あなたが好きです。

神在琉葵(かみありるき)

文字の大きさ
47 / 50

しおりを挟む
「あの…それで、ご用件は…?」

 「え?」



 彼女の冷静な口調で、僕は我に戻った。



 「あ…すみません。
あの…単刀直入に訊かせていただきますが…
今、お付き合いされてる方はいらっしゃいますか?」

 「どうしてそんなことを?
 学さんにはそんなこと関係ないと思いますが…」

どこか棘のある話し方だった。
それが、逆に僕を刺激した。



 「関係あります。
 僕は…僕は、あなたが好きなんです!」

 「……え?
で、でも、あなたは瑞穂の……」



 僕は、話した。
あの時…彼女が笑顔を見せた男性のことを…



「あなたはご結婚されていて、あの方が旦那さんだと思い…僕は、めちゃくちゃショックを受けて…それで、大畑さんには申し訳ないのですが、何かもうどうでも良い気分になってしまって…」

 「え?うちの子がお店に来たのは一度だけで、その時は父が莉緒を連れて来てくれたんですが…」

 「あの…茶髪で、赤いポロシャツを着られててた長身の…」

 「あ、それなら父に間違いありません!」



 聞いたところによると、彼女のお父さんは、若作りで、今までにも旦那さんだと間違えられたことがあるらしい。



すべては誤解だったとわかったせいか、僕達は、すっかり打ち解け、話が止まらなくなった。
まるで、昔からの友人のように感じられ、気が付けば、もう二時間も話し込んでいた。



 「あ、もうこんな時間…!」

 「え?あ…すみません。つい長電話をしてしまって…」

 「……いえ。」



もう一度言おう…!
 僕の気持ちを…!



 「あやさん…!
あなたのことが好きです!
 僕と付き合って下さい!」



 照れ臭いはずなのに、言った後でまるで昭和の告白みたいだと思っておかしくなった。



 「……お気持ちはとても嬉しいんですが…瑞穂のことが……」

 「大畑さんには僕からきちんと説明します。
ですから、どうか…」



しばらく続いた沈黙が、僕を不安にさせる。




 「……お待ちしています。」

 「ほ、本当ですか!?」

 僕は、天にも昇る気持ちだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...