不束なラスボスですが、末永くよろしくお願いします

きっせつ

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そして、魔法使いは覚悟する②

獣の爪が首筋を撫でる。斬り裂かれると、緊張で喉を鳴らせば、声の主は得意げに鼻を鳴らした。

「流石、大魔法使いマグリット。ミネルヴァの探知すら掻い潜る俺の気配消失ステルス魔法に気付いて、先手を取ろうなんて、やってくれるじゃねぇか!」

「…………は?」

唐突に掛けられた見当違いの賞賛の言葉に命の危機にあるにも関わらず、素っ頓狂な声が漏れる。
少し拘束が弛んだので後ろを見やれば、炎狼ヴォルガの姿があり、驚いた。

「い、生きてたのか…」

「はぁ!? 生きてちゃ悪いかよ!!」

何故。彼の中で、僕が先手を取った事になっているのかは気になる。だが、元気そうな姿にホッとして胸を撫で下ろす。

本当に生きていて良かった。僕が付けた傷が元で魔王に嫉妬で殺されたなんて、正直、後味が悪過ぎる。…まぁ、生きているお陰で、今、まさに命の危機にあるのだが。

長かった毛は魔王との戦いで刈り取られ、短毛になったヴォルガは、彼を見上げる僕を見つめて、途端にフイッとそっぽを向く。

「敵を心配するたぁ余裕なこった」

そう憎まれ口を叩きつつもヴォルガの尻尾は激しく喜びを示していて、何をしに来たのか意図が全く読めない。

「何か様で?」

一体何がしたいのか。復讐をしにきたのではないのか?
疑問に思い、そう声を掛ければ、ヴォルガは悪い顔でニンマリと笑う。

「俺はお前と戦いたい。だが、お前は今、魔法が使えないと聞いちまった」

成程、だから今のうちに倒しておこうという事か。そう納得して身構えるが、ヴォルガは僕から手を離し、何故か対面の椅子に腰掛けた。

「だから俺様が如何に偉大かを語って、俺は戦わずしてお前を平伏させてやる」

フンスっと自慢げに鼻を鳴らし、ヴォルガは話す前から勝ち誇った顔で僕を見下ろす。
その様子に呆れた目でヴォルガを見…。

「知ってるか? 今の俺は勇者アステルより強いんだ! なんたって、お前と居た勇者アステルなぁ。もうまともに歩けない身体なんだぜ」

その言葉に血が沸騰する様に全身を駆け巡り、魔力が漏れ出す。

ガシャンッ!!!

漏れ出した魔力はテーブルを割る。
テーブルが割れた事に驚いたヴォルガの胸ぐらを掴んだ。

「アステルに何をした」

そう問えば、ヴォルガは短くなった毛を逆立て、ゴクリッと息を呑む。
誰が黙って、いいと言った? 
アステルに何をしたか吐かせようと、口を開けば、ゴプリッと口から血が溢れ出す。

「ごふッ……。ゴホゴホッ…」

「お、おい、マグリット。どうしたんだよ!?」

視界が霞む。暴走した魔力を無理矢理行使しようとしたから、暴れた魔力が内臓を傷付けたらしい。木片が散乱する床に吸い込まれるように身体が倒れ込む。

「マグリット。苦しいのか? おい、何で急に血なんて吐いて…」

「マグリット様。 ……貴様、マグリット様に何をした」

「な、何もしてねぇよ。いきなり、倒れて…」

「黙れ、駄犬。早く陛下を…」

薄れていく意識の中。ミネルヴァが今にも泣きそうな顔が見えて、その顔が最後に見たエリスの泣き顔と重なる。

(エリス…)

あの日。あの時。あの瞬間。幸せになって欲しいと願った。
望むならエリスの想いが復讐に囚われたアステルに届き、二人で幸せな道を歩いて欲しいと。

「会い…たい」

たった一回でもいい。たった数秒でもいい。
それが最期になったって構わないから。

「マグリットっ!」

何を利用しても。今すぐに。
感想 3

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