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【第1話】自称モブ男は、恋愛フラグを回避する
俺はモブ男になりたい。
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物心ついた頃から、なぜか周りで同性カップルが多かった。男はもちろん、女まで。
生まれた時から異性が好きだと疑わない俺は、フラグを折りまくって25年生きてきた。
その間も周りで聞く浮いた話は、仲良くしてた友人達、親戚の兄弟、極めつけは双子の兄から見た目は可愛い男の恋人を紹介された日。あれは忘れられない……まさかの重婚するのか? って。2人して同じ相手を好きだと言って、好かれてる側もどっちも選べない矛盾野郎。それなのに、2人は優しいとか言って詐欺られそうで心配になった。
まぁ、2人が幸せなら別に良いんだけど……。兄弟とはいえ俺には全く影響はないからだ。迷惑をかけられない限り――。
そんな俺にも強敵がいる。
「おはよう。フー」
「あ! おはよう……ソラ」
あぶねぇ……。今、コイツ……俺の名前を呼ぼうとしたよな。コイツの名前はソラティオ。フルネームで呼んでたら、愛称で呼んでくれって言うから仕方なく呼んでいる。
但し、これもフラグなのは分かっているつもりだ。コイツは良くある暴走しないタイプだから大目に見ているだけで……。
俺にも本当は両親からもらった有り難い名前がある。だが、モブとして生きると決めた時から俺は名前を捨てた。いや、他の奴はみんな知ってるけど。
ソラは幼馴染みの男だ。でもって、コイツは百パーセント俺を狙っている。
さっきも言ったように、他の男共と違って危ないフラグを立てて来ないし、手を出さない。超人的な精神力の持ち主だ。
町中を歩いている間もそこかしこで話している俺以上のモブと化している女達が騒いでいる読み物がある。
それが『溺愛』を題材にした物語らしく、きっとそれに近いのかもしれない。
溺愛しているからこそ手を出さない紳士な振る舞い……申し訳ないが、俺は靡かないから諦めてくれ。
そう心の中で呟いてきて25年も経ってしまった。
その間、コイツも浮いた話は聞いた事がある。
だけど、ヤることはヤっている男だ。
少し前にそんな話が出て、女の子に泣かれたから付き合ったり、好きじゃなくても良いってモブもいたらしい。それで、コイツ自身も好きな相手をエスコート出来るように経験したとか。
お互いに合意の上なら良いと思う。だが、そのエスコートは俺にしなくて良い……。
正直、コイツが好意を持っているからなのかもしれないが、一緒にいて楽だったりする。だけど、絆されたりはしないし、寝泊まりもしない。夜も会わないし、酒はもってのほかだと控えている。徹底的なフラグ回避だ。
コイツがどれだけ溺愛していても、事故みたいな間違いは起こるかもしれない。周りの話を聞いていると良くある話だった。
コイツが一言でも好きだとかそんな素振りをしてくれたら、振れるんだけど……。
実はコイツもフラグ回避しているかのごとく、全然作ってこない。このまま実らない恋を追いかけて人生棒に振っても良いのかと余計な心配をしてしまう。
「なぁ、フー」
「あー……今日、どうする?」
毎度飽きずに名前を呼ぼうとしてくるのも嫌がらせか……。
でも、俺が話題を振ると本当に嬉しそうに爽やかな笑みを浮かべてくる。しんどい。頼むから俺の良心をえぐらないでくれ。
コイツとは何の因果か生まれた場所も同じだった。本来は、自宅出産をするらしいんだが、母さん含めてコイツの母親も早産らしくて、準備が整ってなかったことで急遽病院出産だったらしい。
生まれて早々に盛大なフラグをかましてくれている……。
そのせいなのか、コイツとのフラグを折るのは一苦労だ。運命の相手なんて、ロマンティストでもあるまいし……。
いや、コイツは男の俺が言うのもなんだが結構な男前だ。
身長は180センチを超えているし、甘い顔に金髪、翠眼ときた。
それに対して、俺は170センチギリギリで、男前と言えるほど他人からキャーキャー言われる顔じゃない。但し、この世界はモブまでそれなりの顔をしていている。
その中でなら、俺も上の方かもしれない。但し、目立たない黒髪に碧眼。青い目は悪くない……だけど、筋肉は付きづらいし、これと言った取り柄がない。
コイツは着痩せするタイプらしく、脱いだら凄かった……。
「今日は、非番だから。えっと……君の好きな所に行きたいな」
コイツも25年間俺に付き合っているから、名前を呼ばれたくないのは気づいているチャレンジャーだ。諦めた時は決まって「君」と呼んでくる。
俺は第三者に対しては「コイツ」だったり、本人を「お前」って呼んでるな。
「あー……好きな所。じゃあ、近くにある洒落た喫茶店で何か買って、公園のベンチで食べよう」
敢えて喫茶店内には入らない。良い雰囲気が出ても困るし、逃げ道を失う。公園のベンチなら、恋人同士じゃなくても普通だろう。ここでフラグを作るとしたら、断然自宅だな。コイツも俺の家に来たがってるし……。当然、反対に呼ばれても毎回言い訳をして断っている徹底ぶりだ。
どこに居ても輝いて見えるコイツは、容姿のままに騎士団へ所属しているエリート様で、次期団長って言われるほどの実力者でもある。
そんな奴と隣り合って喫茶店に並んでいたら黄色い声しか飛んでこない。
「あ、フ……君は、何にする?」
「あー、そうだな。今日は、甘い気分だから……蜂蜜紅茶で」
「へえ……甘い気分なんだ。それなら、僕も同じのにしようかな」
え……。今のはフラグじゃないはず。コイツ……俺が油断したら突いてくるタイプだったのを忘れていた。
俺はすまし顔で料金を先払いする。待っている間も「甘い気分って、どんな気分?」なんて聞いてくる周到さには恐れ入った……。
だけど、25年もフラグを折ってきた俺に抜かりはない。
「それは、夜の仕事を考えたら糖分を取らないとやっていけないからに決まってるだろう」
「あー……そうだね。仕事、忙しい? 危険なことしてないよね」
すぐに諦めるのはコイツの良いところだ。俺は町の秩序を守る自警団に所属している。自警団と言っても、無償じゃなくしっかりとした職業で給金は多くないけど、一人暮らし出来るくらいは貰っていた。
此処は俺達の生まれた町で、実家もすぐ近くにある。
当然、騎士団に所属しているコイツは王都で暮らしていて、非番の日にわざわざ帰ってきていた。
まぁ、王都と言っても馬で数時間の距離だから大して離れていない。王子様顔負けな、黒い艶のある毛色をした愛馬で颯爽と帰ってくる。
一度乗ってみないかと誘われたが、フラグなので回避した。
男同士なのはさておき、抱きしめる形になる可能性は捨ておけない。密着は一番の恋愛フラグだ。
赤レンガの屋根を眺めながら、近くの公園へやってきた。噴水なんて洒落た物もない、離れたところにベンチが2つあるだけの公園。
夜だと酔っ払いが寝かけているか、昼間は仕事や一息つくための人間しか訪れない。フラグ回避にはうってつけの場所だ。
「あ、ソラ。カップケーキなんかも買ったのか」
「ああ、うん。少し小腹が空いていたからね。良かったら、君も食べる?」
これはコイツの技の一つ。危ないフラグを立てないだけで、一切何もしてこない無害な奴じゃない。俺のことを溺愛してるだけあって、何かしら行動してくる。世話を焼きたい気持ちと、男の下心――。
そう、間接キスだ。
コイツは知らない振りをして、俺に物を食べさせてから自分が食べる。思春期の暑い日。フラグを折るのを忘れていた俺は、暑さでつい……ソフトクリームを食べてしまった。
男だからって無駄なプライドによって買わなかった過去の自分を殴りたい。
一口だけって誘い文句へ乗って舌で舐めてしまった。そしたら、横目で見えたコイツは男の顔で、唾を飲み込む音を聞いてしまったわけだ……。
そのあとはご想像にお任せする。そんなわけで、それ以来やんわりと断っていた。
「いや、俺は腹減ってないし。全部食べろよ」
「ああ、うん……。僕に出来ることがあったら、言ってね」
あからさまに残念がるな。俺の良心に響く。
出来ることって言ったら、どうしたらお前の恋愛フラグを回避出来るかって話だけど……。
悲しませたくはないんだよな。それに、一緒にいたくないわけじゃないし、幼馴染みで親友としてそばにいてほしい。
この世界だと成立しないかもしれないけど……。こんな引く手数多だろう男前が、どうして俺なんか好きになったんだか……。運命は残酷だと思う。
生まれた時から異性が好きだと疑わない俺は、フラグを折りまくって25年生きてきた。
その間も周りで聞く浮いた話は、仲良くしてた友人達、親戚の兄弟、極めつけは双子の兄から見た目は可愛い男の恋人を紹介された日。あれは忘れられない……まさかの重婚するのか? って。2人して同じ相手を好きだと言って、好かれてる側もどっちも選べない矛盾野郎。それなのに、2人は優しいとか言って詐欺られそうで心配になった。
まぁ、2人が幸せなら別に良いんだけど……。兄弟とはいえ俺には全く影響はないからだ。迷惑をかけられない限り――。
そんな俺にも強敵がいる。
「おはよう。フー」
「あ! おはよう……ソラ」
あぶねぇ……。今、コイツ……俺の名前を呼ぼうとしたよな。コイツの名前はソラティオ。フルネームで呼んでたら、愛称で呼んでくれって言うから仕方なく呼んでいる。
但し、これもフラグなのは分かっているつもりだ。コイツは良くある暴走しないタイプだから大目に見ているだけで……。
俺にも本当は両親からもらった有り難い名前がある。だが、モブとして生きると決めた時から俺は名前を捨てた。いや、他の奴はみんな知ってるけど。
ソラは幼馴染みの男だ。でもって、コイツは百パーセント俺を狙っている。
さっきも言ったように、他の男共と違って危ないフラグを立てて来ないし、手を出さない。超人的な精神力の持ち主だ。
町中を歩いている間もそこかしこで話している俺以上のモブと化している女達が騒いでいる読み物がある。
それが『溺愛』を題材にした物語らしく、きっとそれに近いのかもしれない。
溺愛しているからこそ手を出さない紳士な振る舞い……申し訳ないが、俺は靡かないから諦めてくれ。
そう心の中で呟いてきて25年も経ってしまった。
その間、コイツも浮いた話は聞いた事がある。
だけど、ヤることはヤっている男だ。
少し前にそんな話が出て、女の子に泣かれたから付き合ったり、好きじゃなくても良いってモブもいたらしい。それで、コイツ自身も好きな相手をエスコート出来るように経験したとか。
お互いに合意の上なら良いと思う。だが、そのエスコートは俺にしなくて良い……。
正直、コイツが好意を持っているからなのかもしれないが、一緒にいて楽だったりする。だけど、絆されたりはしないし、寝泊まりもしない。夜も会わないし、酒はもってのほかだと控えている。徹底的なフラグ回避だ。
コイツがどれだけ溺愛していても、事故みたいな間違いは起こるかもしれない。周りの話を聞いていると良くある話だった。
コイツが一言でも好きだとかそんな素振りをしてくれたら、振れるんだけど……。
実はコイツもフラグ回避しているかのごとく、全然作ってこない。このまま実らない恋を追いかけて人生棒に振っても良いのかと余計な心配をしてしまう。
「なぁ、フー」
「あー……今日、どうする?」
毎度飽きずに名前を呼ぼうとしてくるのも嫌がらせか……。
でも、俺が話題を振ると本当に嬉しそうに爽やかな笑みを浮かべてくる。しんどい。頼むから俺の良心をえぐらないでくれ。
コイツとは何の因果か生まれた場所も同じだった。本来は、自宅出産をするらしいんだが、母さん含めてコイツの母親も早産らしくて、準備が整ってなかったことで急遽病院出産だったらしい。
生まれて早々に盛大なフラグをかましてくれている……。
そのせいなのか、コイツとのフラグを折るのは一苦労だ。運命の相手なんて、ロマンティストでもあるまいし……。
いや、コイツは男の俺が言うのもなんだが結構な男前だ。
身長は180センチを超えているし、甘い顔に金髪、翠眼ときた。
それに対して、俺は170センチギリギリで、男前と言えるほど他人からキャーキャー言われる顔じゃない。但し、この世界はモブまでそれなりの顔をしていている。
その中でなら、俺も上の方かもしれない。但し、目立たない黒髪に碧眼。青い目は悪くない……だけど、筋肉は付きづらいし、これと言った取り柄がない。
コイツは着痩せするタイプらしく、脱いだら凄かった……。
「今日は、非番だから。えっと……君の好きな所に行きたいな」
コイツも25年間俺に付き合っているから、名前を呼ばれたくないのは気づいているチャレンジャーだ。諦めた時は決まって「君」と呼んでくる。
俺は第三者に対しては「コイツ」だったり、本人を「お前」って呼んでるな。
「あー……好きな所。じゃあ、近くにある洒落た喫茶店で何か買って、公園のベンチで食べよう」
敢えて喫茶店内には入らない。良い雰囲気が出ても困るし、逃げ道を失う。公園のベンチなら、恋人同士じゃなくても普通だろう。ここでフラグを作るとしたら、断然自宅だな。コイツも俺の家に来たがってるし……。当然、反対に呼ばれても毎回言い訳をして断っている徹底ぶりだ。
どこに居ても輝いて見えるコイツは、容姿のままに騎士団へ所属しているエリート様で、次期団長って言われるほどの実力者でもある。
そんな奴と隣り合って喫茶店に並んでいたら黄色い声しか飛んでこない。
「あ、フ……君は、何にする?」
「あー、そうだな。今日は、甘い気分だから……蜂蜜紅茶で」
「へえ……甘い気分なんだ。それなら、僕も同じのにしようかな」
え……。今のはフラグじゃないはず。コイツ……俺が油断したら突いてくるタイプだったのを忘れていた。
俺はすまし顔で料金を先払いする。待っている間も「甘い気分って、どんな気分?」なんて聞いてくる周到さには恐れ入った……。
だけど、25年もフラグを折ってきた俺に抜かりはない。
「それは、夜の仕事を考えたら糖分を取らないとやっていけないからに決まってるだろう」
「あー……そうだね。仕事、忙しい? 危険なことしてないよね」
すぐに諦めるのはコイツの良いところだ。俺は町の秩序を守る自警団に所属している。自警団と言っても、無償じゃなくしっかりとした職業で給金は多くないけど、一人暮らし出来るくらいは貰っていた。
此処は俺達の生まれた町で、実家もすぐ近くにある。
当然、騎士団に所属しているコイツは王都で暮らしていて、非番の日にわざわざ帰ってきていた。
まぁ、王都と言っても馬で数時間の距離だから大して離れていない。王子様顔負けな、黒い艶のある毛色をした愛馬で颯爽と帰ってくる。
一度乗ってみないかと誘われたが、フラグなので回避した。
男同士なのはさておき、抱きしめる形になる可能性は捨ておけない。密着は一番の恋愛フラグだ。
赤レンガの屋根を眺めながら、近くの公園へやってきた。噴水なんて洒落た物もない、離れたところにベンチが2つあるだけの公園。
夜だと酔っ払いが寝かけているか、昼間は仕事や一息つくための人間しか訪れない。フラグ回避にはうってつけの場所だ。
「あ、ソラ。カップケーキなんかも買ったのか」
「ああ、うん。少し小腹が空いていたからね。良かったら、君も食べる?」
これはコイツの技の一つ。危ないフラグを立てないだけで、一切何もしてこない無害な奴じゃない。俺のことを溺愛してるだけあって、何かしら行動してくる。世話を焼きたい気持ちと、男の下心――。
そう、間接キスだ。
コイツは知らない振りをして、俺に物を食べさせてから自分が食べる。思春期の暑い日。フラグを折るのを忘れていた俺は、暑さでつい……ソフトクリームを食べてしまった。
男だからって無駄なプライドによって買わなかった過去の自分を殴りたい。
一口だけって誘い文句へ乗って舌で舐めてしまった。そしたら、横目で見えたコイツは男の顔で、唾を飲み込む音を聞いてしまったわけだ……。
そのあとはご想像にお任せする。そんなわけで、それ以来やんわりと断っていた。
「いや、俺は腹減ってないし。全部食べろよ」
「ああ、うん……。僕に出来ることがあったら、言ってね」
あからさまに残念がるな。俺の良心に響く。
出来ることって言ったら、どうしたらお前の恋愛フラグを回避出来るかって話だけど……。
悲しませたくはないんだよな。それに、一緒にいたくないわけじゃないし、幼馴染みで親友としてそばにいてほしい。
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