第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ

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婚約破棄は突然に

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「婚約破棄させて頂きます!!」

シンっと静まった卒業パーティーの会場に九人の令嬢の声が響いた。

それは九人が一斉に言ったにも関わらず、一切のズレもなく、まとまった声達。どれだけ、この九人が前もって計画し、実行したかが一発で分かる一言だった。


しかしそれはあまりにも意外な展開で、ずっと十分前から事の成り行きを静観していたパーティ参加者達は開いた口が塞がらない。

そんな会場の様子にタラタラと嫌な汗を掻きながら、俺は呆然と立ち尽くす九人の兄王子達に頭が痛くなる思いだった。


この騒ぎの引き金を先に引いたのは俺の兄王子達。

兄王子達はこの学園で九人揃って同じ一人の男爵令嬢に恋をした。その男爵令嬢と結ばれたいが為に自身達の婚約者が邪魔になり、婚約破棄を目論んだ次第だった。

意気揚々と卒業パーティで、婚約者の令嬢達の悪事イジメ(ただ人の婚約者に手を出す男爵令嬢に釘を刺しただけ)を断罪してようとした。

兄王子達的には悪は罰され、ヒーローとヒロインが結ばれてハッピーエンド…というシナリオだったのだろう。

しかし婚約者の令嬢の方が兄王子達より一枚上手だった。


突如、兄王子達が婚約者の令嬢達を会場の中央に呼び出した時、兄王子達は勝利を確信してニマニマともう既に笑っていた。

何事かと一瞬騒めく会場の中。
愛しの男爵令嬢を守るように固めて。

さぁ、断罪の始まりだと兄王子達が口を開こうとした瞬間それは起きたのだった。  


「な、何故だ。オフィーリア。」

やっと兄王子の1人が衝撃冷めやまぬ震える声で言葉を絞り出した。

「何故か…ですって? ノイン殿下。」

オフィーリアこと、第九王子の婚約者はそんな第九王子を鼻で笑った。

「貴方様がわたくしという婚約者がいるにも関わらず、そこのビッチと浮気し腐りやがったからに決まってるでしょうッ!! 」

話している間に怒りが爆発したのかオフィーリアの口調が令嬢らしからぬものへと変わり、今にも第九王子に向かって飛び掛かりそうだったのを周囲の令嬢が諫めた。

そこからは淡々と九人の令嬢達による断罪が始まり、調べに調べ尽くされた不貞の証拠を羅列していった。

そしてその結果……。

「お前達を国外追放に処す。」

国王陛下である我らが父は王族の品位を貶めた兄王子達を処す他なかった。


絶望の表情を浮かべてへたり込む兄王子達。

九人もの王子を同時に誑かした男爵令嬢は修道院行きで、「私はヒロインなのよッ。」と訳の分からない事を叫び暴れていた。

騎士達に取り押さえられて連行されるまで「後もう少しで逆ハーエンドだったのに。」とか訳の分からない事を最後まで叫んでいたのが地味に怖かった。


これからこの国どうなるだろう? 

元婚約者達に冷たい視線を向けられ、周囲から非難の目を向けられて、泣きながら国外追放されていく兄王子達を見て切に思った。

そう…、他人事だったのだ。
この時までは……。
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