その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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天辺を目指して

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「やんぞ、ミドリ。」

朝。
顔を洗い、朝メシを食べ終わった後。
その言葉の合図とともに稽古は始まる。

食べ終わり、焚き火の火を消しているミドリに奇襲の如く回し蹴りを放つ。ミドリは察知するとスッと身体を落とし、身体を落とした勢いのまま、俺の地に付けている足を払おうとした。

足を払われる前にブレイクダンスの要領で避ける。
身体を素早く起こし、拳を構えるとミドリは既に防御の体制に入っていた。それを見て、思わずニンマリと笑みが溢れる。


「ホント、成長早ぇーなオマエは。」

ただ勇者風の冒険者達の前になす術もなかった筈のミドリはこの一ヶ月でかなり喧嘩の仕方を覚えてきた。

どうやら要領がかなりいいようで少し教えただけでスポンジのように吸収し、体得していく。何度も実戦も繰り返し、ミドリはこの森の魔物達に何度も勝利している。

「コタの教エ方が上手イから。」

へへへっと鼻を人差し指で撫でながら照れるミドリ。だが、何処までも謙虚で謙遜を忘れない。

拳も子供パンチしか繰り出せなかった一ヶ月前とは違い、重くなった。それはコイツの弛まぬ努力があったからだというのに、褒められて照れつつも驕りはしない。

ー コイツ、スゲェな……。


今まで子分にしてきた舎弟の中には、強くなった途端に偉そうに振る舞い出す奴が何人もいた。

勝つのは気持ちいい。
自身が強くなればなるほど、その快感に溺れ、酒を飲んだように気持ちが大きくなり、自身に酔いしれる。

湧き上がる万能感に強ければ何でも許されると勘違いしちまいそうになる。

あっという間に駆け上がって強くなっていくミドリ。より調子に乗りそうなもんだが、何時だってこっちを立ててくれる。


ー 気合の入り方が違ぇって事か。

構えた拳でパンッと自身の掌を打つ。
ジンジンと痛みで熱くなる掌を握ると高揚感が全身を駆け巡り、思わずにやけちまう。

驕るのは問題だが、やはり強いに越した事はない。

この飲み込みの良さと謙虚な心根を持つコイツならまだまだ強くなるだろう。コイツを強くしてサシでやんのも面白いかもしれない。

そう考えると止めどなく闘争本能が湧き上がり、喧嘩したくてしょうがなくなる。

「今日の稽古は終了だ。カチコミに行くぞ!! 」

闘争本能のままに叫び、学ランを羽織り歩き始めるとミドリも慌てて後ろをついてくる。

最近の俺の野望はこの森の頂点に立つ事。
元より日本に帰りたい理由も県内一の鷹見高の番長、龍ヶ崎を倒して先ずは県制覇。後々は全国制覇したかったのが一番大きい。

だが、今、どうにも出来ないものをうじうじ考えていてもしょうがない。

男ならうじうじしないで突き進むのみ。
己が道は拳で切り拓く。その道を切り拓く一歩がこの森の頂点に立つ事だ。


歩きながら空を見上げると、轟々と強風が吹き荒れ、頭上を奴が通る。

「白龍サマ。」

ミドリがどうせあんな上空からじゃ見えもしねぇのに頭を垂れた。


白龍。
ミドリ曰く、この森の頂点に立ち、千年以上も生きる存在。

白い大きな翼を悠然と広げて、我が物顔で森を騒がせながら俺の上を飛んでいく。そんな奴を見上げて、ニッと笑ってやった。

「絶対、そこから引きずり下ろしてやる。」

亀の甲より年の功。
千年も生きているなら俺が日本に帰る方法くらい思い付く筈。


しかし、奴はこの森の頂点で森を住処にしてる以外は分からない。しかも奴は森に降りると煙のように姿を消してしまう。これじゃあ、喧嘩にもならない。


「今日ハ、リザードマンにカチコミ? 」

白龍が去り、頭をやっと上げたミドリが俺の爪先が向く方向を見て問う。
正解だと拳を向けると嬉しそうに背伸びして、懸命に拳を合わせた。

「お前も派手に暴れろよ。」

「ボク、頑張ル。」

空を飛ぶ相手を引き摺り下ろしたいのであれば、その視界に入らざるおえないようにすれば良い。

要は派手に暴れて、この森の魔物達の頂点に君臨する事で相手に興味を持たせる。奴を脅かすような存在に俺がなれば相手は興味を持たざるおえなくなる。

ー 俺の欲望も満たされるしな。

魔物達は皆、結構強い。
強い相手と喧嘩したいという欲求も、男なら天辺目指したいという野望も、日本に帰る手立てを見つけたいという願いも叶えられるという一石三丁な我ながらなんて素晴らしい計画だ。
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