小雨模様の白昼夢

神在琉葵(かみありるき)

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「う…うそ……」

それは私の想像を遥かに超えたものだった。
遠くからでも目立ってた丘の上の大きな白い建物…
まさか、それが樹君の別荘だったなんて…
今、私の目の前にある白い鉄製の門は、まるでどこかの国の宮殿みたいにエレガントな装飾で、私の身長より遥かに高い…
それがリモコンで左右にゆっくりと開いて、私の乗った車はその中を進んで行く。



「お疲れ様。」

「え…あ…あぁ……樹君こそ、お疲れ様。」

言いたい事は山程あるのに、興奮し過ぎてたせいか、私の口から飛び出したのはそんなつまらない言葉だった。
家を出て約五時間のドライブはようやく終点に着いたわけだけど…
広い駐車場には、他に三台の左ハンドルの車が停まってた。
あぁぁ…樹君…あなた、どんだけお金持ちなんですか~!!



車を降りた樹君が、扉を開けてくれる。
私も最近慣れては来たけど、こんなこと、樹君に出会うまで誰にもしてもらったことなかったよ。



「大丈夫?疲れなかった?」

「ううん、全然!」

一歩外に出ただけで私は感じた!
明らかに空気がうまい!
両手を広げて大きく伸びをして、新鮮な空気を思いっきり身体の中に取り込んだ。

あぁ~、なんて爽快な気分…!
お天気はいまいちだったけど、幸い雨も降らなかったし、別荘はこんなに素敵だし…



(私って…まさに現代のシンデレラ…!?)



樹君と知り合ったのは、半年程前のことだった。
たいして仲良くもない友人の結婚式に呼ばれて、普段履き慣れないハイヒールなんてはいていったせいで、帰りの駅の階段でずっこけて…
あやうく落っこちそうになった私を受け止めてくれたのが、樹君だった。
樹君は、誰もが振り向くようなイケメン…と、いうわけではないけれど、見るからに穏やかで優しそうな…そう、いわゆる癒し系。
私のヒールが折れてるのを見てとても心配してくれて…
そんなことから知り合って、なんとなくつきあいが始まって…
私の誕生日が近いってことを知った樹君は、別荘で誕生日のパーティをしようなんて言い出してくれて…そう、今日が初めての樹君とのお泊りデート。



「あやちゃん…疲れてないなら、少しだけそのあたりを散歩して来てくれる?
ちょっと準備があるんだ……」

樹君は、そう言ってにっこりと微笑んだ。



準備…?
わぁ…一体、どんな準備をしてくれるんだろう?
そういえば、今夜の食べ物とかはどうするんだろう?
たいした荷物はなさそうだけどトランクにでも隠してるのかな?



「うん、わかった!」

私は、聞きたいことも我慢してただそうとだけ答えた。
きっと樹君は私を驚かせようとしてくれてるんだろうから、私もそれを楽しみに待つことにしよう。

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