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「まだ探すつもりなのか…?」

「あ、当たり前でしょ!
私、絶対にみつけるんだから!」



うさぎは疲れたような表情を浮かべ、小さな溜め息を漏らした。



あのね…疲れてるのは私の方なんだからね!
と、喉元まで出かかった八つ当たりの言葉を飲みこんで、私はきのこを探し続けた。
スカートの裾や私の膝や手は、雑草のせいで緑色に染まってる。
それほど探しても、鍵きのことやらはみつからなくて…
どこもかしこもあるのはあの雑草だけで、それ以外でみつかったものといえば小さな古めかしい金ボタンが一つだけ…



なんでこんなにみつからないの…!?
おかしいじゃない。
どうしてこんなに夢が長いの…!?



雑草の中に座りこんで、私はふとそんなことを考えた。



(……はっ!?)



ま、ま、まさかとは思うけど…
私…あそこで居眠りをした時に、寝惚けて転んで頭でも打って…
それで、打ち所が悪くて、今、生死の縁をさまよってるんじゃあ……



俄かに浮かんだ不吉な考えに、私の心の中に暗い不安が広がり、心臓は早鐘を打ち出した。



そ、そんなの…いや!
まだ若いし…やりたいことだってまだまだいっぱいあるんだし…
しかも、樹君との初めてのお泊まりデートであんな素敵な別荘に来て…そうよ!まだ中にも入ってないし、ご馳走だって食べてないし…
幸せいっぱいの誕生日が命日になるなんて、そういうドラマチックはいらないんだから!



探さなきゃ!なんとしても探し出さなきゃ!
きっと、ここで鍵きのこがみつかったら私は生き返れるに違いない!
こんな所で死んでたまるか!



必死だった…
さっきまでもかなり必死ではあったけど、命がかかってると思うと、必死さの度合いは比べものにならない程に上がった。

ふと見ると、あのうさぎも探してくれてる。
さっきまでは、何もせずにただぼーっとしてただけなのに…
……けっこう良いとこあるじゃない。
そのおかげで私の中のやる気がさらにアップした!



鍵きのこ!
絶対にみつけるぞ!!









(ん……?)



緑は癒しの色だっていうけれど、緑ばっかり見てるとわけがわからなくなってくる。
色だけじゃなく、形も同じものばかりなんだもの。
だから、一瞬見間違いかと思って、目を凝らして見てみたら…
そこには同じ色だけど、形の違う緑があって……



「う、うさちゃん!
ちょ、ちょっと来て!」



私の感情的な声にうさぎもびっくりしたようで、彼なりに急いで駆け付けてくれた。



「うさちゃん…これ…」

「あっ!」



うさぎは、短く声を上げ、もこもこの両手で包み込むようにしてそのきのこを摘み取った。
そして、振りかえると長い前歯をのぞかせてこう言った。


「鍵きのこだ!」


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