忘れえぬ人

神在琉葵(かみありるき)

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とうの昔にセシリアの両親は死に絶え、私の宿る鏡は人から人へと売り渡された。
どこに移ろうが特に大きな変化はなかった。
 映る景色により、鏡の部屋の様子がわずかに変わるだけ…
ただ、それだけのこと…



そんなある日、私の鏡は生意気な小僧に買われ、その者の屋敷に行くこととなった。
 美しいが、どこかひねくれた印象のする華奢な青年だった。




その者は、私の鏡のことがよほど気に入ったらしく、毎日のように鏡を見に来た。
ところが、何を思ったのか、その者はある時、天使像を鏡にぶつけたのだ。
 法外な値で取引されたその鏡を、壊そうとしたのだ。



「危ないじゃないか。」

「……えっ!?」



 天使像は鏡をすりぬけ、私の部屋へ転がった。
 私はその光景に息を飲んだ。
だが、それだけではなかった。
 思わず私が発した声に、小僧が反応したように思えたのだ。



「誰か……いるの?」




それは私の思い込みなどではなく、小僧には本当に私の声が聞こえていたのだ。




「おまえには、私の声が聞こえるのか!?」

高鳴る胸を押さえながら、私は今一度確認した。




「はっきりと聞こえる。」

その言葉に、小僧はそう答えたのだ。
しかも、小僧は私の方を一心にみつめていた。
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