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惑わしの森

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それから瞬く間にまた一週間が過ぎ…
俺達は相変わらずの日々を過ごしていた。



その日もコンパスは光ったのに、アレクシスの姿はどこにも見られず…重い足取りでアランのねぐらに戻っている時…
不意に、俺達の頭上で鳥の羽ばたく音がして…



「あ……あれは……!!」

「アレクシス!!」



それはほんの一瞬の出来事だった。
木々の間から、白いものが飛び去って行くのが見えたんだ。



「ユリウス、コンパスを…!」

「え?」

「早くコンパスを…!」



ユリウスが、懐からコンパスを取り出すと、それは今までにないくらい明るく光ってたんだ。



「やっぱり間違いない!
今のはアレクシスだったんだ!」

コンパスの指す方向も、さっき、白いものが飛び去ったのと同じ方向だった。
ついに俺達は、アレクシスに追い付いたんだ。



「すぐに追わねば…!」

「無理だって、もうこんなに暗いんだ。
しかも、今日は散々歩き回って疲れている。
今から行ったって追い付けるはずがない。」

「しかし……」

ユリウスは悔しそうにしていたが、このあたりは特に歩きにくい道だ。
急ぎたくても急げないし、この疲れた身体では、ねぐらに戻るのが精一杯だ。
そのことは、ユリウスにもわかっていたんだと思う。
それ以上、アレクシスを追いかけようとは言わなかった。
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