上 下
102 / 120
あの町へ

102

しおりを挟む
「アラン…なんだって、そんなに私のことを…?」

それはごく素直な疑問だった。
今の俺はそれなりに可愛いらしいが、それだけのことで、結婚したいとまで思うのはなぜだろう?



「そもそもは一目惚れだ。
あんたはまさに俺のタイプだ。
大げさかもしれないが、森で出会った時、これは運命の出会いだ!って思ったんだ…」

まぁ、そういう気持ちはわからないでもない。 
俺も、エリーズに初めて会った時、それと同じような気持ちを感じたものだ。 
運命の出会いだって思ったもんだ。
だけど、俺は男なんだ。
アランの気持ちを受け入れられるはずがない。 



「気持ちはありがたいんだけど…」

「それだけじゃない。
一緒に旅をしてきて、ますますあんたのことが好きになった。
頭は切れるし、度胸もあるし、それに頑張り屋で優しい…」

「そ、そんなこと…」

アランの奴…俺のことをそんな風に思っててくれたのか…
ほめてもらえるのはありがたいんだけどな…



「俺のことが嫌いなのか?」

「え?嫌いってわけじゃあない。
むしろ…好きだ。」 

「ほ、本当か!?」

アランは、途端に嬉しそうな顔をした。



「あ…誤解しないで。
あんたは善い人だし…わ、私は人として、あんたのことが好きだって言うこと…よ。」

「あぁ、それで十分だ!
嫌いでさえないのなら、一緒に暮らしてるうちに情がわいてくるもんだって、俺のおふくろも言ってたぜ!」

「い、いや…その…」

アランはとても満足そうに微笑んでいる。 
まずかったか…はっきりと、あんたなんて大嫌い!って、言った方が良かったのか…!? 
でも、アランのことは本当に嫌いではないし、あの町に着くまで、気まずい想いはしたくはないから…



「と、とにかく、私はあんたとは結婚しない。」

「そうか…でも、俺は絶対に諦めない。
いつか必ずあんたの気持ちを変えてみせるから…」



俺は大きな溜め息を吐き出した。 
アランの気持ちはどうやら変わりそうにない。
厄介な話だが、あと少しすればすべては終わる。 
俺が実は男だとわかれば、アランだって諦めざるを得ない。



俺達は、順調に旅を続けた。 
特に、これといった問題もなく、悪くいえば退屈なほど平穏な日々… 
ユリウスもアレクシスがみつかってからは以前のように苛々したり突っ掛かって来ることもほとんどなくなり、拍子抜けするほどだった。 



しおりを挟む

処理中です...