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卒業
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しおりを挟む「……どうしたんだ?ぼーっとして…」
「え?あ、あぁ、なんでもない。
お腹がいっぱいになったからだよ、きっと。」
「祥子らしいな。」
レストランがお休みの日、秀兄は、手作りの料理を私に食べさせてくれる。
ほとんどは新作料理の試食だ。
良い料理が出来た時は、それがお店の新作メニューになったりする。
ここのマスターは、もうずいぶん高齢で、最近ではお店を休むことも多く、秀兄が中心になって料理を作っている。
私はあと少しで大学を卒業だ。
なのに、先のことはまだ何も決めていない。
両親は戻って来てほしいと思ってるだろうけど、私はやっぱり秀兄の傍を離れたくないから、このあたりでバイトでもしようかと密かに考えている。
でも、私の恋は、叶わないことがわかってる。
秀兄には好きな人がいる。
同じレストランで働く真由さんだ。
マスターのお孫さんだと聞いたけど、二人の仲の良さは普通じゃない。
初めてレストランに行った時、二人の仲の良さに私は激しいショックを受けて、一晩泣き明かしてしまったくらいだ。
その時は、辛過ぎて故郷に帰ろうかと思ってしまったけれど、でも、秀兄と離れることを考えたら、その方がさらに辛くて…
とても未練がましいとは思うけど、妹でも良いから、秀兄の傍にいる道を選んだんだ。
私は、一生、自分の気持ちを告白することはしないと決めた。
……秀兄と一緒にいられるなら、それ以上、私は何も望まない…
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