上 下
24 / 40
絶対に押してはいけないボタン

しおりを挟む
カッパとの悪夢の結婚生活が始まった。
 俺達は、軍の用意したとある辺境の無人島に住むことになった。



ドグール星人の妊娠期間はほぼ三か月だった。
しかも、多産で一度に七~八人の子を産む。
 生まれた子供は、皆、カッパ似だ。
カッパ、カッパ、カッパ…家の中はどこを見てもカッパだらけだ。



 幸い、生活費は軍の方でみてくれるし、子供たちの成長も人間よりもずっと早いので特に問題はない。
それに、子供が生まれる度にカッパの機嫌は良くなっていった。
 俺もいつの間にかすっかりカッパに慣れ、最近では可愛いとさえ思うようになっていた。



 『良いか、どんどん子供を増やし、彼女の精神を落ち着けて、爆弾のありかを聞き出すのだ!』



 将軍から、そう言いつかっていた俺は、子供が百人を超えたのを機に、彼女に訊いてみた。



 「そういえば、爆弾の起爆装置はどこにあるんだ?」

 「うふふ…気になる?」

 「ま、まぁな。」

 「じゃあ、近いうちに教えてあ・げ・る。」

 「ほ、本当か!?」



 数日後、カッパがハイキングに行こうと言い出した。



 「じゃあ、いくわよ!」

 子供たちと手を繋ぎ、彼女がそう言うと、あたりの景色は一瞬にして変わっていた。
 百人を一瞬で運べるとは、たいしたテレポーテーション能力だ。
そこは鬱蒼とした暗い森の中だった。



 「なんで、こんな所に?」

 「ここは呪いの森と呼ばれてて、誰も立ち入ることがない森なの。
ここだったら、安全だと思ってね。」

カッパは穏やかに微笑む。



 「とりあえず、お弁当でも食べましょう。」

 「あ、あぁ、そうだな。
あ、その前に俺、ちょっと…トイレに…」



この森のどこかに起爆装置がある。
 早くそれを見つけ出さなくては…!
 俺は、皆の所から離れ、起爆装置を捜して歩いた。



 「カチッ」



 不意に、足に違和感と共に小さな音がして…







世界は目も眩むような光に包まれた。


しおりを挟む

処理中です...