Rebirth

神在琉葵(かみありるき)

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気が付いたとはいえ、私の体は相当なダメージを受けていたらしく、どこも自由には動かせないし、痛み止めを飲んでも痛みはおさまらない。
そんな中、最初に気になったのは、家のことだった。
 私がこんなに無断欠勤をしていたのだから、きっと田舎の家に連絡が入っているはず。
 気にはなりつつ、私は起き上がることが出来ない。
 困っていたら、大谷さんがお見舞いに来てくれたので、その時にスマホを借りた。



 「もしもし…」

 「はい、祥子かい?こんな時間にどうかしたのかい?」



 不思議なことに、母はまるで心配している様子はなかった。
てっきり会社からなんらかの連絡が入っていると思ったのに…



「あの…ちょっと風邪ひいて休んだんだ。」

なぜだか私は嘘を吐いた。



 「そうかい。大丈夫なのかい?
 薬は飲んだ?」

 「うん、大丈夫。
 心配かけてごめんね。じゃあ、また連絡するから。」

なぜ私はそんな嘘を吐いてしまったのだろう?
 自分でも良くわからなかった。
でも、事故に遭ったなんて言ったら、きっと母はこっちに来るはず。
そして、田舎に帰るように言われるようなそんな気がして、嘘を吐いてしまったのかもしれない。



 「あの…もう一件良いですか?」

 「ええ、どうぞ。」



 今度は、会社に電話をかけた。



 「おまえ、一体、今、どこにいるんだ?」

 課長の一言目に私は面食らった。



 「え?どこって…」

 「関口に聞いたぞ。おまえ、海外に旅行に行ってるんだってな。」

 「え?」

 彼がなぜそんな嘘を吐いたのかわからない。
 彼は、私が事故に遭ったことも知らないはずなのに、どうしてそんなことを…



課長には、もうここにおまえの席はないと言われた。



だけど、それでも私は本当のことを話さなかった。
 特に会社に未練はなかったから、荷物は後で取りに行きますと、ただそれだけを伝えた。
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