その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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噂と変化

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「くそっ。あの汚らわしい獣どもめ!!」

高みの見物でもするように椅子にもたれていた男がダンッと肘置きを叩き、臣下達を睨む。
臣下達は自身達の王に傅き、王の怒りが治まるのを待つ。

王の怒りが治まると将軍からの戦準備の進み具合の報告から始まり、各々の受け持ちの仕事の現状を正確に報告する。

その報告に耳を傾けながら王はあの自身に助力を求めてきた獣の王(リオン前王)の事を思い出していた。

トントントンッと肘置きを指で突きながら頭の中で計画を組み直す。

この王は愚王ではない。
そして賢王でもない。

「あの獣の王に獣人の兵を集められたら助力してやると伝えろ。…進軍を早める。」

自身で考える頭もある。
決断力も申し分ない。だが…。

「我々、人族こそ選ばれし種族。我らこそが我こそがこの世界を治めるに相応しい。」

その王は傲慢だった。
自身こそが選ばれし種族、選ばれし王だと自負し、それを疑った事がない。

「ソレーユ。兵を連れて進軍しろ。」

「はい。陛下。」

選ばれし種族で選ばれし者とその選ばれし者が選んだ選ばれし伴侶。そしてその間に生まれた子であるソレーユも選ばれし者。

何よりソレーユは勇者として選ばれた。
その事も自身が選ばれし王だという事を物語っている。

会議の後半から自身の伴侶だという琥太郎黒い獣を連れ、入ってきた息子が魔王を討ち滅ぼし、自身を世界の王に導くのだと信じている。それが運命であると。

「ノワールおいで。」

「………。」

名を呼ばれて心底嫌そうな顔を浮かべた琥太郎黒い獣の手を引き、肩時も離そうとしない。自身を見るその目の端では必ずその獣の姿を追っている。

それも王は肯定こそが愛情だと肯定する。
しかし、一つ気に食わないのは…。

あの黒い獣の夜空色の瞳。
自身を見るあの瞳には軽蔑の色が浮かんでいる。その目は肯定されなければいけない自身の全てを否定する。

そしてその黒い獣に毒のようにソレーユを侵食していく。


「陛下。」

何時ものように軽く礼をして、出ようとしたソレーユがふと王を呼ぶ。

「陛下は何故、俺に先陣を任せるのですか?」

「それはお前が勇者だからだ。勇者で王太子であるお前が先陣を切れば士気があがるからだ。」

「では何故、先陣隊の多くが兵として徴兵した平民達なのですか?…彼等、まともにまだ剣も振れませんが。」

「先陣隊の兵はお前と既存の兵士達の盾だ。捨て駒に過ぎん。囮でもなんでも好きに使え。」

「父上にとって民は駒ですか?」

「国は王が統べるから成り立つ。我が民を動かしてこそもその与えられた運命を全う出来るのだ。」

ケッと王の言葉に呆れた顔を浮かべる黒い獣を王は睨む。
この黒い獣が来るまでソレーユは何を任されても二つ返事でどうでもよさそうに従った。

それを王は父としてソレーユに信頼されているからだと勘違いしていた。
全てを肯定して愛しているのだからソレーユも疑問を抱かず、自身の全て肯定すべきだと考えていた。


「父上にとっては俺も駒の一つですか?」

「何をいう。お前は我の…。」

「父上に母上を愛してらっしゃる。父上にとって《ソレーユ・アーサー・プロイ》は息子ではなく、母上との《愛の証》ですよね。父上はその《愛の証》の中身には興味がないのでしょう?」

「それは…。」

そうソレーユに問われて、王は口籠った。
ただこうなった原因の黒い獣を憎しみのこもった目で睨むだけだった。

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