タイムトリップはいかがですか?

神在琉葵(かみありるき)

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タイムトリップ

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***



「岩崎様…岩崎様……」

誰かに名を呼ばれて、俺はゆっくりと目を開いた。



「御気分はいかがですか?」

「……え?」 



俺はあたりを見渡す。 
どこか頭が重いような…すっきりしない感じはするものの、気分が悪いというほどではない。 



(ここはどこだ…?)



少し考えて、俺は思い出した。 
そうだ…俺は、サイエンストリップ社のタイムトリップを申し込んで… 



タイムトリップでの記憶ははっきりと覚えていた。 
俺は、全身が総毛立つような感動を覚えた。



俺は、確かに過去に戻った。
それも、戻りたいと思ってたのとほぼ同じ時代へ。 
そして、そこで同じようでいて違う過去を体験したんだ。 



そう…現実は違った。 
あいつの誕生日が近付くにつれて、俺は得体の知れない不安に襲われた。
プロポーズをもしも断られたら…



そんなことを考えるとたまらなくなって、俺はあいつの誕生日の少し前に、貯めた金をすべて馬鹿騒ぎに使った。 
友達と浴びるほど酒を飲んだのだ。 



酔いが覚めると、どうしようもない気持ちになった。
俺は自分の馬鹿さ加減に嫌気がさして、すべてを捨てて夜汽車に飛び乗った。 
行き先なんてどこでも良かった。
ポケットにあった金で出来るだけ遠くまで逃げて…



知り合った女に食わせてもらったり、路上生活をしたり… 
何度か死にそうな目にもあいながら、いつもどうにか生き抜いて、俺はくだらない人生を歩み続けた。 
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