一足早い春が来た!

神在琉葵(かみありるき)

文字の大きさ
35 / 46

35

しおりを挟む
もしかしたら…だけど…
雨男はまだ小さい頃に親に捨てられたんじゃないだろうか?
それを河童男の家族か、または別の何者かが育てて…
それは、雨男にとっては幸せなことだったのかもしれないけれど、残念ながら、あの森にいるのはどこかおかしな者達だから、その影響を受けてしまって、雨男も自分が人間ではないと思いこんでるんじゃあ…?



そう思うと、雨男のことが無性に気の毒に思えてしまった。
もしも、俺の推測が当たってるとしたら、それこそ俺なんかにどうこう出来るような問題じゃない。
でも、もはや雨男も成人してるし、大人だから、施設に入るっていうのも難しいかもしれないし、何よりこいつはけっこう人見知りが激しいから、そんなことになったらきっと心細い想いをするだろう。
だったら、このままの方が良いのかもしれない。
 俺達としばらく暮らして、もう少し落ち着いて、自分が人間だってくらいのことが認められるようになったら…その時に然るべき機関の世話になれば良いじゃないか。



 「雨男!来週あたり、商店街に靴を買いに行こう!」

 「え?やだよ、おいら、そんな所に行けないよ…」

 「そりゃあ確かに遠いけど、早乙女さんの車に乗せてもらったら、すぐだぞ。」

 「山田が買って来ておくれよ。」

 雨男は、商店街が遠いから行きたくないんじゃなくて、人の多い所に行きたくないんだ、きっと。



 「…わかったよ。
じゃ、どんな靴が良いんだ?」

 「おいら…靴ははいたことないからわからない。」

 「じゃ…じゃあ、色はどんなのが良い?」

 「色……う~ん……」

 雨男は、頭をひねり、妙に考え込んでいる。



 「決まらなかったら、俺が……」

 「あ……」

 俺が決めて良いかと聞こうとした時、雨男はなにかをひらめいたように小さな声を漏らした。




 「あ…あの…おいら…ゆきだるまと同じのが良い。」

 急にもじもじし始めた雨男が、おかしなことを口にした。




 「ゆきだるまって…??」

わけがわからずぼうっとしていると、雨男は俺の手を取り、歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...