忘れえぬ人

神在琉葵(かみありるき)

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私は身辺の整理を急いだ。
 幸い、私にはそれなりの資産があった。
だが、これから先のことを考えれば、金は持っているに越したことはない。
 私は、人間の世界に持っていた家屋敷を手放した。
 彼女の寿命が尽きるまで、ある程度のぜいたくをしても暮らせるだけの金や宝石を用意すると、私は、こっそりと彼女のメイドに連絡を取った。



 「レオナール様…
実は、セシリア様は、最近、お加減が悪くて…」

「なんだと?」



メイドから聞いた話によると、ここ最近、セシリアの体調が悪く、一人で外へ出るのもままならないというのだ。




「セシリア様からこれをお預かりしています。」

メイドが差し出した封筒には、弱々しい文字で書かれた短い手紙が入っていた。
それを見ただけでも、彼女の具合が良くないことはすぐに感じられた。




ほんの数か月…
私がいろいろな準備に追われていた間に、これほどまでに弱っているなんて、信じられない想いだった。



彼女の手紙には、体調が思わしくないことと、私を愛しているということだけが認めてあった。



「彼女の具合は相当に良くないのか?」

メイドは目を伏せたまま、小さく頷いた。




「よし、わかった。
これから彼女の元へ行くぞ!」

「えっ!?」

「私なら彼女を救える!」




そう、悪魔の私なら人間の病気を治すことなど簡単なことだ。
 私の血を飲ませてやれば、それだけでそんなものはたちどころに治ってしまう。
ただ…彼女はその時点で人間ではなくなり、悪魔と変化してしまうのだが、そうなれば無限に近い命をも得ることが出来る。
しかも、人間のように早くに老いることもない。
 長い時を若いままの状態で、無限に生きることが出来るのだ。
それは私にとっては最高にありがたい状況だ。
そうなれば、人間の世界で形見の狭い想いをしながら生きていくこともないし、セシリアとはずっと長い時を一緒にいられるのだから。

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