怖くないホラーSS集

神在琉葵(かみありるき)

文字の大きさ
17 / 35
新米守護霊

しおりを挟む
「ふわぁ~…」



 幸彦の力の抜けた大あくびに、こっちのやる気もそがれてしまう。
 今日は、わしの初仕事の日だというのに…



幸彦は、実家暮らしなのを良いことに、週五日、アルバイトをしている。
もう30歳だというのに、全く仕方のない奴だ。
もしかしたら、先輩が、こいつを甘やかしたのかもしれない。



わしは厳しくやるぞ!
 厳しくやって、こやつをもっと素晴らしい人間に引き立ててやる…!



そんな闘志がわきあがったその刹那…
幸彦が、地下鉄の階段を踏み外した。



 『あ、あぶないっ!』



わしは、必死に幸彦の態勢を立て直した。
そのおかげで、幸彦は三段落ちただけで済んだ。



 「いってぇ…」



 幸彦は、顔を歪めて足をさする。
どうやら、捻挫をしたようだ。



 幸彦はゆっくりと立ち上がり、近くのベンチに座ると、ポケットからスマホを取り出した。



 「あ、店長ですか。
 三浦です。
 今、俺、階段から落ちて足をくじきましてね。
 今日からしばらく休ませていただきます。」

 「そんなこと急に言われても困るよ!
なんとか出て来られないのか!」

 「無茶言わないで下さいよ。
もしかしたら、骨が折れてるかもしれないのに…」

 「だが、こっちにも都合ってもんが…」

 「じゃあ、俺、バイトやめますから。
お世話になりました。」



そう言うと、幸彦は電話を切った。
なんという短絡的な性格か…
わしは呆れてしまった。



 「あ~、いて…
本当に俺ってツイてないな…」

そんな愚痴をこぼす幸彦に、わしは苛々するのを必死で堪えた。
 馬鹿者めが!
わしが支えてやらなければ、もっと高い所から落ちて、それこそ骨を折るか、大けがをしていたはずなのに、それを感謝するどころか、ツイてないとはどういうことか。
そもそも、あんなにぼさーっとして歩いてるから、階段を踏み外すんだ。



 「とりあえず、病院行くか…」

 幸彦は、片足を引きずりながら、歩き始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...