忘れもの

神在琉葵(かみありるき)

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「美和子、じゃあ、行って来るね。」

「行ってらっしゃい!」



僕は昨年結婚した。
僕にはもったいないような、若くて美しい妻…
おまえは幸せ者だと友達にもとても羨ましがられている。
ただ、家事はあまり得意じゃないみたいだけど、彼女なりに頑張ってくれてるし、そんなことはたいして大きな問題じゃない。
美しく魅力的な彼女は僕の自慢だった。
彼女を誰よりも幸せにしたい…!
そんな想いから僕は仕事にも一段と身が入るようになった。
結果、僕は昇進し、忙しさは増したものの暮らしにも経済的なゆとりが出るようになった。





ところが、そんな幸せはそう長くは続かなかった。




*




「言い逃れはもうたくさんだ!」

「言い逃れなんかじゃないわ。
私は本当にそんなこと…」

僕は込み上げる怒りを抑えることが出来ず、鞄の中に隠し持っていた写真を彼女の前にぶちまけた。
彼女が男とラブホテルに入って行く決定的瞬間だ。
しかも、あろうことか、その男は僕と同じ社の若造だ。




「これでも知らないって言うのか!?」

僕が詰め寄ると、彼女は押し殺した声で笑った。




「な、なにがおかしい!?」

「そこまで知ってるのなら、何も聞くことないじゃない。
そうよ、この写真の通り。」

彼女は完全に開き直った。




「よ、よくもそんなことを…」

「あなたにだって非はあるんじゃないかしら?
仕事だ仕事だって、私のことなんてほったらかしておいて、それで夫だなんて良く言えたものね!」

「なんだと!おまえが普通の主婦よりも楽な生活をしてるのは誰のおかげだと思ってるんだ!」

「楽ですって?こんな小さいマンションに住まわせておいて、偉そうな口きかないで!
そういうことは、駅前のタワーマンションにでも住まわせてから言うのね!」




びっくりした。
家事は手抜きだけど、その他では優しい良い女だと思ってた彼女がそんなことを言うなんて…



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