小雨模様の白昼夢

神在琉葵(かみありるき)

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「あのね、こっちに行くと森があるんだ。
静かで気持ちの良い所だから、きっとあやちゃんも気にいると思うよ。」

「えっ!森!?」

そんな大都会に住んでるわけじゃないけれど、自然の森なんて、私はまだ一度も行ったことがない。
ハイキングで山なら行ったことはあるけど、森と山とは違うよね?
そういえば、私にはどういうのが山で林で森なのかの区別さえつかない。
それほど、私の生活からはかけ離れた存在だった「森」がこんな身近にあるなんて…お金持ちってやっぱりすごい!?



「じゃ、行って来るね!」

私は、樹君に手を振って別荘を離れた。
初めての森も、樹君が準備してくれるパーティも楽しみで仕方がない。
嬉しくて込み上がってくる不気味な笑いを浮かべつつ、私は別荘の前の道をゆっくりと歩いて行く。
あたりはさすがに緑が多く、頬を撫でる風もとても爽やかで……
こんな素敵な所で、誕生日を祝ってもらえるなんて私はなんて幸せなんだろう。
いや、そもそも樹君と知り合えたこと自体が幸せなんだ。
そんなに親しくないだとか、出費がかさむとかせこいこと考えて気乗りしなかったけど、あの時結婚式に行って良かった!
ハイヒールが折れてくれて良かった!
人間って、幸せだとどんなことにでも感謝出来てしまう…
余裕が出るのか、それとも、私が単純なだけなのか…
気付かないうちに私は鼻歌まで歌ってしまってた。
普段は、歌なんて歌う事もないのに…



なだらかな細い一本道をのんびりと歩いていると、だんだんと木々の緑が濃くなって来た。
すでに森の入口が近付いてるってこと?
入口に「ここから森です」なんて、立て札が立ってるはずもないけど、この雰囲気はきっとそうなんだと思う。
生まれて初めての森…気分はますます盛り上がる!
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