その召喚獣、ツッパリにつき

命の重さ①

赫い刃が月明かりを受け怪しく光る。
その瞬間、あの寄生虫がニヤリッと笑う姿が脳裏に過った。

《離れろ》という命令を無視して庇うように抱きつくと、背中に焼けるような痛みが走り、意識が飛びかけた。

「うっ、グッ…。」

「コタッ！！」

今にも泣きそうなコイツの顔と茫然と立ち尽くすソレーユの姿が目の端に映る。

あの甘い魔力を練り、背に白い光を当てるが、光はすぐに分散してしまい、舌打ちが聞こえた。

「コタッ！？…くそっ。魔王避けの結界の所為で魔力が上手く練れないッ。…何故。何故自身の召喚獣を最も簡単に傷付けられる！？ふざけるな。ふざけるなッ！！！」

「なん…で…。俺、俺は…ただ。」

ー・ー　主人ッ。さぁ、トドメをッ。　ー・ー

「俺は…奪われたくなくて…。」

ー・ー　アレは貴方にとって、貴方を惑わす害獣です。早くッ。　ー・ー

「お前さえ。お前さえ。居なければ、コタは！！」

痛みでクラクラする中、無茶苦茶揉めてる声が聞こえる。
なんなら怪我した俺を放っておいて喧嘩し始めている。

痛みとその煩さに苛つき、取り敢えず、目の前の奴の腹に一発入れた。

「ゔっ…。こ、コタ！？」

「うるっ…さい。揉めてる暇があったら止血しろやッ！！…ぅ、いだだだ…。それとも止血のやり方すらテメェら全員知らねぇとか言わねぇよな？ふざけんなッ！！…ゔっ、ツ～～ッ！？」

痛い。正直、すぐさま意識を手放してしまいたいくらい痛い。
しかし、この刃傷沙汰で錯乱している阿呆達にこの場を任して気絶出来るかといったら否だ。任してたまるかっ！！任したら本気で死ぬッ。

「傷を清潔な布で抑えんだよッ。ぃ…。寝室なんだからシーツあんだろがッ！？」

「は…、はいっ。」

「阿呆。お前じゃなくてソレーユがやれっ。テメェがやらかしたのに突っ立ってんじゃねぇよ！！…ッ～～ゔっ！？」

名前の思い出せないコイツが裂いたシーツを分取って、鬼の形相でソレーユに渡す。ソレーユは一瞬呆気に取られたが、痛みを気合で我慢してもう一度睨むと慌ててシーツを巻いた。

「阿呆っ。キツく縛んなきゃ止血になんないだろうが。」

「キツく縛ったら余計血が噴き出すんじゃ…。」

「噴き出させない為にキツく縛んだよッ。お前は剣を扱うのに止血のやり方すら知らねぇのかよっ！？…っ。い"ぃ～ッ！！？」

「斬ったら…、斬ったら終わりだったから…。」

何度も戸惑いながらソレーユはシーツで止血をした。白かったシーツは赤く染まり、止血したソレーユの手も赤く染まっていた。
ソレーユはその赤い手を見て、固まっていた。