一足早い春が来た!

神在琉葵(かみありるき)

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「あれ?あいつ、誰だ?」

 河童男は、そう言って早乙女さんをみつめている。



 「あ、この人は早乙女さん。
 今度、俺のバンドのメンバーになって、それで一緒に暮らすようになったんだ。」

 「あ、初めまして、早乙女由紀恵です。
どうぞよろしくおねが…」

 「あぁ、わかった、わかった。
わかったから、早く俺にも肉くれよ。」

 面倒臭そうにそう言うと、河童男は目の前のサラダを手掴みで頬張った。



 「あぁーー!食べる時は箸使えって言っただろ!」

 「っるっせぇな!
こらー!箸、箸!
 早く、箸くれー!」

 俺は、慌てて箸を持ち、河童男に手渡した。



 早乙女さんは、なんとも複雑な表情をして、新たに肉を焼いていた。
 河童男は俺の皿の肉をさっさと食べ始める。



 「あ、それは山田のだぞ!本当におまえはいつもあつかましいな!」

 「なんだと!久しぶりに遊びに来てやったっていうのに、おまえこそ細かいことをごちゃごちゃ言いやがって。」

 「何もこっちは遊びに来てほしいなんて言ってない!」

 「何を~!ごちゃごちゃ言ってると、こないだみたいにまた尻子玉を……ん?んん?」

 河童男の視線が、目の前に立ちはだかる早乙女さんの足元からだんだん上へと上がっていく。



 「げぇっっ!」

 河童男はおかしな声を出し、後ろに一歩飛び退いた。



す、すごい!
まさに、鬼のような形相だ!
この間、俺が睨まれた時なんかとは比べ物にならない殺気立った顔だった。



 「龍之介さんになにかしたら……
私が許さないから……」

それは、地の底から響く悪魔の声のようだった。
 皆、恐怖におののき、声を発する者さえいない。



 「は……はは……ま、とにかく…食べようか。」

ここはなんとかしなくては…って、思って、俺は決死の覚悟で笑いながらそう言った。


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