第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ

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すれ違う解釈

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「わ、わ、わ、わ、私ですか!? 」

顔を真っ赤に茹で蛸のように侍従がして、バッと目を逸らした。
しかし、その時の俺はとても疲れていて侍従の顔なんて見ちゃいない。

疲れた頭はさっさとこの状況から逃げたい一心で、とにかく、この侍従に協力を取り付けなければいけないとそればかりに思考を巡らせていた。

「フリでいい。…分かってる。突然、男にこんな事言われても困るよな。フリでいいんだ。何があっても俺が守るから協力して欲しい。」

必死に俺は俺が本当は王になりたくない事、好きにもなれない相手(女性恐怖症の所為で)と結婚なんかしたくない思いの丈を語った。そして、協力してくれれば例え王宮を追われても母の故郷で高待遇で雇うと誓って、懇願した。

…とっても一方的でとんでもない事を言っている自覚はあった。

けど、正直頭も心も限界だったんだ。
だって俺、元々、王座なんて毛先程も興味がなく、寧ろ、あんなのにはなりたくないと思ってた。

自分の父親が嫌いだったから父親イコール国王陛下だったのもんで王にいいイメージがなかったから余計。

懇願する俺が憐れに思ったのだろう。
スンッと鼻を鳴らし、涙目で侍従が力強く頷いた。

「ツェーン殿下っ。私さ、良かったらいくらでも……。私、とっても嬉しいです。だから、そんな悲しい事さ、言わんでください。」

「…そ、そうか。」

なんていい奴なんだと思った。
しかし、王太子に結婚するフリして欲しいという無茶振りに対して「嬉しい。」って言うのもなんかおかしい気がする。そう違和感を少し抱いたが、本当に俺の頭はこの時疲れてて使い物にならない状態だった。

「よし、ティモ。思い立ったが吉日だ。国王陛下の所にこのまま乗り込む。」

「は、はい。認められるよう頑張ります。」

「? …覚悟は充分って事だな。」

「はいっ。末長く宜しくお願いします。」

「末長く?? …ああ、うん。これからも長い付き合いだからね。こちらこそ、宜しく。」

何だか会話が噛み合っていないような気がした。

だが、大切な事だからもう一度言うが俺は疲れてた。トチ狂ってた。アポなしで国王陛下に直談判に行く程には。
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