小雨模様の白昼夢

神在琉葵(かみありるき)

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(素敵……)



それは、木の多い散歩道みたいな感じだったけど、街路樹と違って人工的な所がない。
左右対象に植えられてもいないし、ちょっと種類の違う木があったり大きさも違ってたり…
こういうのが自然なんだなぁ…なんて考えながら、私のテンションはますます上がっていく。



丘の上の白い別荘…
まるで外国みたいな気持ちの良い森…
優しい彼氏と、これから始まる誕生日のパーティ…
私の誕生日は明日だから、もしかしたら0時になった瞬間に何か私が思いもつかないようなサプライズな企画があったりして…
っていうか、今日は樹君との初めてのお泊りデートだったんだ…きゃーーーー

私の頭の中は、妄想ではちきれんばかりに膨らみ、森の中が薔薇色に感じられる程だった。
自然に私の足は軽快なスキップを刻み、御伽話の主人公かミュージカル女優にでもなった気分であたりの木々や花に話しかける。
危ないなぁ…と思いつつ……誰も見てる者はいないんだし、幸せなんだから良いじゃない!



楽しいなったら楽しいな!
嬉しいなったら嬉しいな!



上がり続けるテンション…!
今日はきっと人生最高の日だ…!



「あ……!」



不意に私の鼻の頭に冷たい何かがあたった。
そっと空を見上げると、今度はほっぺたにぽつんとあたった。
雨だ…降りそうな空模様ではあったけど、ついに降り出して来たんだ。
私は傘を持って来なかったことを後悔したけど、もう遅い…
走って帰る…?
いや、でもまだパーティの準備は出来てない筈…
せっかくのサプライズ企画を潰してしまうのは申し訳ないし…どうしよう…!?

そうだ!もしかしたら、こういう場所には傘の代わりになるような大きな葉っぱの植物があるんじゃない!?
昔話でカッパがさしてるような奴が…



私はそんなことを考えながら、あたりを見渡し小走りで森の奥へ向かった。
ところが、たまたまそんなものが生えてるなんて幸運はなく…
だけど、その代わりに良いものをみつけた。
それは、一際目立つ大きな木。
何年か前に某神社で見たご神木と同じくらい立派で、空を抱くかのように大きく枝を広げている。

あそこで雨宿りをしよう!
幸いそんなたいした雨でもないし、きっとすぐにやむ筈だ。
私は、その木を目指して駆け出した。



(良かった…)



思った通り、葉っぱが密集していて良い感じに雨を遮ってくれる。
ごつごつした木の幹に背中を預けて静かに目を閉じると、雨の音がとても心地良い…
静かで…規則的で…
私の家ではこんな心地良い雨音は聞いたことがない。
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