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鏡の中と外
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「とにかく、もうあいつを待つのはやめた方が良い。
期待は大きい程、それが裏切られた時の失望は大きくなるものだ。
それに…おまえは言ってたじゃないか。
毎日が退屈で寂しいって……
それでも、おまえは元の世界に戻りたいのか?」
「そういうわけじゃない。
ただ…僕は、スコットに無事だということを知らせたいだけだ。
僕は無事だから、心配はしないでくれと……」
レオナールは再び喉を鳴らし、肩を震わせた。
「そんなことをしたら、奴に助けてくれというのと同じじゃないか。
おまえはいつもそうだ。
回りくどい言い方で、頼みごとをするのだな。」
「違う…今度はもう僕だって……
ただ…僕はあの時、彼との約束を裏切った。
だから、そのことを詫びたいだけだ。」
「ほう……詫びたいだけ…か。」
それが本心ではないことを、アラステア自身も、そして、レオナールもわかっていたが、どちらもそのことを口に出すことはなかった。
鏡の部屋は、現実の地下室とほぼ同じようなものだった。
部屋の中に置かれたものは地下室のものとまるで同じだが、その配置は変えようと思えば変えられるとレオナールは言った。
だが、わざわざ変えるのも面倒だから、変えたことはないのだと。
ただ、その部屋には人間や命を持ったものは現れない。
同じなのは、あくまでも命を持たないものだけだとレオナールは話した。
扉の向こう側は、現実のアラステアの屋敷とは、まるで違う間取りだった。
それは、レオナールが作った世界だからだということだった。
イメージをするだけで簡単に作れるものもあれば、どんなに考えても作れないものもあるという難解な仕組みなのだと言う。
アラステアの広大な屋敷よりもそこはなお広く…ただ、外に通じる扉だけはどれも開かなかった。
窓から外の景色は眺められるが、そこを開くことは決して出来ない。
レオナールは囚人のようなものなのではないかと、アラステアは漠然と推測した。
(君は一体、どういう人なんだろう?)
端正なレオナールの横顔をみつめながら、アラステアは彼の正体に想いを馳せた。
期待は大きい程、それが裏切られた時の失望は大きくなるものだ。
それに…おまえは言ってたじゃないか。
毎日が退屈で寂しいって……
それでも、おまえは元の世界に戻りたいのか?」
「そういうわけじゃない。
ただ…僕は、スコットに無事だということを知らせたいだけだ。
僕は無事だから、心配はしないでくれと……」
レオナールは再び喉を鳴らし、肩を震わせた。
「そんなことをしたら、奴に助けてくれというのと同じじゃないか。
おまえはいつもそうだ。
回りくどい言い方で、頼みごとをするのだな。」
「違う…今度はもう僕だって……
ただ…僕はあの時、彼との約束を裏切った。
だから、そのことを詫びたいだけだ。」
「ほう……詫びたいだけ…か。」
それが本心ではないことを、アラステア自身も、そして、レオナールもわかっていたが、どちらもそのことを口に出すことはなかった。
鏡の部屋は、現実の地下室とほぼ同じようなものだった。
部屋の中に置かれたものは地下室のものとまるで同じだが、その配置は変えようと思えば変えられるとレオナールは言った。
だが、わざわざ変えるのも面倒だから、変えたことはないのだと。
ただ、その部屋には人間や命を持ったものは現れない。
同じなのは、あくまでも命を持たないものだけだとレオナールは話した。
扉の向こう側は、現実のアラステアの屋敷とは、まるで違う間取りだった。
それは、レオナールが作った世界だからだということだった。
イメージをするだけで簡単に作れるものもあれば、どんなに考えても作れないものもあるという難解な仕組みなのだと言う。
アラステアの広大な屋敷よりもそこはなお広く…ただ、外に通じる扉だけはどれも開かなかった。
窓から外の景色は眺められるが、そこを開くことは決して出来ない。
レオナールは囚人のようなものなのではないかと、アラステアは漠然と推測した。
(君は一体、どういう人なんだろう?)
端正なレオナールの横顔をみつめながら、アラステアは彼の正体に想いを馳せた。
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