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千夜一夜物語
アラジン①
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むかし、アラジンという若者がいた。
アラジンは気の良い青年で魔法のランプが欲しい悪い魔法使いに騙され、少ししか開かない洞窟の狭い岩扉を細くしなやかな身体で通り、洞窟の中の広い空間へとやって来た。
「スゴイ!! サファイアやルビーが木になってる。」
洞窟の中の広い空間には泉があり、その泉の周りには木があり、その木にはサファイアやルビーなどの宝石がたわわになっていた。
アラジンはその光景に魅せられて宝石の実に手を伸ばそうとしたが、悪い魔法使いに頼まれた事を思い出し、手を引っ込めた。
「そうだ。魔法のランプを探してあげないと。魔法使いさんの子供の病が治らない。」
アラジンは必死に魔法のランプを悪い魔法使いの為に探した。悪い魔法使いには不治の病の子供が居て、その子供を助ける為には魔法のランプが必要だと悪い魔法使いはアラジンに話し、お願いした。しかし、実際は悪い魔法使いの話しは真っ赤な嘘で悪い魔法使いには子供所か妻もいない。
ただ願いを叶える魔法のランプを欲し、この洞窟の前まで辿り着いたが、岩扉が開くのは数十センチのみ。ガタイの良い悪い魔法使いは肩すら入らず、貧乏が祟ってひょろひょろで騙しやすいアラジンを使って魔法のランプを手に入れる算段だ。
「あれ? あそこにある金ピカなのが魔法のランプかな?? 」
ついに魔法のランプを見つけたアラジン。
そのランプは金でできていて、表面には緻密な柄と宝石が嵌め込まれている。
魔法のランプを持って入り口前までやって来たアラジン。アラジンが外にいる悪い魔法使いに声を掛けると悪い魔法使いはやっと手に入る事に歓喜し、本性が漏れ出してしまった。
「早くランプを寄越せ、ノロマ。」
そう声を荒げて岩扉の隙間からアラジンの持つ魔法のランプに手を伸ばしたが、その豹変ぶりに怯えたアラジンは後退り、悪い魔法使いの手は魔法のランプを掴む事なく、空を切った。
「俺に渡さないというのかッ!! 」
「違……。」
「そうか。ならば、後悔するが良い。存分に洞窟の中で俺にした仕打ちを思い出しながら。」
悪い魔法使いは激怒し、岩扉を完全に閉めてしまった。洞窟の入り口はこの岩扉しかなく、ひょろひょろなアラジンではこの重い岩扉は動かせない。完全に閉じ込められてしまった。
「違うんですッ!! 誤解です。開けて!! 」
そう叫んだか岩扉は一向に開かない。
困り果て、岩扉に背中を預け、頭を抱えているとある事を思い出した。
アラジンの左手の薬指に嵌っている指輪。
これは悪い魔法使いに洞窟に入る前に護身用にと渡された魔法の指輪だ。
使うなら今だと魔法の指輪の赤い宝石を擦るともくもくと煙が上がり、ピンクの肌をした男が出てきた。
「お呼びですか、主人? …おや、何時も違い随分若い主人だ。」
ピンクの肌をした魔法の指輪の魔人はアラジンをまじまじと見て、呟いた。アラジンはいきなり魔人が現れた事に驚いたが、すぐにお願い事をした。
「魔法の指輪の魔人さん。俺をこの洞窟から出して下さい。外では魔法使いさんがこの魔法のランプを待っているんです。彼の子供は不治の病で一刻も早くこれが必要な筈なんです。」
「正気ですか!? 」
魔法の指輪の魔人は目を見開いて驚いた。
魔法の指輪の魔人は元は悪い魔法使いに使役されていたので悪い魔法使いに子供はおろか妻もいない事は知っている。
しかしアラジンは本気だ。
その目はどこまでも真っ直ぐで純粋。
その目に魔法の指輪の魔人は心を打たれて感心したが、同時に心配にもなった。
果たしてこの騙されやすい青年がこれからまともに生きていけるのかと。
「主人よ。あの魔法使いに子供はいない。」
「えっ、ホント!? 良かったぁあー。」
真実を伝えると「じゃあ、不治の病で苦しんでる子供はいないんだね。」とホッとアラジンは胸を撫で下ろす。その優しさは人として美徳だが、この社会で生きていくにはこの青年は優し過ぎると魔法の指輪の魔人は頭を抱えた。
はたと洞窟の中を見ると綺麗な清水が湧き出す泉がある。そして木になる宝石の実を齧ってみると、とても甘く美味しくて食べられる。そして目の前の青年、アラジンはうら若く、華奢で守ってあげたくなるような危うさを持つ中々、魔法の指輪の魔人好みの青年だ。
「主人よ。貴方はこの洞窟から出てはいけない。この洞窟から出たら貴方は酷い死に方をするでしょう。」
「えっ、そんな…。どうすれば……。」
魔法の指輪の魔人の言葉を信じ、カタカタと震えるアラジンを抱き寄せ、魔法の指輪の魔人はアラジンに囁く。
「ここで私と暮らしていれば貴方が死ぬ事はありません。私が守って差し上げましょう。」
「ホント? 」
魔法の指輪の魔人の言葉を信じたアラジンは途端にぱあっと明るい笑顔を浮かべたが、何かを思い出し、シュンッと沈んだ。
「でも、…外には僕の帰りを待ってる母さんが。」
「大丈夫です。お母様には挨拶がてらに貴方の無事を伝えておきましょう。」
「ホントに!? ありがとう。」
その言葉に一切疑問を覚えず、感謝を述べるアラジン。そんな馬鹿で愛おしい伴侶を得て、魔法の指輪の魔人は内心、面白くてしょうがないが、親身になってアラジンに寄り添う。
「主人よ。楽しい事をしませんか? 」
「楽しい事? 」
「そう、とっても気持ち良くて楽しい事です。」
にっこりと魔法の指輪の魔人は微笑んだ。
アラジンは気の良い青年で魔法のランプが欲しい悪い魔法使いに騙され、少ししか開かない洞窟の狭い岩扉を細くしなやかな身体で通り、洞窟の中の広い空間へとやって来た。
「スゴイ!! サファイアやルビーが木になってる。」
洞窟の中の広い空間には泉があり、その泉の周りには木があり、その木にはサファイアやルビーなどの宝石がたわわになっていた。
アラジンはその光景に魅せられて宝石の実に手を伸ばそうとしたが、悪い魔法使いに頼まれた事を思い出し、手を引っ込めた。
「そうだ。魔法のランプを探してあげないと。魔法使いさんの子供の病が治らない。」
アラジンは必死に魔法のランプを悪い魔法使いの為に探した。悪い魔法使いには不治の病の子供が居て、その子供を助ける為には魔法のランプが必要だと悪い魔法使いはアラジンに話し、お願いした。しかし、実際は悪い魔法使いの話しは真っ赤な嘘で悪い魔法使いには子供所か妻もいない。
ただ願いを叶える魔法のランプを欲し、この洞窟の前まで辿り着いたが、岩扉が開くのは数十センチのみ。ガタイの良い悪い魔法使いは肩すら入らず、貧乏が祟ってひょろひょろで騙しやすいアラジンを使って魔法のランプを手に入れる算段だ。
「あれ? あそこにある金ピカなのが魔法のランプかな?? 」
ついに魔法のランプを見つけたアラジン。
そのランプは金でできていて、表面には緻密な柄と宝石が嵌め込まれている。
魔法のランプを持って入り口前までやって来たアラジン。アラジンが外にいる悪い魔法使いに声を掛けると悪い魔法使いはやっと手に入る事に歓喜し、本性が漏れ出してしまった。
「早くランプを寄越せ、ノロマ。」
そう声を荒げて岩扉の隙間からアラジンの持つ魔法のランプに手を伸ばしたが、その豹変ぶりに怯えたアラジンは後退り、悪い魔法使いの手は魔法のランプを掴む事なく、空を切った。
「俺に渡さないというのかッ!! 」
「違……。」
「そうか。ならば、後悔するが良い。存分に洞窟の中で俺にした仕打ちを思い出しながら。」
悪い魔法使いは激怒し、岩扉を完全に閉めてしまった。洞窟の入り口はこの岩扉しかなく、ひょろひょろなアラジンではこの重い岩扉は動かせない。完全に閉じ込められてしまった。
「違うんですッ!! 誤解です。開けて!! 」
そう叫んだか岩扉は一向に開かない。
困り果て、岩扉に背中を預け、頭を抱えているとある事を思い出した。
アラジンの左手の薬指に嵌っている指輪。
これは悪い魔法使いに洞窟に入る前に護身用にと渡された魔法の指輪だ。
使うなら今だと魔法の指輪の赤い宝石を擦るともくもくと煙が上がり、ピンクの肌をした男が出てきた。
「お呼びですか、主人? …おや、何時も違い随分若い主人だ。」
ピンクの肌をした魔法の指輪の魔人はアラジンをまじまじと見て、呟いた。アラジンはいきなり魔人が現れた事に驚いたが、すぐにお願い事をした。
「魔法の指輪の魔人さん。俺をこの洞窟から出して下さい。外では魔法使いさんがこの魔法のランプを待っているんです。彼の子供は不治の病で一刻も早くこれが必要な筈なんです。」
「正気ですか!? 」
魔法の指輪の魔人は目を見開いて驚いた。
魔法の指輪の魔人は元は悪い魔法使いに使役されていたので悪い魔法使いに子供はおろか妻もいない事は知っている。
しかしアラジンは本気だ。
その目はどこまでも真っ直ぐで純粋。
その目に魔法の指輪の魔人は心を打たれて感心したが、同時に心配にもなった。
果たしてこの騙されやすい青年がこれからまともに生きていけるのかと。
「主人よ。あの魔法使いに子供はいない。」
「えっ、ホント!? 良かったぁあー。」
真実を伝えると「じゃあ、不治の病で苦しんでる子供はいないんだね。」とホッとアラジンは胸を撫で下ろす。その優しさは人として美徳だが、この社会で生きていくにはこの青年は優し過ぎると魔法の指輪の魔人は頭を抱えた。
はたと洞窟の中を見ると綺麗な清水が湧き出す泉がある。そして木になる宝石の実を齧ってみると、とても甘く美味しくて食べられる。そして目の前の青年、アラジンはうら若く、華奢で守ってあげたくなるような危うさを持つ中々、魔法の指輪の魔人好みの青年だ。
「主人よ。貴方はこの洞窟から出てはいけない。この洞窟から出たら貴方は酷い死に方をするでしょう。」
「えっ、そんな…。どうすれば……。」
魔法の指輪の魔人の言葉を信じ、カタカタと震えるアラジンを抱き寄せ、魔法の指輪の魔人はアラジンに囁く。
「ここで私と暮らしていれば貴方が死ぬ事はありません。私が守って差し上げましょう。」
「ホント? 」
魔法の指輪の魔人の言葉を信じたアラジンは途端にぱあっと明るい笑顔を浮かべたが、何かを思い出し、シュンッと沈んだ。
「でも、…外には僕の帰りを待ってる母さんが。」
「大丈夫です。お母様には挨拶がてらに貴方の無事を伝えておきましょう。」
「ホントに!? ありがとう。」
その言葉に一切疑問を覚えず、感謝を述べるアラジン。そんな馬鹿で愛おしい伴侶を得て、魔法の指輪の魔人は内心、面白くてしょうがないが、親身になってアラジンに寄り添う。
「主人よ。楽しい事をしませんか? 」
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「そう、とっても気持ち良くて楽しい事です。」
にっこりと魔法の指輪の魔人は微笑んだ。
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