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愛彩

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 (……えっ!?)




 「愛彩…こちら、本田学さん。
こちらは、私の友達の高原愛彩さんです。」



 約束の店に行って…
瑞穂に紹介された『学さん』は、『あの人』だった。
 私は混乱し過ぎて、何も言えず…
あの人も、私と同じように私のことをじっとみつめていた。



 「愛彩さん、初めまして。
 俺、三木悠太って言います。」

 「……え?
あ……あぁ、初めまして。」



 私の隣に瑞穂、向かいには三木という人が座った。
 私は動揺を知られないように、俯いていた。



どうしてこんなことが?
なぜ、あの人が瑞穂の彼氏?
もしや、良く似た別人…
いや、そんなわけはない。
 彼は、私が見立てたチェスターコートを着ている。



 何を話したのか、何を食べたのか…
全く、覚えていない。
 私はそれほど、混乱していた。



 「じゃあ、またね!」



 皆と別れて、電車に乗って…
一人になったら、なんだか泣きそうになってしまった。
でも、こんなところで泣けない。
 私は込み上がって来る涙を懸命に堪えた。



あんまりだ。
 好きになったあの人が、瑞穂の彼氏だったなんて…


涙がこぼれそうになって、私はそっと俯いた。

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