愛すべき隣人

神在琉葵(かみありるき)

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「ところで、江藤君…
もしかして、自分……人と接する職業は苦手か?」

 「え……わかりますか?」

 「じゃ、ずっと人と接しんですむ仕事しとったんか?」

 「は、はい。そうなんです。」

 「そうか……ほんだら、今度は接客業やってみ。」

 「えっ!?」



 僕が人と接することが苦手だと知って、接客業をすすめるのは、どういうことだろう…?
これも何かの冗談なんだろうか?
 僕は意味がわからず、ただ曖昧に笑っていた。



 「なぁ、江藤君…
苦手やて思てても意外とそうやないことって、けっこうあると思わへんか?
ほら…言うてみたら食わず嫌いと同じようなもんや。
 見た目とかイメージで食べたことなかったもんが、いざ食べてみたら意外といける味やったってことあるやんか。
そういう時って、こんなうまいもん、今まで食べへんで損した~…って気になれへんか?
それと似たようなもんや。
うまいこといけへんかったり、やっぱり無理やと思たらやめたらええだけ。
 人生は長いようでも短いで。
その中で出来る事なんて、ほんま少ない。
いろんなことやってみな、もったいないと思わへん?」

 「そ、その通りです!
たかだか三百年やそこらしかない人生の中で、体験出来ること、認識出来ることは本当にわずかです!
 僕はもっともっといろんなことを研…じゃない…知りたいし、体験したいんです!」

てっちゃんの言葉は、真意は少し違うかもしれないけど、僕が常日頃思っていることと同じだったことが妙に嬉しかった。



 「江藤君……どないしたんや、急に熱なって…
しかし、三百年て……」

てっちゃんは何が面白かったのか、くすりと笑った。



 「でも、良かった。
この分やったらいけそうやん。
また、お母さんらに仕送り出来るようにがんばろな!」

 「はいっ!」

 母さんに仕送りの必要は全くなかったけど、僕はなぜだか頷いてしまってた。


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