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それは徹夜明けのテンションで
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何故この世に女性は沢山いるのだろうか。
来る日も来る日も宰相直々に持ってくる部屋が埋まりそうな程のお見合いの姿絵。
ぱらりとめくると胃から中身がせり上がり、お見合いの姿絵を慌てて閉めた。
「何故こうなった…。」
俺は今まで出来損ないで王座から最も遠いと評判の第十王子としてなりを潜めていた。
それが突如、第一王子から第九王子までが自爆して失墜。急に舞降ってきた王座にただただ振り回されていた。
そもそも俺は王子の中でも後ろ盾がとっても弱い王子。
母は人口たった九千人の小国の姫。
たまたまバカンスに母の国に来た国王陛下が一目惚れして、口説いて連れてきた十番目の妃。
そんな母にこの国で後ろ盾になってくれる繋がりはなく、唯一あるのは自国の後ろ盾だが、実際ないに等しい。
南国気質で、争いよりもわいわいみんなで酒飲んで騒ぐ事が好き。音楽が流れると踊り出すような緩い国民性で、政権争いなんてあの国は経験した事がない。
だから、助けを求めようものなら「一緒に酒飲んで踊れば大丈夫。仲良くなれるさ。」と言いのけるだろう。
…ね?ないに等しいでしょ。
それで今まで母と俺が王宮で生き残って来れた事自体がそもそも奇跡だ。
それを一応情報として知っている宰相的にはさっさと有力な貴族の令嬢などと結婚して地盤を固めさせたいのだろう。だが……。
「うぅ…。もう女性はいい。顔も見たくない。」
俺は宰相が持ってくる大量のお見合いの姿絵を毎日来る日も来る日も大量に見せられるうちに女性恐怖症を発症していた。
最近では侍女が仕事で俺に近付くたびにビクつく。
何故、候補を絞らずそのまま持ってくるのか?
嫌がらせか? 嫌がらせなのか!?
「はぁ…。今すぐ王太子辞めたい。……いや、王族を辞めたい。」
執務机の上に大量に置かれたお見合いの姿絵を崩すように突っ伏し、溜息をついた。
俺も兄王子達のように国外追放でもされようかな。なんか兄王子達みたいに……。
しかしそもそも俺、婚約者がいないからお見合いの姿絵を毎日毎日拒絶反応起こすまで見せられてんだよなぁ……。
あははと苦笑いを浮かべながら疲れた頭で国外追放までは行かなくても失脚する方法を考えていると、ふと頼んでもいないのに目の前にお茶とお菓子が出てきた。
顔を上げると兄王子が失墜する前に俺付きの侍従として入った青年が少しソワソワしながら立っていた。
「……これは?」
「ツェーン殿下がお疲れの様子でしたので。お菓子さ、お出しして、お疲れさ、とってもらおうと思いまして。」
「そう。でもごめん。俺、甘いの苦手で。」
「だ、大丈夫です。それは、おかきと言って、甘くないお菓子でして。」
「へぇ。甘くないの…。」
勧められてボリッと食べると確かにそのお菓子は甘くなく、しょっぱくて香ばしい。
俺が食べている間もその侍従は席を外す事なく、食べる姿をソワソワと、とっても、褒めて欲しそうにこっちを見ている。
「…美味しい…よ?」
「!! ほんとですか!? 私がこさえた、おかきさ、美味しいですか!!! 」
「こさえた!? 」
「私さ、故郷のお菓子です。お米さ、豊作の時によく皆んなで作ってましたので私の得意料理です。……お口さ、あって良かったです。私さ、故郷はですね……。」
田舎の訛りの抜けない口調で、嬉しそうに自身の故郷の事を話し始める侍従。
この侍従は平民出で、かなり王都から離れた田舎の方から上京してきたばかり。
元第六王子から「お前の侍従なんて田舎者の平民で充分。」と今まで世話してくれた侍従達を分捕られ、押し付けられたのだが……。
今までの侍従より働き者でひたむきで結構、この侍従を俺は気に入っている。…まぁ、まだまだ侍従としては教育が必要だけど。
「料理かぁ…。はぁ…、どうせなら気位の高い貴族令嬢じゃなくて、手料理作って待っててくれる家庭的なお嫁さんがいい。……田舎…かぁ。田舎でのんびりライフとかいいよね。」
だけどそれも無理だよなと思わず、苦い笑みを溢す。
だって、今の俺、女性が怖いんだもん。
例え、万が一に田舎でのんびりライフを送れたとしても女性に声を掛ける前に逃げるかもしれない。
これで妃もらうってどうなんだろう。
俺にとっても妃にとっても地獄かもしれない。
「いっそ。男と結婚するか。」
「は、はい!? 」
完全に考える事も嫌になった俺はそう侍従が居るのも忘れて独り言を漏らした。そして俺の疲れた頭はその投げやりな気持ちで出た独り言を反復し、一つの妙案を打ち出した。
「そうだ。簡単な事じゃないか!! 男と結婚すれば良いんだ。」
「は、はぇ!!? ツェーン殿下!!!? 」
女がダメなら男でいいじゃないか。
後継の産めない男が好きっていう事にすれば、皆んなこの王太子じゃ、王に適さないと判断して俺を王太子から降ろしてくれるかもしれない。…いや、きっと降ろす!!
この時の俺はそう妙な自信があった。
きっとこの時の俺は完全に疲れ果てて、変なテンションになってたんだと思う。徹夜明けのような変なテンションに。
「俺と結婚してくれる? 」
そう目の前の侍従にトチ狂った事を言うくらいには。
来る日も来る日も宰相直々に持ってくる部屋が埋まりそうな程のお見合いの姿絵。
ぱらりとめくると胃から中身がせり上がり、お見合いの姿絵を慌てて閉めた。
「何故こうなった…。」
俺は今まで出来損ないで王座から最も遠いと評判の第十王子としてなりを潜めていた。
それが突如、第一王子から第九王子までが自爆して失墜。急に舞降ってきた王座にただただ振り回されていた。
そもそも俺は王子の中でも後ろ盾がとっても弱い王子。
母は人口たった九千人の小国の姫。
たまたまバカンスに母の国に来た国王陛下が一目惚れして、口説いて連れてきた十番目の妃。
そんな母にこの国で後ろ盾になってくれる繋がりはなく、唯一あるのは自国の後ろ盾だが、実際ないに等しい。
南国気質で、争いよりもわいわいみんなで酒飲んで騒ぐ事が好き。音楽が流れると踊り出すような緩い国民性で、政権争いなんてあの国は経験した事がない。
だから、助けを求めようものなら「一緒に酒飲んで踊れば大丈夫。仲良くなれるさ。」と言いのけるだろう。
…ね?ないに等しいでしょ。
それで今まで母と俺が王宮で生き残って来れた事自体がそもそも奇跡だ。
それを一応情報として知っている宰相的にはさっさと有力な貴族の令嬢などと結婚して地盤を固めさせたいのだろう。だが……。
「うぅ…。もう女性はいい。顔も見たくない。」
俺は宰相が持ってくる大量のお見合いの姿絵を毎日来る日も来る日も大量に見せられるうちに女性恐怖症を発症していた。
最近では侍女が仕事で俺に近付くたびにビクつく。
何故、候補を絞らずそのまま持ってくるのか?
嫌がらせか? 嫌がらせなのか!?
「はぁ…。今すぐ王太子辞めたい。……いや、王族を辞めたい。」
執務机の上に大量に置かれたお見合いの姿絵を崩すように突っ伏し、溜息をついた。
俺も兄王子達のように国外追放でもされようかな。なんか兄王子達みたいに……。
しかしそもそも俺、婚約者がいないからお見合いの姿絵を毎日毎日拒絶反応起こすまで見せられてんだよなぁ……。
あははと苦笑いを浮かべながら疲れた頭で国外追放までは行かなくても失脚する方法を考えていると、ふと頼んでもいないのに目の前にお茶とお菓子が出てきた。
顔を上げると兄王子が失墜する前に俺付きの侍従として入った青年が少しソワソワしながら立っていた。
「……これは?」
「ツェーン殿下がお疲れの様子でしたので。お菓子さ、お出しして、お疲れさ、とってもらおうと思いまして。」
「そう。でもごめん。俺、甘いの苦手で。」
「だ、大丈夫です。それは、おかきと言って、甘くないお菓子でして。」
「へぇ。甘くないの…。」
勧められてボリッと食べると確かにそのお菓子は甘くなく、しょっぱくて香ばしい。
俺が食べている間もその侍従は席を外す事なく、食べる姿をソワソワと、とっても、褒めて欲しそうにこっちを見ている。
「…美味しい…よ?」
「!! ほんとですか!? 私がこさえた、おかきさ、美味しいですか!!! 」
「こさえた!? 」
「私さ、故郷のお菓子です。お米さ、豊作の時によく皆んなで作ってましたので私の得意料理です。……お口さ、あって良かったです。私さ、故郷はですね……。」
田舎の訛りの抜けない口調で、嬉しそうに自身の故郷の事を話し始める侍従。
この侍従は平民出で、かなり王都から離れた田舎の方から上京してきたばかり。
元第六王子から「お前の侍従なんて田舎者の平民で充分。」と今まで世話してくれた侍従達を分捕られ、押し付けられたのだが……。
今までの侍従より働き者でひたむきで結構、この侍従を俺は気に入っている。…まぁ、まだまだ侍従としては教育が必要だけど。
「料理かぁ…。はぁ…、どうせなら気位の高い貴族令嬢じゃなくて、手料理作って待っててくれる家庭的なお嫁さんがいい。……田舎…かぁ。田舎でのんびりライフとかいいよね。」
だけどそれも無理だよなと思わず、苦い笑みを溢す。
だって、今の俺、女性が怖いんだもん。
例え、万が一に田舎でのんびりライフを送れたとしても女性に声を掛ける前に逃げるかもしれない。
これで妃もらうってどうなんだろう。
俺にとっても妃にとっても地獄かもしれない。
「いっそ。男と結婚するか。」
「は、はい!? 」
完全に考える事も嫌になった俺はそう侍従が居るのも忘れて独り言を漏らした。そして俺の疲れた頭はその投げやりな気持ちで出た独り言を反復し、一つの妙案を打ち出した。
「そうだ。簡単な事じゃないか!! 男と結婚すれば良いんだ。」
「は、はぇ!!? ツェーン殿下!!!? 」
女がダメなら男でいいじゃないか。
後継の産めない男が好きっていう事にすれば、皆んなこの王太子じゃ、王に適さないと判断して俺を王太子から降ろしてくれるかもしれない。…いや、きっと降ろす!!
この時の俺はそう妙な自信があった。
きっとこの時の俺は完全に疲れ果てて、変なテンションになってたんだと思う。徹夜明けのような変なテンションに。
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