夜を歩いて

神在琉葵(かみありるき)

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「はいはい、どうせ僕はおじさんだからね。
そんなことより早く帰った方が良いよ。
 家の人、心配するだろ?」

 「おじさんこそ帰ったら?
 奥さん、心配してるんじゃないの?」

 「僕には家族はいないよ…」

 僕は余程寂しそうな顔でもしてたのか、少女はしばらく僕の顔をみつめてた。



 「じゃあ、おじさんこそ家族をみつけなきゃ。
おじさんくらいの年ならまだ十分チャンスはあるよ。
けっこうイケメンだしさ。」



 (家族……)



 少女の言葉が妙に心に残った。
 僕は何もかも失った…でも、家族はまた作ることが出来るんだって、その時にあらためて思い出した。




 「ありがとう…君に会えて良かったよ。」

 「こっちこそ、ありがとう。」

 少女は、無邪気な笑みをのぞかせてくれた。



 僕はなんとなく良い気分で河原の方へ向かった。



 「卓也!おまえはそんなことをして平気なのか!?
 操の気持ちはどうなる?そんなことをしたら、操がどれだけ傷付くか…」

 暗闇から突然聞こえて来た大きな声に、僕は立ち止まり、あたりを見渡した。
 僕の目の先に男が一人立っているのが見えた。
でも、今の言葉から考えればもう一人いそうなのに、そこには男が一人しかいない。




 「卓也!おまえはそんなことをして平気なのか!?
 操の気持ちはどうなる?そんなことをしたら、操がどれだけ傷付くか…」

さっきとまるで同じセリフだ…



(セリフ…?)



そう、男はセリフの練習をしているようだった。
その後も同じセリフを何度も繰り返していた。



 「あ…」

 五~六回繰り返された時、男はようやく僕の存在に気が付いた。



 「すみません。練習の邪魔しちゃったかな?」

 「いえ…あ、あの…今のセリフ、どうでした?」

 「え?あ…あぁ、良かったと思いますよ。
 感情がこもってたから、最初はセリフだとは思わなかった。」

 「何番目のが良かったですか?」

 「え?…えっと…さ、さっきのが良かったかな?」

 「さっきのって…今のですか?」

 「う、うん…」

 僕はそこまで違いがわからなかったから、適当な事を言って愛想笑いを浮かべた。


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