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炎の中で
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「貴様が頼朝か。」
轟々と燃える炎の中、消えた筈の命だった。
屋敷を焼き尽くす炎の中。
ふわりと白い羽根が舞った。
その白い羽根は炎の中でも燃える事なく私のもとに舞い落ちて、その白い羽根の持ち主は今にも射殺しそうな鋭い視線をこちらに向けていた。
その姿に今は亡き、弟の事を思った。
弟は奇才だった。
時に馬が通れぬ筈の絶壁さえも馬で駆け下り、敵の虚をついてみせた。
時に敵の船を縦横無尽飛び渡り、我等源氏の勝利に貢献した。
「兄上。俺は鞍馬天狗に教えを乞うたのです。」
勝利の美酒に酔うたび、弟はそう与太話をしていた。確かに弟の剣術も兵法も常人では思い付かないようなもの。弟に心酔する者達はこぞってその言葉を信じていた。私からすれば面白い冗談だとしか思わなかったが。
揺らめく炎がみせる幻覚かもしれない。
死ぬ前に見た夢かもしれない。
しかしそれは今、目の前にいる。
「お前の話は本当だったのか。」
ぽたりと涙が伝う。
その涙も床に落ちる前に炎の熱で蒸発して、消えた。
「楽に死ねると思うなよ。頼朝。」
白い翼をはためかせ、天狗は私の首を絞めた。
轟々と燃える炎の中、消えた筈の命だった。
屋敷を焼き尽くす炎の中。
ふわりと白い羽根が舞った。
その白い羽根は炎の中でも燃える事なく私のもとに舞い落ちて、その白い羽根の持ち主は今にも射殺しそうな鋭い視線をこちらに向けていた。
その姿に今は亡き、弟の事を思った。
弟は奇才だった。
時に馬が通れぬ筈の絶壁さえも馬で駆け下り、敵の虚をついてみせた。
時に敵の船を縦横無尽飛び渡り、我等源氏の勝利に貢献した。
「兄上。俺は鞍馬天狗に教えを乞うたのです。」
勝利の美酒に酔うたび、弟はそう与太話をしていた。確かに弟の剣術も兵法も常人では思い付かないようなもの。弟に心酔する者達はこぞってその言葉を信じていた。私からすれば面白い冗談だとしか思わなかったが。
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ぽたりと涙が伝う。
その涙も床に落ちる前に炎の熱で蒸発して、消えた。
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白い翼をはためかせ、天狗は私の首を絞めた。
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