130 / 160
噂と変化
しおりを挟む
「くそっ。あの汚らわしい獣どもめ!!」
高みの見物でもするように椅子にもたれていた男がダンッと肘置きを叩き、臣下達を睨む。
臣下達は自身達の王に傅き、王の怒りが治まるのを待つ。
王の怒りが治まると将軍からの戦準備の進み具合の報告から始まり、各々の受け持ちの仕事の現状を正確に報告する。
その報告に耳を傾けながら王はあの自身に助力を求めてきた獣の王(リオン前王)の事を思い出していた。
トントントンッと肘置きを指で突きながら頭の中で計画を組み直す。
この王は愚王ではない。
そして賢王でもない。
「あの獣の王に獣人の兵を集められたら助力してやると伝えろ。…進軍を早める。」
自身で考える頭もある。
決断力も申し分ない。だが…。
「我々、人族こそ選ばれし種族。我らこそが我こそがこの世界を治めるに相応しい。」
その王は傲慢だった。
自身こそが選ばれし種族、選ばれし王だと自負し、それを疑った事がない。
「ソレーユ。兵を連れて進軍しろ。」
「はい。陛下。」
選ばれし種族で選ばれし者とその選ばれし者が選んだ選ばれし伴侶。そしてその間に生まれた子であるソレーユも選ばれし者。
何よりソレーユは勇者として選ばれた。
その事も自身が選ばれし王だという事を物語っている。
会議の後半から自身の伴侶だという琥太郎を連れ、入ってきた息子が魔王を討ち滅ぼし、自身を世界の王に導くのだと信じている。それが運命であると。
「ノワールおいで。」
「………。」
名を呼ばれて心底嫌そうな顔を浮かべた琥太郎の手を引き、肩時も離そうとしない。自身を見るその目の端では必ずその獣の姿を追っている。
それも王は肯定こそが愛情だと肯定する。
しかし、一つ気に食わないのは…。
あの黒い獣の夜空色の瞳。
自身を見るあの瞳には軽蔑の色が浮かんでいる。その目は肯定されなければいけない自身の全てを否定する。
そしてその黒い獣に毒のようにソレーユを侵食していく。
「陛下。」
何時ものように軽く礼をして、出ようとしたソレーユがふと王を呼ぶ。
「陛下は何故、俺に先陣を任せるのですか?」
「それはお前が勇者だからだ。勇者で王太子であるお前が先陣を切れば士気があがるからだ。」
「では何故、先陣隊の多くが兵として徴兵した平民達なのですか?…彼等、まともにまだ剣も振れませんが。」
「先陣隊の兵はお前と既存の兵士達の盾だ。捨て駒に過ぎん。囮でもなんでも好きに使え。」
「父上にとって民は駒ですか?」
「国は王が統べるから成り立つ。我が民を動かしてこそ民もその与えられた運命を全う出来るのだ。」
ケッと王の言葉に呆れた顔を浮かべる黒い獣を王は睨む。
この黒い獣が来るまでソレーユは何を任されても二つ返事でどうでもよさそうに従った。
それを王は父としてソレーユに信頼されているからだと勘違いしていた。
全てを肯定して愛しているのだからソレーユも疑問を抱かず、自身の全て肯定すべきだと考えていた。
「父上にとっては俺も駒の一つですか?」
「何をいう。お前は我の…。」
「父上に母上を愛してらっしゃる。父上にとって《ソレーユ・アーサー・プロイ》は息子ではなく、母上との《愛の証》ですよね。父上はその《愛の証》の中身には興味がないのでしょう?」
「それは…。」
そうソレーユに問われて、王は口籠った。
ただこうなった原因の黒い獣を憎しみのこもった目で睨むだけだった。
高みの見物でもするように椅子にもたれていた男がダンッと肘置きを叩き、臣下達を睨む。
臣下達は自身達の王に傅き、王の怒りが治まるのを待つ。
王の怒りが治まると将軍からの戦準備の進み具合の報告から始まり、各々の受け持ちの仕事の現状を正確に報告する。
その報告に耳を傾けながら王はあの自身に助力を求めてきた獣の王(リオン前王)の事を思い出していた。
トントントンッと肘置きを指で突きながら頭の中で計画を組み直す。
この王は愚王ではない。
そして賢王でもない。
「あの獣の王に獣人の兵を集められたら助力してやると伝えろ。…進軍を早める。」
自身で考える頭もある。
決断力も申し分ない。だが…。
「我々、人族こそ選ばれし種族。我らこそが我こそがこの世界を治めるに相応しい。」
その王は傲慢だった。
自身こそが選ばれし種族、選ばれし王だと自負し、それを疑った事がない。
「ソレーユ。兵を連れて進軍しろ。」
「はい。陛下。」
選ばれし種族で選ばれし者とその選ばれし者が選んだ選ばれし伴侶。そしてその間に生まれた子であるソレーユも選ばれし者。
何よりソレーユは勇者として選ばれた。
その事も自身が選ばれし王だという事を物語っている。
会議の後半から自身の伴侶だという琥太郎を連れ、入ってきた息子が魔王を討ち滅ぼし、自身を世界の王に導くのだと信じている。それが運命であると。
「ノワールおいで。」
「………。」
名を呼ばれて心底嫌そうな顔を浮かべた琥太郎の手を引き、肩時も離そうとしない。自身を見るその目の端では必ずその獣の姿を追っている。
それも王は肯定こそが愛情だと肯定する。
しかし、一つ気に食わないのは…。
あの黒い獣の夜空色の瞳。
自身を見るあの瞳には軽蔑の色が浮かんでいる。その目は肯定されなければいけない自身の全てを否定する。
そしてその黒い獣に毒のようにソレーユを侵食していく。
「陛下。」
何時ものように軽く礼をして、出ようとしたソレーユがふと王を呼ぶ。
「陛下は何故、俺に先陣を任せるのですか?」
「それはお前が勇者だからだ。勇者で王太子であるお前が先陣を切れば士気があがるからだ。」
「では何故、先陣隊の多くが兵として徴兵した平民達なのですか?…彼等、まともにまだ剣も振れませんが。」
「先陣隊の兵はお前と既存の兵士達の盾だ。捨て駒に過ぎん。囮でもなんでも好きに使え。」
「父上にとって民は駒ですか?」
「国は王が統べるから成り立つ。我が民を動かしてこそ民もその与えられた運命を全う出来るのだ。」
ケッと王の言葉に呆れた顔を浮かべる黒い獣を王は睨む。
この黒い獣が来るまでソレーユは何を任されても二つ返事でどうでもよさそうに従った。
それを王は父としてソレーユに信頼されているからだと勘違いしていた。
全てを肯定して愛しているのだからソレーユも疑問を抱かず、自身の全て肯定すべきだと考えていた。
「父上にとっては俺も駒の一つですか?」
「何をいう。お前は我の…。」
「父上に母上を愛してらっしゃる。父上にとって《ソレーユ・アーサー・プロイ》は息子ではなく、母上との《愛の証》ですよね。父上はその《愛の証》の中身には興味がないのでしょう?」
「それは…。」
そうソレーユに問われて、王は口籠った。
ただこうなった原因の黒い獣を憎しみのこもった目で睨むだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
魔王の求める白い冬
猫宮乾
BL
僕は交通事故に遭い、別の世界に魔王として転生した。最強の力を貰って。だから何度勇者が訪れても、僕は死なない。その内に、魔王はやはり勇者に倒されるべきだと思うようになる。初めはそうではなかった、僕は現代知識で内政をし、魔族の国を治めていた。けれど皆、今は亡い。早く僕は倒されたい。そう考えていたある日、今回もまた勇者パーティがやってきたのだが、聖剣を抜いたその青年は、同胞に騙されていた。※異世界ファンタジーBLです。全85話、完結まで書いてあるものを、確認しながら投稿します。勇者×魔王です。
婚約破棄されて森に捨てられたら、フェンリルの長に一目惚れされたよ
ミクリ21 (新)
BL
婚約破棄されて森に捨てられてしまったバジル・ハラルド。
バジルはフェンリルの長ルディガー・シュヴァに一目惚れされて、フェンリルの村で暮らすことになった。
かわいそうな看守は囚人を犯さなければならない。
紫藤なゆ
BL
好色な王は忠実な臣下エメラードに命じる。敗戦者スクを上手に犯して見せるように。
苦悩する騎士エメラードと、命があればそれでいいスクは、看守と囚人として毎日を過ごす。
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
亡国の王弟は女好きの騎士に溺愛される
コムギ
BL
アラバンド国の王弟ルカーシュは、騎士のシモンによって地下牢から救い出された。
その時、肌に触れたシモンに、やけどのような怪我を負わせてしまう。
ルカーシュは北の魔女の末裔であり、魔力を持っていた。
魔力を持たない者に触れると、怪我をさせてしまうという。
騎士団長からの命令で、シモンはルカーシュの護衛につくことになった。
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる