怖くないホラーSS集

神在琉葵(かみありるき)

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ジロっていうのは、数か月前に死んだうちの飼い犬だ。
 元気だったジロの具合が悪くなったのは今年の初め…
風邪でもひいたのかと思ってたら、ジロは重い病に冒されていて、発見された時にはもう手の施しようがなかった。



 「あーちゃんはすごいね。なんでもわかっちゃうんだ。」

 「やっぱり…ジロ。ジロだったんだね。」



 人の姿をしてるのに、抱き締めたその体からはふかふかの毛並みが感じられた。
 懐かしいジロのにおいに涙が溢れる。



 「あーちゃん、そんなに泣いちゃだめだよ。
 僕はすごく幸せだったんだから。」

 「だって、あんた…たった四年しか生きられなくて…それに病気だったから苦しかったでしょう?」

 「そんなことないよ。僕は皆に可愛がってもらえてとっても幸せだったよ。」

ジロの健気な言葉に涙が止まらない。



 「でも…ジロ…」

 「僕、本当にものすごく幸せだったんだ。皆のことも大好きだよ。」

ジロはそう言って私からちょっと離れた。



その時…



「明日香~!」

 冬子が手を振ってるのが見えた。
 私が冬子に手を振り返した瞬間…ジロの姿は唐突に消えていた。



 「ジロ…ジロ!どこなの?」



 「僕は、いつでもあーちゃんの傍にいるよ。」

 小さな声が風に流れる…



「ジロ…いやだよ。行かないで!
ジロ…ジロ―――!」



だけど…どんなに呼んでもジロは戻って来なかった。



 *



 「ねぇ…一体、何があったの?」

 冬子には心配をかけてしまったけど…でも、やっぱりジロのことは話さなかった。
 話してもきっと信じてもらえないと思ったから。



なんでもあの山はとても迷いやすい山らしく、一人で入るのは危険な山だそうだ。



 「とにかく、奥まで行かなくて本当に良かったよ。」

 「うん…そうだね…」



ジロがいなかったら、私は大変なことになってたかもしれない。



 (ありがとう、ジロ…)



 泣いたらジロに怒られるから…こぼれそうな涙をじっとこらえた。



 (大好きだよ…ジロ…)



 ~fin.
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