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あの町へ

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(そういえば、確か、あの時……)



俺は、記憶の糸を手繰り寄せた。 



そう…あの日は、あの町の近くにある洞窟にお宝探しに行ってたんだ。 
その場所は町からも割りと近いし、さして危険な場所ではなく、エリーズは気が向かないと言うから、俺一人で向かったんだ。
エリーズは、危険なところやすごいお宝があるという所ほど、やる気になるらしく、ちょっとした所には興味を示さない。
実際に、その洞窟で手に入ったのは、程々の宝石がいくつかだけ… 
とはいえ、小粒だが、けっこう綺麗な宝石だった。
俺は、次の日のエリーズの誕生日にその宝石をプレゼントした。 



そう…エリーズと知り合い、すでに二年の月日が流れていたが、あいつは俺をただの相棒としか見ていなかった。
だから、最後のチャレンジのつもりで、あの日、エリーズにプロポーズしたんだ。 



自信なんて少しもなかった。 
きっと、だめだと思ってた。
今までにも何度も俺は告白したが、全く相手にしてもらえなかったからな。
なのに、意外にも、エリーズは俺のプロポーズを受けてくれて… 



あぁ…思い出しても胸が熱くなる!
あの時は本当に嬉しかったなぁ…



エリーズ…待っててくれよ!
あと少しで帰るからな… 
帰ったら、すぐに結婚式だ! 

エリーズの花嫁姿…きっと綺麗だろうなぁ… 


想像するだけで、身体がとろけてしまいそうだ… 



「ステファニー!」

「はっ!?な、なんだ?」

急に名を呼ばれて、俺は甘い想像から現実に引き戻された。



「ユリウスとの話はもう終わったんだよな?」

「え?あ…あぁ、まぁな。」

「なぁ、ステファニー…
前にも話したけど、故郷に戻ったら、あんたのご両親に挨拶を…」

「アラン…そのことなら、この間も話したはずだ。
私は、あんたとは結婚しない。」

俺がそう言うと、アランはとても悲しそうな顔をして、俺をみつめた。 



「どうしてもプリンセス・ルビーじゃないとだめだって言うのか?」

「その通りだ。」

俺がアランと結婚出来る道理はない。
可哀想だが、ここははっきり言っとかないと…!



「なぁ、頼むよ、ステファニー…
あの宝石のことはどうか忘れてくれ。
取られちまったものは、もうどうしようもないじゃないか…な?
その他のことなら、俺、どんなことでもするから!」

アランは真剣な顔で、俺に懇願する。 
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