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男性が立ち上がるのを目の端に捉えた時、私は鼓動が速まるのを感じた。 
 私が笑ったことで文句を言われるかもしれない。 
ややこしいことになるのは御免だ。
なんとか誤魔化さないと!



 「あの~…」

 「はい、何か?」

 無理矢理に平静を装って男性を見た。 



 (わ…意外とイケメン…)



そんなことに気付いたら、急に恥ずかしくなり俯いた。
こんなイケメンに出会うんだったら、もう少しおしゃれをして来ればよかったって、後悔までした。



 「間違ったらすみません。もしかしたら…美玖ちゃんじゃない?」

 「えっ!?」

 思いがけないことを言われてびっくりしてしまって、私は思わず男性の顔をみつめた。



なぜ、このイケメンが私の名前を… 



みつめるその顔は、いつしか私を遠い過去へ連れていってくれていた。 
 懐かしさで胸がいっぱいになる…



「だ…大樹君…?」

 「やっぱり美玖ちゃんだ!」

そう言うと同時に、私は大樹君に抱き締められていた。 
 久しぶりに感じた人の温もりに、私はもはやパニック状態… 



「わぁ…何年ぶりだろう…懐かしいなぁ…美玖ちゃん、元気にしてた?」

 「う、うん。元気。大樹君も元気そうだね。」 

 「うん、お蔭様で元気だよ。あ、僕、ここで食べます。」

ちょうど運ばれて来た定食をそう言って受け取り…
私の了承を得ることもなく、大樹君は私の隣に座った。 
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