人でコーヒーを飲む。
「夏樹に聞いたかもしれないけど、僕は昔、褒められた生活をしていなかったから。…この前久しぶりに実家に行って袴を借りに行ったんだ。」
部屋にかけられた袴は独り身用のこの部屋には不釣り合いで存在感を放っていた。
「両親に、顔向けできないって思ってた。何か理由が無ければ会いに行くなんてできなかった。でもそのきっかけをくれたのは玲さんだよ。」
優しく微笑み、手を重ねるように握られ思わず赤面する。
「何に使うの?って聞かれて、大事な人の手伝いをするためだって答えたんだ。今までは、こんな風に自信を持って自分の行動を人に話せなかった。ましてや、立派な両親と兄の前では。」
樹が握った手に少し力を込める。
「だから君が辞めたいって連絡をしてきた時、言葉が出なかったよ。今も辞めたいって思ってる?」
「そ、れは…」
言葉に詰まる。
「僕は…あの時間が好きです。だけど、自分に見合う人じゃないって思っていて。樹さんも、夏樹くんも。」
指先が冷たい。血が通わない感覚がする。
「でも僕は、樹さんがみんなに取られるんじゃないかって、そう思いながらも独占欲があって、もしそうなったらって思うと怖くて逃げた…」
ふぅ…と樹は息をついた。
「僕たちは似たもの同士の恋愛下手ですね。お互いいい大人なのに。…僕も嫉妬しました。普段のあなたを知っている会社の人達に。」
樹が玲を愛おしいものを見るように見つめてくる。
「もし玲さんが心地良いと思ってくれているのなら、またお店に来てください。回数券もまだあるし予約してますから。」
「あ…ありがとうございます、嬉しいな。それに、夏樹くんにはお礼言わないと。」
「あぁ、なつくんが玲さんを騙すような事してごめんなさいだそうです。」
「いえ、結果的にそうすべきだったしむしろ感謝してます。」
「はぁ…。だからお礼楽しみにしてる。だそうですよ。玲さん、悪い人に捕まらないか心配なんだけど…」
樹に指の背で頬を撫でられた。
「良ければ、また家に来ませんか?この賃貸じゃなくて、桐生の家の方へ。なつくんも待ってますから。」
「はい、僕で良ければずっとずっと、遊びに行きます。」
では。と樹がぽんと手を叩いた。
「今週は仕事はお休みだと西谷さんから伺っています。お礼してくださるんですよね?」
「えっ、は、はい。」
「では、あなたの休日をください。」
覚悟はいいですか?と微笑む樹の顔は普段とは異なる顔をしていた。
fin
ーーーー
最後まで読んでいただきありがとうございました。
お茶や着物に興味持ってもらえたら嬉しいです。
暖かな体温とさらりとした皮膚の感触に心臓が跳ねる。
「樹さん!離してください!」
「んー?」
「トイレに行かせて!」
「逃げない?」
さらに抱きつく手に力を込められる。
この人は!少しは自分の顔の良さを自覚した方がいい。
「……もう逃げませんよ、まだちゃんとお礼出来ていないんですから…」
自分は昨日、この人に花散らされたのだ。
この中に…。
「…っ。」
昨夜の情事を鮮明に思い出し赤面する。
「目、覚めちゃった。コーヒー飲む?」
のそのそとベッドから樹が降りてきた。
「あ…はい、欲しいです。」
ん。と言って一瞬後ろから抱きしめて肩にキスをされるとそのまま去って行った。
なっ!なんだ今の通り魔みたいなキスは…!
樹に用意された服に着替え少しの間トイレに篭った。
昨日は、勢いでセックスしてしまった。
後ろは初めてなのにあられも無く喘ぎ善がりまくって後半は意識飛ばして…。
「はぁ…樹さん、やっぱり手練れって感じだったな。」
樹は自分に尽くしていたからかオーガズムを得ているようには見えなかった。
「身体の相性最悪って思われてたらへこむなぁ…」
玲は洗面台から離れ、樹の元へ向かった。
「正直賭けだった。君の気持ちが見えなくて。」
「すみません。」
二人でコーヒーを飲む。
「夏樹に聞いたかもしれないけど、僕は昔、褒められた生活をしていなかったから。…この前久しぶりに実家に行って袴を借りに行ったんだ。」
部屋にかけられた袴は独り身用のこの部屋には不釣り合いで存在感を放っていた。
「両親に、顔向けできないって思ってた。何か理由が無ければ会いに行くなんてできなかった。でもそのきっかけをくれたのは玲さんだよ。」
優しく微笑み、手を重ねるように握られ思わず赤面する。
「何に使うの?って聞かれて、大事な人の手伝いをするためだって答えたんだ。今までは、こんな風に自信を持って自分の行動を人に話せなかった。ましてや、立派な両親と兄の前では。」
樹が握った手に少し力を込める。
「だから君が辞めたいって連絡をしてきた時、言葉が出なかったよ。今も辞めたいって思ってる?」
「そ、れは…」
言葉に詰まる。
「僕は…あの時間が好きです。だけど、自分に見合う人じゃないって思っていて。樹さんも、夏樹くんも。」
指先が冷たい。血が通わない感覚がする。
「でも僕は、樹さんがみんなに取られるんじゃないかって、そう思いながらも独占欲があって、もしそうなったらって思うと怖くて逃げた…」
ふぅ…と樹は息をついた。
「僕たちは似たもの同士の恋愛下手ですね。お互いいい大人なのに。…僕も嫉妬しました。普段のあなたを知っている会社の人達に。」
樹が玲を愛おしいものを見るように見つめてくる。
「もし玲さんが心地良いと思ってくれているのなら、またお店に来てください。回数券もまだあるし予約してますから。」
「あ…ありがとうございます、嬉しいな。それに、夏樹くんにはお礼言わないと。」
「あぁ、なつくんが玲さんを騙すような事してごめんなさいだそうです。」
「いえ、結果的にそうすべきだったしむしろ感謝してます。」
「はぁ…。だからお礼楽しみにしてる。だそうですよ。玲さん、悪い人に捕まらないか心配なんだけど…」
樹に指の背で頬を撫でられた。
「良ければ、また家に来ませんか?この賃貸じゃなくて、桐生の家の方へ。なつくんも待ってますから。」
「はい、僕で良ければずっとずっと、遊びに行きます。」
では。と樹がぽんと手を叩いた。
「今週は仕事はお休みだと西谷さんから伺っています。お礼してくださるんですよね?」
「えっ、は、はい。」
「では、あなたの休日をください。」
覚悟はいいですか?と微笑む樹の顔は普段とは異なる顔をしていた。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
お茶や着物に興味持ってもらえたら嬉しいです。
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