その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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番外編 トリスタンとトーリ②

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「トリスタン殿下は筋がいい。」

「トリスタン殿下の才能は素晴らしい。」

誰もがそう僕を褒めた。
その中には色々な思惑が渦巻いていたが、それでも《僕》は《ぼく》から見ても凄い子だと思った。

課題はするする解けるし、剣だって上手かった。例え、その日は出来なくても次の日には出来るようにいっぱいいっぱい勉強も剣術も魔法も頑張っていた。
それこそ、幼い小さな手がタコだらけになるくらい。

「しかし、ソレーユ殿下は流石勇者の器。」

「一度教えただけで卒なくやって退けてしまう。」

「元のポテンシャルが違うのですな。」

負けてはいけない弟のソレーユは一発でなんでもこなしてしまうから。
努力し続けないと直ぐに追いつけない所まで行ってしまって負けてしまうから。

だからまるで追い詰められるように努力していた。
その努力のお陰もあってか、ソレーユよりも多くの魔力を扱えるようになり、王太子へと昇り詰めた。

だって《僕》はソレーユに負けてはいけないから。立派な王様にならなければいけないから。だから…。


「母上…。」

今日も受け取ってもらえないだろうと諦めながら、それでも《前の僕》は母上の部屋の前に紅茶色の花を置いた。

花を置いて去ろうとした時、「ピキキッ!!」という必死な叫びが聞こえて、ふと、振り向いた。
すると窓の外で小さな鳥がカラスに襲われていた。

一番得意な植物を操る魔法で木に巻きつく蔦を操って、カラスを追い払い、翼を傷付けられて空から落ちていく小鳥をキャッチした。

手に優しく包むように持った小鳥は小さくて柔らかくて温かかった。でも、治癒魔法だけでは傷は治せても負ったダメージは回復する事は出来ない。

手の中でつぶらな黒い瞳がこちらに向く。それはまるで自身を必要としてくれているように感じた。

「君は必要?」

縋るように求めるように暴れる事なく、すっぽりと預けられた体温がふわりと胸の中に染み入る。初めて王太子トリスタンではなく、が求められたような気がして自然に頰が綻ぶ。


「兄上?」

幸せの最中。
ふと、兄と呼ばれて、顔を上げた。
するとそこには自身の敵が立っていて、にっこりと笑っていた。

今まで一度も二人だけの時に会った事のない弟。
腹違いだが、半分血の繋がった弟。

きっと、何もしがらみがなかったらその笑顔に笑顔で返していたのかもしれない。笑って今、起きた事を話して一緒に談笑出来たのかもしれない。

だけど…。

「僕に話し掛けるな。」

それは『もし』の話。
冷たくあしらい、フンッと態とらしく鼻を鳴らして、弟への興味を心の奥底へと沈めた。
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