第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ

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おやすみだろうが

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カブ一号に見惚れているとゴホンッと咳払いが聞こえ、レナードが少し戸惑いつつも仕切り直そうとしていた。

「……取り敢えず、この件については第一妃を通して陛下に抗議を入れておきます。」

このプレゼントの嫌がらせが止まるのかとレナードに感謝を通り越して、尊敬の念を抱くと、「確かに溝は深い…。」と、レナードは瞳を潤ませた。


「……プレゼントの一件は後にして、そろそろ朝食をお出ししてもいいですか。」

妄想トリオがそう声を掛けると朝食を運んでくる。

後も何もプレゼントの件はもう解決だろと思いつつ、何気なく妄想トリオに混じって侍従の仕事をしようとしているティモを取っ捕まえて席に座らす。

「…侍従の仕事はお休みの約束だろ? 」

「で、でも、三人とも私より侍従として先輩さ、学べる事がいっぱい……。」

「お・や・す・みッ。そんな足びっこ引いてて何言ってんの!? …油断も隙もないな。レナード。ティモは昨日無茶してなかった? 」

「…一応はまだ、努力の範囲です。」

「一応……。」

「そ、そんな事さ、ない!! きちんと努力さ、範囲ですッ!!! 」

本当に努力の範囲だか怪しいなとティモをじとっと見るとティモはまだ妄想トリオを手伝いたそうにソワソワしてる。

ー ほんと、しょうがないなぁ。

淹れてもらったコーヒーを飲みながら、ちょっと行儀が悪いが頬杖をついた。

「ティモは昨日何を学んだの? 何か面白いなと思った事はあった? 」

妄想トリオから気を逸らす為に話しかけるとティモの表情がぱあッと明るくなり、ブンブンとない筈の尻尾が振られる。

「剣術や数学、歴史、いっぱい難しい事さ、習って、頭がビックリしてしまったけど。モアナ王国の歴史さ、とっても面白かったです。」

「モアナ? 何で母さんの祖国の歴史を?? モアナはこの国から最南に位置する遠い国だから外交すらやってないけど。」

何で王配になっても関わりそうにない国の歴史を一日目にやるのか? 
理解できずに首を傾げたが、本人がとても嬉しそうだし、何よりもしこの国に居られなくなったら頼りにする国なのでそれ以上は何も突っ込まなかった。

そこからは昨日習ったモアナの歴史の話をずっと楽しそうにティモが話しているのを聞いていた。

終始、ティモの後ろでティモの朝食を用意するレナードが微笑ましいものを見るようにニマニマしてるのが気になったが、それよりも母以外からモアナの話を聞く新鮮さが勝り、自然に頰が緩む。

ティモも聞いてもらえるのがとても嬉しいのか更に自身が得た知識を褒めてと言わんばかりに披露する。

「歴史だけじゃなく、モアナ王国さ、王族の特徴も習ったんです。」

「そうなんだ。どんな特徴? 」

「それは、…その…。」

ティモがちょっと言いどもり、チラチラと俺の顔を見る。
続きをどうぞ、とニッコリ笑い掛けるとブワッと顔を赤くしてソワソワし始める。

「深海みたいに深い青い瞳の中さ、とっても綺麗な銀色の花さ、咲いてて…。」

「うん。」

「《海の花》って呼ばれるモアナ王族特有の虹彩だって聞いて。その…他の王族さ、違って、ツェーンさ、目ん中にお花さ、咲いてるなと思って、…その、…とっても綺麗だなって思ってたから。モアナ王族の瞳だって知れて嬉しかったなって。」

「俺はモアナ王族の因子が強く出てるからね。この国の王族は金髪金碧だけど、俺だけ目、青いし、髪は銀色だからね。」

きっと素朴な疑問だったのだろう。

俺の容姿は母よりもモアナ王族の血が色濃く出ているし、俺以外の兄弟、従兄弟はきちんとこの国の王族の因子が出ているので、俺だけ纏う色が違う。

何でちょっと言う事を躊躇ったのかは分からないけど。


まぁ、俺の所為でやる羽目になってしまった王配教育でも、その中で、楽しみを見つけてくれているのなら一先ず安心だ。…一先ずね。


なんせ、第一妃曰く、血を吐くような努力が必要な王配教育だ。
一日目でもう既にびっこ引かなきゃ歩けない程筋肉痛なのだから、二日目は? 三日目は?

本気で王弟の一人をとっ捕まえて、王座にふん縛らないとまずい…。非常にまずい。


良心が痛み、ソッと朝食のクロワッサンをティモの皿にあげると、ティモは大喜びで美味しそうに食べる。

ごめん、ティモ。
夜は俺の分の主菜もあげるからもう暫く、耐えてくれ。

そう心の中で謝り、ティモに手を合わせると手を差し出したと思ったのかにぎにぎされた。
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