あなたと二人

ゆきちん

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モヤモヤ

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ノンちゃんはコミニュケーション能力が異常に高いので入学早々から新しい環境にもすぐに慣れていてクラスでも色々な友達と話しているのを廊下から通りすがりに見ていた
心配していた悪評しかないユキと仲良くしている事についても、周りからは単なる幼馴染みだから仲良くしているという認識のみで彼女自体に不良要素がないのでクラスでもその事については問題なく受け入れてもらえた感じになっていて何の障害もない楽しい毎日を送っていた


ユキは自分との関係が原因で彼女が過ごしにくくなっていたら自分はまた学校には行かずにおこうかとも考えていたので、トイレのついでに廊下からチラッと見てはかなりホッとしていた



そんな彼女が乙女の顔をしながら今後の希望に満ちた学校生活の妄想をしながら色々と話してきていた



「とりあえず学校にも少し慣れたから、今後の最優先課題の第一目標は彼氏作りだよね」


「やっぱそれが第一目標?
勉強とか部活とか友達作るとかは?」


「ぶははははっ
勉強なんて優勢順位なら最下位じゃん
当たり前でしょ~っ
あんなのテスト前だけでいいんだってぇ~
あと、部活はもうちょいしたら体験入部とかもあるからそれやって決めたらいいだけだし、友達は頑張って作るもんじゃないっしょ
普通に学校に行っとけばどっちも流れで出来るじゃん
だから、それよりやっぱ前から言ってるように最優先課題は彼氏作りだって~っ」



同じ小学校には同級生男子も四人しかおらず、その四人ともがノンちゃんの好みとは違っていて、友達としてならいいが付き合いたい対象には絶対にならなかったので彼女は前々から男子も人数が増える中学に入学する事を非常に楽しみにしていたのだ



そう言ってノンちゃんは理想の彼氏像を語りだした
しかし、キラキラした目で話す彼女とは対称的に希望条件も10個を越えた辺りでユキは面倒臭くなって目を細めながら冷たくボソッと言った


「そんな男どこにいるの?
マンガの見すぎだって……
あんたの頭の中はメルヘンか?」


基本的にワガママなので本気でそんな理想を抱いているノンちゃんは「いいでしょっ!」とムッとした顔をした


「て言うか、希望条件多すぎ!
もしそんな人がいたとしたら間違いなく人の話を聞かない自己中自由人のノンちゃんは選ばないって……まず自分の性格考えなって」



ユキは普段から失言の多い彼女にたまには反撃をしてやろうと嫌味を言うと、いつものように自分が一番可愛い彼女は当然のように自分の欠点は都合よく解釈して予想通り逆ギレをしてきた



「ムッカ~っ!
私が自己中人間とでも言いたいわけ?」


「あははははっ
言いたいわけって……だから人の話を聞いてないって言ってんのよ
はっきり『自己中自由人』っていつも言ってるじゃん」


「ホント、人を馬鹿にしやがって~
ちょっとだけ自己主張が強いだけです!」


「あははははっ
出た出た、何で毎回自分の事だけは都合良く解釈して良いように言えるの?
て言うか、そもそもうちの学年に付き合いたいと思えるような男子なんていた?」



男子どころか学校全体の人物すら全く誰がいるのか知る気もないユキだが、普段から彼女の話を聞いていると数人の男子の名前も挙がっているので、ちょっと探りを入れてやろうと思ってわざとノンちゃんが言い返してきそうな一言を言うと予想通り彼女は拗ねた態度をやめて話に乗ってきた


「他の学校から来た人達の中だと結構良さげな男子もいるよ
ユキちゃんがトイレ以外で教室から出ないからわかんないだけだって」



ユキは男子の品定めは全くしていなかったので移動教室の時も人にぶつからないように軽く周りは見てはいるが、基本的に好奇の眼差しで見られているのがわかっているので顔は前に向けているが目線は下に向けている事が多かったので通りすがる人の顔は全く見ていない
なので前後左右に誰がいたのかすら全く記憶になかった


そしてノンちゃんが気になった数人を教えてくれたが「ふ~ん……」と聞いてはいたが顔もわからない相手なので全く興味が湧く事もなく流して聞いていた



「でさ、男子も結構派閥というかグループがあるみたいで、面白いグループもあるけどクセの強い面倒な集団もあるみたいだよ」


「まぁ私は関わる事はないけど、それはそれで個性的だし面白いんじゃない?
でもどうせつまんない人達の集まりっぽい気もするけど……」



お喋りなノンちゃんはクラスの色々な人から聞いた違う学校でグループ化していた目立つグループの話などをしていたが、夕飯の時間が近づいてくると食いしん坊の彼女は「あっ、こんな時間!もう夕飯出来てそ~っ。帰らなきゃ」と、ほとんど一人で喋って騒いで余韻もなく会話途中で途切ると慌ただしく帰って行った



『て言うか、グループの説明の途中で話をやめて帰るなよ
別に興味あるわけじゃないけど超気になるじゃん……』



モヤモヤした気持ちのままだが、今日は少し距離のあるお店で翌日が定休日なので閉店間際には色々な生鮮食品が半額や半額以下になる定休日前の特売なのを思い出しユキは当然ながら無免許だが原付きで買いに行く事にした



原付きは姉が誰かから貰ったのか取り上げたのかわからないが自由に使っていいとカギを渡されていた
今は亡き祖父母が生前農作業でトラクターなどを停めていたが既に処分して物置小屋となっている家の敷地の隅にある小屋に停めてある


この原付きはマフラーもいじっていないのでフルフェイスヘルメットを被れば何歳が乗っているのかもわからないし、安全運転をすれば警察に停められる事もないからと引きこもり始めた半年前から遠くに買い物に行く時は使っていてもちろんレディース活動の時も利用していた



原付きなので自転車と違って疲れないので一気に行動範囲も拡がった

スーパーで主婦が話している『特売のお店が○曜日の何時から半額になる』などの情報を耳にすると多少遠くても一度そのお店に行って確認したりもできるようになったので普通の主婦並に特売情報や格安スーパーを知っていた



「よっしゃ!
今日も500円余らせた」


お小遣いは一般的な額しか貰えないのだが、それとは別に母から一週間ごとに食材代金として貰っているお金を半額や○割引のお肉や野菜などを買って浮かせると残金はユキのお小遣いとして貰えるのでユキにとってはこのお店選びや買い物時間の選択が重要な生命線となっていた



「むっふっふっ
最近は毎日学校にも行っちゃってるし、今週も結構安く済ませて残金もかなり余裕あるから自分へのご褒美として大好きなこのちょっと高いチョコを買っちゃお~っと」


大好物のちょっと高めと言っても300円のチョコを買ってウキウキしながら家に帰り、家族分の夕飯を作ってからいつものように一人で夕飯を食べていた



『どうせならノンちゃんも一緒に食べればもうちょっと食が進むのに……
いやいや、あの子にそんな誘いをしたら毎日来そうだからやめとこ
それにノンちゃんの事だから帰るの面倒になったから泊まるとか言いだしそう』



一人の夕飯には慣れたので寂しさはないが、学校生活という大勢の人がいて賑やかな場所にいたせいで一人での食事に安堵感はあるが少し寂しさを感じていた



『はあっ……今更何をそんな気分になってんのよ、私
これがうちの普通なんだし気楽でいいじゃん』



淋しさを打ち消すように自分に言い聞かせ、夕飯を食べ終わってから部屋で大好物のチョコをチビチビ食べながら横になって雑誌を見る一時がたまらなく幸せを感じる瞬間だ


普段の気を張った大人数での学校生活の疲れも蓄積されていて最近は夜更かしする事もなくベッドに横たわると電気も消さずにいつの間にか眠ってしまう事が多くなっていて、この日もチョコの甘さを噛みしめながらいつの間にか眠ってしまっていた
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