フライデーナイトはデンジャラス

１

（ちょっと飲み過ぎたかな…）



いつもと同じように歩いているつもりなのに、足を取られまっすぐに歩けない。
しかも、そんなことが妙におかしくて、俺は、今、笑いを堪えるのに必死になっている。



（完全に酔ってるな…）



金曜の夜は、どうしても気が緩む。
でも、本来ならばこんなことをしている場合ではない。
そんなこともわかってる…
だけど、わかってはいても、どうにも出来ない…
そんな俺に一番苛々しているのが俺だ。



酒は、現実を忘れさせてくれる。
そんなものはほんの束の間のことだわかっていても、俺は酒に逃げてしまう。



（……だめな奴……）



現実を思い出したら、急に気分が沈んだ。
俺は、人気のない公園のベンチに腰掛けた。



ふと見上げた夜空は曇っていて、星さえも見えない。
小さなため息が口をついて出た、その時……



「立川博人さん…だよね？」



急に、名前を呼ばれ、俺ははっとして声の方を見た。
そこには、黒いフード付きの長いローブ風の服を着た男がいた。
フードで顔はあまり見えなかったけれど、声から察するに男だということは間違いない。



「……そうだけど……何か？
っていうか、あんた…誰？」



男の服装は、ファンタジー映画か何かに出て来る魔法使いのようなもので、普通とは明らかに違う。
そんなおかしな奴と…しかも、こんな夜更けには関わらない方が良いのだろうけど、酔ってるせいか、俺は妙に強気だった。
怖いと感じるべき理性を、酒の魔力が押さえ込んでいたのだ。