小雨模様の白昼夢

神在琉葵(かみありるき)

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雨音だけでこんなにも心が落ち着くなんて、考えてもみなかった。
きっと、私の頭の中は今アルファ波とかいうのが一杯出てるは…ず……



え……!?



不意に感じた眩暈のような感覚…
身体の重さがゼロになったような不思議な…



そして、次の瞬間…お尻に感じた衝撃となにかが押し潰されたような音…



ど、ど、どうした?
一体、何がどうなったの!?



一瞬にして、なんとなく周りの景色が…いや、気配のようなものが変わってる。
森は森なんだけど、さっきはこんなに密集してなかったような気がするし、雨が降ってないどころか地面が全く濡れてないし…とにかく何かおかしい。




えっ!?



お尻の下で何かが動いた!
手をのばすと何かもこもこしたものがいて……



「な、なにっっ!」

「……まずは退いてくれ……」

「え……ええっっ!?」



もこもこがしゃべった…退いてくれって言った……



私は速くなる鼓動を感じながら、お尻を浮かせた。
すると、そこにいたのは白い…う…うさぎ…!?



いや…そんなはずはない。
さっき、確かこいつしゃべったし…



うさぎは、タキシードのようなものを着ていて、妙に目立つテカテカしたエナメルっぽい靴まで履いてる。
二本足で立ちあがり、短い手でぱんぱんと身体についた土埃を払い、てけてけと数歩歩いてシルクハットを取り上げると、それを目深にかぶり、私の方に向き直った。



な、何…?
この状況は一体なに?
これって…うさぎよね?
でも、なんで、二本足?
服を着るのは…まぁ、飼い主の趣味かもしれないけど…
……あ、そうか!
このうさぎの飼い主が近くにいて、さっき、退けって言ったのはその人?



私はあたりを見渡した。
だけど、人の気配は全くない。



「あの~…誰かいらっしゃいませんか~?」



声をかけてみたけど、やっぱり返事はな…



「僕達以外、ここには誰もいない。」



返事があった!
……今の声は間違いなく男の声。
それも、けっこうおじさんの声だ。
でも、なんで隠れてるんだろう…



「出て来て下さいよ~」



…ん?

スカートの裾を触る者がいた。
そうそれはふかふかの白い手…
さっきのうさぎが、私のスカートの裾を触ってる。



「はいはい、うさちゃん。
すぐに、あんたの飼い主さんを探してあげるからね。」

「飼い主…?
それは誰のことだ?」

「誰って……え?」



私はうさぎを二度見した。
え…?え…?ええ…っ?



……違うよね?
うさぎはしゃべったりなんてしない。
そりゃあ二本足で歩いたりしておかしいのはおかしいけど…
うさぎはしゃべりませんったら!

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