ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

文字の大きさ
4 / 89
大好きな伯父様

しおりを挟む
しばらくは、自分にそっくりなその人物のことが好意的に書いてあったが、そのうち、それは悪口に変わった。
 金もないくせに、綺麗事ばかり言う馬鹿者だと。

 日記帳はそこで唐突に終わっていた。



 (どういうことなの…?)



 理佐子の心の中に、何か得体の知れない恐怖が渦巻いた。



 (あ……)



 日記帳から、不意に白い封筒が落ちた。
 理佐子はそれを拾い上げる。



 『理佐子へ。』

それは、理佐子が見慣れた伯父の筆跡だった。



 読み進めるうちに、理佐子の涙は止まらなくなった。
そこにはすべてが書いてあった。
 理佐子が、父親のように想っていた人は、偽物の伯父だったことが…
遺産目当てに理佐子を引き取ろうとした伯父と、入れ替わっていたこと。
そして…本物の伯父のことも。



 伯父とは理佐子のことで諍いになり、逆上してナイフを振り回す伯父を交わしたところ、机の角に頭をぶつけて絶命したとのことだった。



 『君の本当の伯父さんが今どこにいるかは、賢明な君ならすぐにわかるだろう。
 君の大切な伯父さんを私は奪ってしまった。
 本当に済まなかった。
この手紙を警察に持って行きなさい。』



 (伯父様……)



 理佐子は、手紙をポケットに仕舞い、立ち上がる。
 窓越しに、ふと目に映った裏庭の様子に理佐子の目は大きく見開かれた。



 *



 「……綺麗。」

 裏庭には、目が痛くなる程鮮やかな赤い曼殊沙華の花が咲き乱れていた。
 理佐子は、花の傍にしゃがみこんだ。



 理佐子の脳裏に、子供の頃の古い記憶が呼び出されていた。



 『綺麗なお花…』

 『綺麗だね…これは曼殊沙華って言ってね。亡くなった人を守ってくれるお花なんだよ。』

その時の伯父の優しい笑顔に、理佐子はそっと涙した。



 (伯父様、ありがとう…)



 理佐子はポケットの手紙を取り出し、それを細かく千切った。
 手紙のくずは、爽やかな風に吹かれてどこか遠くに飛んで行った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

愛のバランス

凛子
恋愛
愛情は注ぎっぱなしだと無くなっちゃうんだよ。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...